アストロシティ:コンフェッション
アメリカのどこかにある、ヒーロー達に守られた大都市アストロシティ。
長距離バスに乗り、心に野心を抱いて少年はやってきた。尊敬される人間になってみせる。そんなシンプルな願いを抱いていた。
大聖堂に潜み、誰もが恐れるコンフェッサーは、街の夜を守る孤独なヒーローだった。
移民の住むシャドウヒルでは、猟奇的な連続殺人が三人目の被害者を出していた。
目立ちたがりのクラッカージャックは、何故かケチな犯罪に手を出して最近評判を落としていた。
ウィングド・ビクトリーは世界を守る一方で今日も論争に巻き込まれていた。
暑く長いアストロシティの夏。コンフェッサーの弟子オルターボーイとなった少年は、多くを学び感じ取りながら夜の街を駆け抜ける。
そして誰も知らないうちに、彼等はずっと近くまで忍び寄っていた…。
成田良悟さん作品風に紹介文を書いてみたり。
アストロシティ日本語版の二冊目です。一話ごとに視点の変わるオムニバスな作品だった「ライフ・イン・ザ・ビッグ・シティ」に比して、「コンフェッション」はずっとオルターボーイの視点で貫かれています。田舎からアストロシティに出てきて、偶然と意思の力から、アストロシティのバットマンとも言うべきコンフェッサーのサイドキックとなった彼。
父親のようにはならない、人に尊敬される人物になってみせる、と言う夢を追いながら、何かを学ぶたびに大きくなりながら、必ずしも期待通りではない物事に失望と失意をも抱いていくオルターボーイ。
一方で些細な事から始まった、アストロシティのでの事件… シャドウヒルの連続殺人、つのるヒーロー達と市民との対立… は、どんどんスケールを大きくしていき、ついには収集不能の事態にまで陥っていきます。そんな状況を追いかけながらも、視点は決してオルターボーイからぶれることはなく。大きな事件と小さな事件が、最後の局面に至るまで等価に描かれ続けていきます。
確かアシモフの本で読んだと思うんですが、「指輪物語」を好きである理由が、世界全体の大きな物語と、フロドとサム、それにゴクリの道行(小さな物語)を等価に描いている事、そして最後にはとても些細な事が大きな物語の運命を定める事である。そんな話があったように思います。
大きな物語と、小さな物語に等しく愛情の注がれた、そんな「とてもいい話」なアメコミです。これは高いけど是非読んで欲しいですな。
巻末の「THE NEARNESS OF YOU」も、そんなエッセンスがぎゅーと詰まったせつなげな小編。これもいい。実にいい。
【4/10追記】
Planetcomics.jpさんで紹介されていました。
あんまり本屋で取り扱ってない可能性もありますが、こちらで注文できますので是非どうぞ。ささささ。
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