« 第四回ROBO-ONE Special観戦記インデックス | トップページ | いないけどイルス。(☆☆) »

2006.08.07

名前をつけるとしたら、それはイルス。(☆☆)

 ROBO-ONEスペシャルを観戦した帰り、アトリエロボットの杉浦さんと色々お話をさせていただいて。その際に「ロボットがもっと認知され普及するには(フランクに言って売れるには)どうすればいいんだろう」と言う話になりました。

 その時は考え考え話していたんですが、現状、ロボットにはキラーアプリがまだ無い、と言う結論に、やっぱりなってしまうと思います。

 例えばパソコンが爆発的に売れ始めたのは、おおむねインターネットが一般化し始めた時期とかみ合います。そこで人は、ネットを目的にして、そしてパソコンを手段として購入した。その後、ネットは携帯電話やそのほかのデバイスの上で動くようになり、今では携帯電話はパソコンに匹敵する比重を占めているかと思います。
 ネットは牽引と言う意味で別格ですが、もちろんパソコンでできることはそれだけではありません。オフィススイートしかり、ゲームしかりです。そしてこれら全てに共通しているのは、目的が別にあり、手段としてPCが存在する、と言う事です。
 勿論、オーバークロックや改造などで限界まで性能を引き出すなど、ハードウェアとしてのパソコンそのものが、パソコンの目的である、と言う世界もあります。Oh!MZの時代などはまさにその時代だったのでしょう(いつの話だ)。
 しかし、それはその後の、キラーアプリと言う切り札を得たPCとは、市場なり売れ方としては、全く違う桁数だと言わざるを得ません。
 現在の自作ロボットの市場と言うのは、例えばマイコンBASICマガジンで、雑誌に印刷されたプログラムを自分の手で入力していた、またOh!MZのように、ハードウェアの改造がパソコンの主な主体だった時代の雰囲気を、やはり色濃く持っているのだと思います。市場が大きくなったとしても、こういう雰囲気がずっと残っていってほしいですよね。と、ここでまとめてしまうと話が終わってしまうのですが。

 キラーアプリ不在のことは、ロボットを販売している皆さんがよく判っていることだと思います。どのようなものがキラーアプリとなりうるか、その解を探していろいろなチャレンジが行われている、いまは長い長いトライアルの時期だと思うのです。最初の大規模な成功例となったAIBOは、しかしそのまま、最初の大規模な撤退例ともなってしまいました。
 AIBOはロボットのキラーアプリを築きえたのでしょうか? AIBOは売れましたが、AIBOの方法論を受けついだ商品が見当たらない現状、キラーアプリを構築しえた、とまでは言えない気が、残念ながらします。

 ここで別の話。パソコンでの、そして今やパソコンを脱皮した最大最強のキラーアプリは、勿論インターネットです。
 しかし、インターネットとは、実際には何と何が接続しているんでしょうか。ノードとなる端末ががんじがらめに繋がっており、サーバとクライアントがうんざりするほどのデータを日夜やりとりしている。それは物理的な事実ですが、クライアントやノードは、自動制御で勝手にパケットをやりとりしているわけではありません。
 各端末の前に人間が居て、人間の前に端末があり、人間の要請を受けて、パソコンはデータを送り、また受け取ります。ネットで接続されているノードは括弧の人間であり、その距離を縮める手段として、インターネットがあるに相違ありません。
 パソコンは手段でネットは目的、とさきほど書きましたが、人間にとって、パソコンも手段、ネットも手段であり、その目的は他の人間に、ちょっと曖昧な言い方をすれば「他者との接触」「コミュニティとの接触」に帰結してしまうんじゃないでしょうか。
 いくらネットが普及したとしても、決して人口知能や自動応答システムが一般化したわけではありません。チューリングテストみたいに擬似的な話し相手になるシステムである「人工無能」は昔からありましたが、これだけチャットやBBSがさかんになり、ネットそのものが爆発的に巨大化した今日でさえ。人工無能が商業的に取り扱われている例をどのくらい知っているかと問われると。blogに勝手にコメントをつけるブログペットや、前に話題になったデスクトップアクセサリくらいしか思い浮かびません。

