イワンの馬鹿。(☆☆☆)
自分が、と言うか、今日がどんなに恵まれた環境なのか、と言うのを思い知った話。
なんとなーくテレビをつけたら、やっていたのがトルストイの生涯。……いま何ゆえにトルストイ、と思いながら見ていたものの、これが見ていると結構面白くて。
文学には疎いので、トルストイと言う名前から、とっさに出たのは「アンナ・カレーニナ」。普通「戦争と平和」の方が先だろう、と自分の知識の偏り加減を嘆きつつ。ふと、なんかトルストイ読んでみたいなあ、と言う気分に。
すると上のリンクのwikipediaから、青空文庫さんにリンクがあります。トルストイのところには、「イワンの馬鹿」が。
これもタイトルだけはよく知っているものの、読んだことのない本です。だいたいタイトル知ってるのも、筋肉少女帯の「三年殺し」で散々連呼されてたからだし。
分量的にも短編なので、しばし、じっくりと読書。
……この間、パソコンの前からまったく離れなかった事を考えると。
いながらにして、過去の偉大な頭脳たる文豪の知識と、その作品にその場でばばっと触れる事が出来る、と言うその現実に、改めてこう。薄ら寒くなるほどのありがたみを感じた次第です。
これほどの知識の結節に触れられるところにひょろっと生まれ出たわけで、生まれも育ちも選べない関係上、これは全くラッキーとしか言いようがない事態。環境はあるんだから、もっと本読んだり勉強せにゃバチあたるよなあ。と、ご先祖様とか先人とかに感謝した次第です。
イワンの馬鹿は面白かったですよ。なんか、荘子や老子に相通じるものがあります。それらの中の一片、と言われたら、それは違和感はあるにせよ、なんとなく納得しそう。
自分でも自分のことを馬鹿と言うイワンの姿は、無政府的と言うか反政府的。考えようによっちゃ、支配者にとってもっとも都合のいい、「声をあげない善人」と言う取り方もできます。お国柄を考慮に入れると、「反革命的」ってところでしょうか。純朴であると取る事もできれば、処世の達人だと考える事も出来るわけで。
悪魔と金貨のくだりなんかは、一見するとばかばかしそうに聞こえますけども、金貨を「紙幣」だと言い換えると、ちょっとひやっとする見方もできます。信用創造って通じない相手には通じないんだよ、みたいな感じで。
古典とか昔の作品って、やっぱり侮れないなあ。面白いなあ。こんな風に読めるなんて有難いことだ。と思いつつ、「ダ・ヴィンチ・コード」の文庫版とかも買ってきてみる。そんな首尾一貫していない私です。
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コメント
いや、なかなか面白い話ですね。馬鹿万歳!
こういう馬鹿ばっかりの世界に住んでみたいものです。
ええ、私も馬鹿の一人になって(笑)。
投稿: LILY | 2006.05.10 00:03
結構衝撃的ですよね、内容(笑)。
>そこで人民たちはイワンが馬鹿だと言うことに気がつきました。
なんて言うくだりは、どこの独マスだろうとか思っちゃいます(苦笑)。
本文を書いた時には、イワンはなんでも「いいとも、いいとも」で済ましちゃってるみたいに思ってたんですけど、兄の言い分にきっぱり「いやだ」とも言ってるんですよねー。思い悩む事しきりです。
ここで言う馬鹿と言うのは才能が左右しそうで。努力してなるのは中々難しいそうですね(笑)。
投稿: sn | 2006.05.10 23:19