昆虫-驚異の微小脳(☆☆☆)
日曜日、サンドマンさんらと共に本社に行った際に発見した昆虫-驚異の微小脳をようやく読了。いや面白い本でした。
昆虫の脳は非常に小さいけれど、大きな哺乳類の脳とは違った方法論とメカニズムで、彼らに必要な問題に対処している、と云う趣旨と、その昆虫の脳(微小脳)と、哺乳類の脳(巨大脳)とで、祖先に遡ると共通点がある、と云う点に着目。
幼虫の頃に匂いを学習すると一生忘れないと云うコオロギから得られたデータ、三つある単眼がピッチ、ヨー、ロールの三軸を感知する、空中での姿勢制御システムとして機能していること、それぞれを感知するシナプスや神経節の機能の話など。個人的には難解な部分もありましたが、ミツバチのダンスや、虫の三原色は青、緑と紫外線であるなど、各論が非常におんもしろいお話でありました。
個人的なハイライトは、匂い探知ロボットの話。なんと本物のカイコガの触覚をロボットに取り付け、電気刺激をコンピュータで処理すると云うロボットを作ったと云う話です。昆虫の脳内で行われている、と思われる情報処理を打ち込んだところ、実際にカイコガが行うのと同じような振る舞いを行ったとのこと。
当たり前といえばとても当たり前なんですけど、生物の知能や頭脳のシステムは、その生物の体の大きさや仕組みに最適化されて設計されているんだ、って云う事を改めて考えた次第です。人間が知能と認めるもの、人間に知能だと認められるものは、体長1~2mくらい、酸素型惑星の1G環境下で直立行動する人間と云う生物が、自分のために編み出した特殊な情報処理セットでしかないのかも知れませぬ。
虫の、と云わず、小さな生き物のふるまいをじっくり見たくなる、そんな本でした。
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コメント
お もう読了されましたか早いなぁ。流石、ご興味一杯の分野なだけありますの。
あたしは数冊並行(倭寇、牧野植物図鑑)で読んでるものでしてまだ冒頭の発生学の辺りでございます。昆虫の頭部が四節から成り立っている、という件でわくわく。
どうも自分は「これこれという器官はなになにを起源として発達した」というお話が大好きなようですハイ。
投稿: サンドマン | 2006.11.01 01:12
K-PROJECTのかつです。
『人間が知能と認めるもの、・・・』の部分、激しく同感です。その前提に”人間が最も知的な生物”という勝手な思い込みがあるように思います。
なんだかんだと人間が偉そうなこと言ってても、ブルックス大先生がやって見せたように、その振る舞いに対して、人間が知性を感じれば、中身はどうあれ知的なモノになってしまうんですよね。
実際、制御の世界でも”生物に学べ”と動物や昆虫、ついには人間が下等生物と呼んでいるようなものにまで、その行動を模写しコントローラを作ることなんて、メジャーな考え方ですしね。
知的(Intelligence)の定義って、ほんと難しいですよね。日々悩まされてます。。。
投稿: かつ | 2006.11.02 01:48
>サンドマンさん
いやー、こういうの大好きですよ。ありがとうございます。
節足動物の体節構造の話とかは「ワンダフル・ライフ」で読んだ話を思い出してなるほどと思ってたんですが、人間の脊椎の一つ一つが体節に対応している、と云う話は、当たり前ですけどびっくりでした。人間って動物なんだなあ、って思いますねー。
>かつさん
コメントありがとうございますー。
SFに半分足を突っ込んだ分野ですけど、こういうの大好きです(笑)。何かの本で読んだんですが、人間型の知能を持ったロボットを作ろうと思ったら、人間型の「体」が不可欠になる、と云うような話を思い出して読んでました。
例えば、サイバトロン戦士みたいな身長10m近くの金属生命体がもしいたら、彼らはどんなメンタリティを持ってるんだろう、とか。どきどきしますね(笑)。
>知能の定義
D&Dのルールブックに書いてあった言葉が、なんとなく印象に残っています。
知識(Int)は雨が降ってきた事を教え、知恵(Wis)は傘を挿さないと風邪を引く事を教えてくれる、云々ですね。
投稿: sn | 2006.11.02 21:26