 翻ってコミュニケーションロボットを見渡すと、そこで語られるコミュニケーションとは、「人間とロボットのコミュニケーション」です。AIBOが商業的に上手かったのは、ロボットの想定知能を動物レベルに設定して「ペットロボット」とすることで、人間側の許容範囲を大幅に拡大した部分もあるのかもしれません。それにしても、想定されていた部分は「AIBOと人間のコミュニケーション」ではなかったか、と思います。

 人間がコミュニティとの接触を志向しているとすれば、それはいつか頓挫する方向性なのかも知れません。人形が精巧であればあるほど人間との違いが目に付くように、WindowsMobileがWindowsと似てるからこそ、なんか違うところが気になっちゃうように、ロボットとのコミュニケーションには、人間の側に気構えが必要になるわけですから。

 では、コミュニケーションを別の方向に転がしてみると、どうなるでしょう。「人間と人間のコミュニケーションに、ネットが手段として役立つ」「携帯が手段として役立つ」「PCが手段として役立つ」 ここに、ロボットを代入することはできないでしょうか。「人間と人間のコミュニケーションに、ロボットが役立つ」 そんなケースがありうるでしょうか?

 今のROBO-ONEや、二足歩行ロボットを取り巻く状況は、まさに上に書いているような「人間と人間のコミュニケーション、それを仲介するロボット」と言う状況だと思います。自分としては理想的に思えるこの図式ですが、しかしこの筋書きには、商業的には大きな欠点があります。
 先に図式を組み立てた時、PCにロボットを代入しましたが、これがロボットでなくてはならない必然性が存在しない- 例えば「将棋」や「釣り」でもいいわけです。それぞれの分野には、ホビーならではの濃密なつながりがあります。
 人間と人間のコミュニケーションを行うロボット。それはロボットであり、ロボットでなくてはならない。そういうロボットは、どういうロボットなのでしょうか。

 ここでまたちょっと別の話。ジェミノイドの記事を読んでいて、「ジェミノイドが触られると自分自身が触られた感じがする」と言う話を見た時、どこかで読んだ「延長された腕」の話を思い出しました。意識の中での「自分」の範囲はどこまでなのか、例えばずっと杖をついて使いこなしている人であれば、杖の先がどこまで延びるかまでが感覚的に掴めるし、杖を手放すと不自然に感じる。それは杖が、その人の認識の中で「自分」に入っているからじゃないか、と言うことなのですが。例えばこれを読んで、ネットワークや通信を駆使したとき、「自分」の範囲は、物理的な自分の肉体に必ずしも左右されないんじゃないか、と思ったわけです。
 たとえばですが、携帯電話です。携帯電話を体の中に内蔵した人の話はまだ聞いた事がありません。しかし、携帯を忘れると不安でしょうがない、と言う人の話はよく聞きます。携帯電話は、それを持っている事が当然の人にとって、種族同士での通信を可能にする、人類の外付臓器みたいなもの。
 ならばもう一歩進めて、携帯電話を通じてコネクトした「体」が、自分の外にあっても、それはありなんじゃないでしょうか?

 ちょっと前のことですが、家にロボットがあるといいのになあ、と思ったことがありました。
 たまたま家族が一週間ほど旅行に出ていて不在だった時、家を出て会社に行く最中、ふと「本当にガス消したっけな」と不安になってしまったのです。結論から言うとちゃんと消していたわけですが、そういう不安というのは、気になりだすとしょうがないもので。幸い、ご近所さんは親切な方で、いろいろしたあと「間違いなく消えてます」と確かめて貰って、ようやく胸をなでおろした次第だったのですが。

 ふと思ったのです。自分自身が外にいても、家の中を見て廻ってくれるロボットがあればいいのになあ。と。
 それは自動で動き回る必要もなく、センサーで侵入者や火事を検知する必要も(いまのところ)ありません。ただ必要な時に、「いつでも家にいるスペアのボディ」として、携帯電話やネット経由で自分になりかわり、家の中の様子をカメラで見て廻る事が出来る、そんなものでいいのです。
 なにも番竜みたいに、口から火ィ吹いて侵入者追い払ってくれなくてもいいので、一部内容にあからさまな嘘があったことをお詫び申し上げますが、ただ家の中を見て廻れるクローラーとして。
 それだけならば、もちろん定点設置のwebカメラで、十分用は足ります。自分も考えていて、ふとそうか、そうだよなと思い至ったのですが。そのスペアボディは必ずしも家にある必要はないのではないか、また用途は留守番だけに限らないんじゃないか、と思ったのです。
 遠隔地との連絡といえば、テレビ電話があります。しかしそれは映像であり、平面です。そこに手足を備え、動き回る「実体」を埋め込んだ時、何か面白い絵は、そこに浮かばないでしょうか。

