バットマン・ビギンズ
いかにして彼は心配するのを止めゴッサムに君臨する闇の騎士となったのか? な映画、バットマン・ビギンズ。
これまでの四作はリセットして、新設定でのスタートです。
とにかくテキストが熱い。抑制された静かな台詞は、あとからあとから名言続きです。
それは確かに、今までのバットマンも好きだった。ジャック・ニコルソンもダニー・デビートも、トミー・リー・ジョーンズも特にジム・キャリーも大好きだけど、ごめん実はMr.フリーズの逆襲は見てないんですけど、ここまで渋くかつ熱く語っていたバットマンはこれまでなかったかも知れません。
あと半歩踏み出したら、説明的になりすぎるかもしれない(人によっては、すでにそうだ、と言うかも知れない)、しかし語るべき場所で語られている、ひとつひとつ味わい深い台詞。語っているのが豪華な脇役陣なだけに。これが、ずしり、ずしりと決まります。
マイケル・ケインのアルフレッド、ゲイリー・オールドマンのゴードン警部補、モーガン・フリーマンのルーシャス・フォックス(ルーシャスって、もっとチョイ役なのかと思ってたら…)、それにトム・ウィルキンソンのファルコーネ。
ファルコーネは、ゴッサムの暗黒面の代弁者のような位置付け。だからこそなのか、彼の台詞は重く響きます。
アルフレッドの的確なアドバイスとさらに的確なツッコミ(感想に書こうかと思ったら先に言われた。とか思う部分があったり)とか。ゴードンの堂に入った巻きこまれっぷりとか。クリスチャン・ベールも、抑制されていてかっこよかったと思うんですが… 申し訳ない。脇役の親父にばかり目が行ってましたよ。もうちょっと尺があったら、ゴードンがフラムを殴ってたり同僚と浮気してたのかも。
スケアクロウのキリアン・マーフィーも実にこう。ヒーローものの悪漢とは思えない、知性派と言うか、インテリぶりと言うか。容赦なく云うと「ななめ上見てるメガネくん」っぷりが張り裂けてて素敵です。クールなナイスメガネから、急に麻袋を被ったとても変な人になるあたりまで含めて。
もともとは原作になる予定だったらしい「イヤーワン」もそうでしたが、今作でのバットマンの立ち位置はなかなかに複雑なものがあります。彼が立ち向かうのは、犯罪とマフィアがはびこり警察も頼りにならない、犯罪都市ゴッサムシティと言う現実そのものなのですが。そのゴッサムそのものを悪と断じ脅かす存在からは、やはりゴッサムを守って戦わなくてはならないのです。
バットマンがやろうとしていることは、正義なのか復讐なのか。ブルース・ウェインは、父トーマスを愛しているのか嫌っていたのか。矛盾をはらんだバットマンと言う存在を、豪華な脇役陣の支えを受けて、真正面から語りつくそうとしています。
いやまったく、最後の最後まで詰まった… 正直、ラストで「あーーーーっ!」とか喜びの叫びを上げそうになった… 良い映画であります。いやこれは良い。
「ビギンズ」の名を信じるのであれば、バットマンの戦いはまだ始まったばかり、と云った処。その何に相応しく、続編を期待したい出来であります。
で、最後に本音をみっつ。
ひとつは、是非ジャイヴの「バットマン:イヤーワン」を読んでから、映画を見てきて欲しいと言う事。高い買い物ですが損はしません。
そしてもうひとつ。この映画、もし時期があと数カ月ズレてたら、公開できたかどうか危険だったかも… と。
どうしてそう思ったのか確かめるためにも、ぜひ劇場へおいでください(笑)。
最後のひとつ。映画絡みの文とかレビューとか読んでて思うんですけど、…みんな、そんなロビン嫌いかなあ…(笑)。
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コメント
ね、ネタ盛り沢山だったでございましょ?
ラストの引きには私も思わずニヤリでございました。
いい演出ですよね。
投稿: ふさ | 2005.06.19 00:53
見てきましたー。
確かに「あのシーン」はやばいですね。ある種の再現映像みたいになってましたし。。。
投稿: じゅんた | 2005.06.19 18:18
まさに意図せざる… ですね。
未確認情報ですが、どこかの映画館では上映前に「内容に関するお知らせ」みたいな紙が配布されたとか。
しょうがないとはいえ、複雑な気分ですな。
ラストいいですよねラスト。
叫ぶほど意外かって云われると考え込みますけど、僕にとっては絶叫ものだったのです(笑)。
投稿: sn | 2005.06.19 21:28