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2006.12.25

イカ釣りロボットを君は見たか(☆☆☆)

 こは日曜日のお話。明治通りを南下する旅を終えた自分は、そのまま半蔵門線へ。本当は銀座線に乗ればよかったのでこの時点で色々間違っているんですが、青山一丁目駅から銀杏並木にちょっと浮気した後、青山テピアへ。ラグビー場では試合の真っ最中と云うことで、出店が出るにぎやかさです。

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 目当てはもちろんこれ。「今年のロボット」大賞2006、受賞ロボット展示公開の見学です。授賞式や各ロボットについての詳しい記事は、是非こちらの記事を。

 展示場に入っていくと、広い会場のあちこちにロボット&関係者の方のいるブースがあると言う按配。たまたま人がそこそこいる雰囲気で、ゆったりしつつも他の人に混じって説明が聞ける、なかなか好ポジションでありました。
 入り口近くには、アザラシのパロが。楽しそうにいじっている人が居たので、前を通りつつ。コンベアの生産ラインでそのまま人間の置き換えが出来るという、上半身&腕ロボットを見学。なんていうか、火の鳥とか手塚作品にそのまま出られそうなムードありますよね。
 近藤科学のKHR-2は、ここでももちろん子供達と大人達に大人気。逆立ちしてかちかちかち足を慣らす様に、お子さんがくっついて見学してましたよ。

 その横にはなにやら不思議な機械。これは。これはひょっとしてもしや。

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 これが! これがこれがッ! はまで式全自動イカ釣り機! 既に30年をゆうに超える歴史を持ち、業界の盛衰を生き抜いて今日確固たる地位を築いた(らしい)イカを釣るロボットです。
 凄いのはこのロボット、熟練のイカ釣り漁師の持つスキルをデジタル化して解析し、それを再現していること。さらに船上でも容易に操作できるインターフェースを搭載することで、高度な能力とユーザビリティを実現してしまっている事。

 実現して見せた事もさることながら、熟練の職人のスキルをロボットで再現しよう、と云うまっすぐな発想も、正座して聞くべきものがあります。技術の断絶、後継者の不足、熟練の技術が失われる事を嘆く声は多いですが、ロボットと云う手段を繰り出して、その技術を「保存」してしまった切り口は、頭が下がるものがあります。もちろん、それはイコールではないでしょう。しかし手をこまねいて見過ごすうち、ただ失われていく事を放置するよりは、はるかにいい事のはずです。そこに何かが残っていれば、人間がロボットから技術を学ぶこともできるはずなのですから。

 万博で働いていたゴミ収集ロボットは、その中に使われているレーザー式の環境認識センサが受賞対象。台座に乗ったノートパソコンが動き回っていて、ちょっとびっくり。
 その隣は、ロボット潜水艇「うらしま」。本体は大きすぎるので、5分の1スケールのカットモデルが展示されています。最初は液化水素で駆動させるはずだったのが、建造中に水素吸蔵合金の目処が立ったので、急遽後付で水素吸蔵合金を内蔵したらしいとのこと。そのせいで、燃料電池部と水素タンクの部分が不自然に離れちゃってるんだそうです。大きいものを作るときは、色々苦労があるんだなあ……。

 そしてその横には、なにやら金属製の鋭角的なタコのような不思議なものが、操縦席みたいなものに鎮座しています。説明を聞いて、なるほどと納得。これは重機を遠隔操縦するための、いわばマスタースレーブシステムのようなもの。
 火山活動などの危険区域で作業をする際に、パワーショベルなどの重機の操縦席にこのロボットをセット。
 人間がコントローラ(鉄人の操縦機に不思議なほどそっくり)を操作してロボットを動かし、ロボットが腕やら脚を伸ばし縮めてパワーショベルを操作。間にこのロボットを介在する事で、「重機の無線化」をやってしまう、と云うシステムな訳です。

 じゃあもともとの重機を改造すればいいじゃないか、と思うかもしれませんが、このシステムの肝は緊急災害に対応できる緊急展開性。一朝事あれば、分解して宅急便で(って説明の人が言ってました!)現地近くまで搬入。慣れれば一時間くらいで組み立て、重機に設置。後は人間が操作に慣れれば、あっと云う間に無線操縦の重機システムの出来上がりです。
 やはり中途にシステムが介在するので作業効率は一般的には落ちますが、重機を操作する人間への負担が減ることから…… つまり、重機ってのは、動かしたり作業したりすると運転席が滅茶苦茶揺れて、乗ってる人がすごい疲れるんですが、遠隔操縦であれば、もちろん操縦している人は揺れで疲れる事はないので…… 効率がむしろ向上するケースもあるそうです。
 ただこれはメリットとデメリットが鏡面の関係。揺れなど、重機の機体の挙動を感じることが出来ない事から、操縦者が重機にかかっている負担や負荷を感じる事が出来ず、結果的に重機のほうを壊してしまう危険性もあるんだそうです。色々難しいですね。

 そんなこんなで、色々見た後、満足して帰宅した次第。とりあえずイカ釣りロボットには感激しました。この業界に30年もの歴史があったなんて。プロジェクトXじゃやってなかったですよ。

 それにしても、思うよう。上半身ロボットといい、重機操縦ロボットといい、このあたりのロボットを見ていると。ロボットが人間の姿や機能を擬しているのは、ひとえに人間社会の中で無理なくフィットするための、ある種方便であることがわかります。
 まあ、ロボットが暮らす社会は人間の社会なわけですから、これは当然のことです。しかし本来の機能を発揮するためには。必ずしもその形にとらわれる必要はないのかも知れない。そんな気が、なんとなくしていました。でも、人間はたぶん、人間に似たかたちのロボットを求め続ける。

 人間にとって、人間そっくりのロボットはゴールである。でもロボットにとっては、人間そっくりのロボットはひょっとしたらスタートなのかも知れない。

 かつては自動車は人間のためにデザインされましたが、今日、法律や慣習はむしろ、自動車の機能を最大化するように最適化されています。道路といえば、人間ではなく自動車が走るものであって、それに誰も疑問を抱かないように。
 人間社会にロボットがフィットする社会から、ロボットのある社会に人間のありようをフィットさせる社会が、ひょっとしたら来るのかも知れませんし、そこまで到達すれば、もはや間違いなくロボットは成功したといえるでしょう。
 それは多分でも、単純にユートピアともディスユートピアとも割り切れない、一種、誰もがおかしいけど仕方が無い、と思うような社会なのかも知れませんね。

 上のテーマは、もう少しくさくさ考えられそうです。
 人間にとって、人間そっくりの知性はゴールである。でもロボットにとっては、人間そっくりの知性は、ひょっとしたらスタートなのかも知れない。そんな風にこう。

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