 パソコンと言うよりも、もはやロボットとも言えず、それは手足の生えた、自走式の携帯電話みたいなものかも知れません。しかし、そこいらあたりにある技術で、十分実現可能な代物ではないかと思います。
 留守番をしてくれるロボット、遠隔地にあるスペアボディとしてのロボット。人間と人間とのコミュニケーションを仲立ちしうるロボット。でももう、どなたかが思いついてダメを出された代物のような気もしますが(汗。

 でも、個人的には留守番をしてくれる、いつも家にいる、スペアボディのロボットがいてくれると嬉しいですね。作るとしたら、そういうロボットがいいなあ。KHR-2にカメラ乗せたみたいなのかも知れません。宅急便や書留を受け取るのは、さすがに無理だと思いますけども。

 そして名前をつけるとしたら、それはイルスにしましょう。

|

« 第四回ROBO-ONE Special観戦記インデックス | トップページ | いないけどイルス。(☆☆) »

日記・コラム・つぶやき」カテゴリの記事

コメント

熱いっすね!
インターネット経由でカメラ画像が見れて、動きを制御できれば良いのかな?それを形にすると、アレになります。(冗)
2足はこけちゃうと思うんだよなぁ…
留守番してるペットとお昼休みに遊べる分身みたいな感じ。

投稿: KAZZ | 2006.08.08 00:54

>KAZZさん

 ありがとうございます! 僕も書いててあの子を思い浮かべました(笑)。
 分身と聞いて考えたんですが、欲しいものを表現するのに、分身というのが確かにぴったりで。そんなアバターなロボットが、なかなか頭から離れなくなっているここ数日です(苦笑)。

投稿: sn | 2006.08.08 21:56

もう一つ、散財さんの記事を見て思い浮かべたのは、ヒノキオです。あれ実現するには、すごいイノベーションが必要そうですよね。
もし実現したらエンジニアの夢、在宅勤務が可能になるっぽい?そうすると人類は移動時間というしがらみから開放されるでしょうなぁ。
出張先で「ちょっと遠いもので、今日は擬体で失礼します」とか挨拶してる世界が、生きてる間に来るだろうか?

※慣習が許すなら、そんなにリアルじゃなくても良いかもしれない。

投稿: KAZZ | 2006.08.09 02:11

>KAZZさん

 すっかり彼のことを忘れてました、確かにヒノキオですねこれ(笑)。
 たぶん義体が会社に複数すえつけてあって、そこに遠隔操作する人が「入って」動き出して、代わりに仕事したりするんでしょうね。それでやることがハンコ押しだったりすると、愉快そうですけども(笑)。

「ウチの新人の子が、うっかり飲み会に擬体で来ましてね」
「そりゃ課長さん怒ったでしょう」
「そりゃもう怒った怒った。会社の備品を勝手に持ち出すな、って」

 ……なんでここで咄嗟にアメリカンジョークをひねろうとするのか、我ながらよくわかりませんが。

投稿: sn | 2006.08.09 23:32

あはは、笑っちゃいました。アメリカンのツボ押さえてますね。
なんとなく、イルスはヒノキオの裏面ですね。

実用的には、もっと遠く。海外出張なんかがレンタルロボで済ませられたら、少々お高くともペイするかなぁと思いました。
擬体で済むなら、テレビ会議ですむのかなぁとも思うけど。。

思うに、擬体はリアルすぎない方が良いでしょうね。
ムカつく上司をぶん殴って「つい擬体のつもりで」みたいな事件がおきそうです。
いろいろ面白いシチュエーションを考えてしまうネタですわ。

投稿: KAZZ | 2006.08.10 03:20

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/11580/11327353

この記事へのトラックバック一覧です: 名前をつけるとしたら、それはイルス。(☆☆):

« 第四回ROBO-ONE Special観戦記インデックス | トップページ | いないけどイルス。(☆☆) »