小李飛刀、未だ折れず
リンク: Amazon.co.jp:多情剣客無情剣〈上〉海外シリーズ: 本.
「おごりだ。そっちの懐は痛まん」「身銭を切ったもんでなきゃ、要らねえ。人様の酒は、飲まねえ。これだけ言やあ充分だろ?」
「充分だ」
「なら、行けよ」
「なら、行こう。だが、酒が買えたときには、おごってくれるだろうな?」
「いいとも、おごってやる」
サンドマンさんが非常に何気なく貸してくれたこの本。しばらく読まずにいたのですが、
始まった直後、7頁目くらいにあるこの一文に、ぐわっと掴まれました。
酒をおごると誘ったのは、名門の出身、かつての官界のホープだが、今は肺病病みの放浪者。百発百中、必殺の投刀術・小李飛刀は、天下で三指に入ると謳われた好漢・李尋歓。
それを断った若者は、剣と称する異様な鉄塊をぶら下げた、野獣の様な謎の若者、阿飛。
捨てた故郷と過去に相対する李、相前後して持ち上がる伝説の悪党・梅花盗復活の影。数知れぬ陰謀、現れては散っていく江湖の剣客達。兵器符に名を留める武芸者が悉く倒れゆく、この戦いは二人を何処へと誘うか。
とか書いてるわけなんですが、かっこいいのと目茶苦茶なのが、交互に、時に同時に来ていて、実にステキです。
主人公の二人もかっこいいのですが、次々と現れる、ライバルとなる豪傑たちがまたすごい。誰も彼も「兵器譜」、登場人物の一人が作った、ようは天下の豪傑名鑑みたいなものに名を連ねていて、出てくるなり「お手前は兵器譜の何番目だな」とか言い出す訳なんですが。どれもこれも個性的な面々なのに、ものすごくあっさりと死にます。
あっさりというか、人によってはばっさり。出てきて名乗りを上げた次のシーンでは、既に死体になってたりします。下手すると六人くらいまとめて。
「誰がこんなことを!?」「ふふふ、ワシだよ」「お手前は兵器譜の何番目!」(D.C.)
ある意味こんなノリです。だがそれがいい。流しそうめんの角度が45度をはるかに越えているようなものです。とんでもない勢いで、話がすべりおりていきまする。
途中で、えええこれでどうなるの!? と思ったら、あっさりとそうくるのか的な展開に放り込んでみたり。ある意味、毎章が少年ジャンプ連載の打ち切り決定直後みたいなクオリティです。……褒めてるんですよそりゃもう全力で。
下巻が気になる昨今。時間が出来たら、東方書店にひさしぶりに寄ってみたく思いまする。
| 固定リンク
「書籍・雑誌」カテゴリの記事
- 2020年読書録(一部その他含む)(2020.12.31)
- あるいは謎を語る者の覚悟について:「死に山」(☆☆☆)(2019.01.24)
- 奇譚を売る店(☆☆☆)(2019.01.17)
- 湖を越えて行け、海原の覇者となれ:新・水滸後伝(☆☆☆)(2018.09.21)
- 星を渡るは九重の塔・天駆せよ法勝寺(☆☆☆)(2018.07.09)
コメント
大変に高い評価を頂きお勧めした立場と致しましては非常に嬉しく思います。
アマゾン見てお分かりの通り絶版ですんで沖虎を買った方が宜しいかと存じます。確か東方書店にはもう並んで無かったような記憶が。
投稿: サンドマン | 2006.02.18 15:00
スゴイ内容ですね…ジャンプ漫画武術会編のヘタレキャラ並のやられっぷりは感動ですね。「宝竜黒蓮珠」を思い出すー!
「奴は我等の中でも一番の小者」
「あんたは日本で2番目だ」
投稿: 宙 未来 | 2006.02.19 00:04
>サンドマンさん
いやあ、この精神を映像化すると、ああいうカンフー映画とかになったりするわけですね。出てくる人の退場具合が、なんとなくそんな雰囲気であります。
これはアクション期間過ぎたら、この手の探してみますですよ・
>宙未来さん
「奴は我等の中でも一番の小物」はソウル名セリフですな。
後になって予選リーグとさんざん勘違いされた甲斐もあったというものです。
投稿: sn | 2006.02.20 19:55