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2007.11.06

バカロボ2007観戦記【後編】

 さて。山里さんが次の選手の準備を確認し、ぜんじろうさんに「これ休憩時間じゃなかったんですか」とか言われているうちに。もう少し延びてから、五組目の演技が始まります。

5: カキールX & JUNKO2007

 これも不思議な状況からのスタート。かぶりものと言うか、フルフェイスのヘルメットに、肘に機械のついた手袋、ありようを言えばパワーグローブを装備した上で、女子高校生の制服姿の二人。一人はロボット搬入用のステージの上に寝そべり、もう一人の人が横に立っています。どういう状況なんでしょうか、と思っていると、ステージは暗転したまま準備にやや時間がかかっている様子。
 ヘルメットは顔面部に赤LEDが仕込まれており、「ありがとうございます」の文字が下から上へとスクロールしていきます。
 まずは立っているほうのパフォーマーの人、この人が持っているのがカキールXと言うことですが、ピンク色のひとかかえくらいのサイズのロボット。これが「かゆいところはないですか」とか言いつつ、頭頂部から歯ブラシのようなブラシを出して、もうひとりの人のヘルメットの上を磨いております。そして寝そべっている人の顔の前あたりには、ステージと一体化した小型のロボット、JUNKO2007が。正直言うと、何が起きたのか良くは判らないのですが、JUNKO2007が激しく震動し、周りのジオラマのビルが倒壊。真ん中のJUNKO本体も首がもげて落ちてしまいます。後の解説によれば、これがどうやら地震を現すパフォーマンスだったようで。JUNKOが完全に沈黙したところで修了となりました。

「これは誰の発案ですか」
「プロデューサーです」
「プロデューサーの方、出てきてもらえませんか」
「今    神戸です」

 すごい遠隔操作状態です。
 あとの解説によれば、ユニットを組むこのお二人、芸術コースのある高校の学生さんとのこと。しかし選択は芸術コースではない道を選び、それを後悔しつつ美術部の部室でこの2体を作成。大学に教えを請うてマイコンの制御を学び、それをロボットに仕込んできたのだそうです。どこにマイコンを使ってたんですか、と突っ込まれてましたが、歯ブラシのモーターの回転数や起動のタイミングをマイコンで制御していたのだそうです。制作日数は(のべ時間で換算して?)二日ほど、とのこと。
 ちなみに、結局かぶりっぱなしだった、電飾と言うかLEDを仕込んだヘルメット。これがなかなかクールだったんですが、これは先輩の卒業制作を使用したもの、とのことでした。
 途中で樋口監督が「女子高生だから」とバカメーターを一段階上げよう…… として初期段階まで戻してしまい、突っ込まれてあわてて手鏡で確認したり、山里さんがすっかり仮装大賞の金ちゃんモードに突入して「じゃあ手振って返ろうね」と二人を送り出したり。戻ってきた時、金ちゃんってすごいなあ、とか言ってましたが、声高らかにシーエムー!とか宣言されたらどうしようと思っていた自分がここにいます。
 二人がバックヤードに下がったあと、なんとステージに、デモ中にもげてしまったJUNKO2007の頭が転がったままになっているのを発見。山里さんがステージから呼びかけて、ヘルメットを脱いじゃったのかも、と心配していたところ、突如としてステージの入場ギミックが起動。……ああ、あれ土佐社長が操作してたんですね。飛び退く山里さんでありました。
 その後、あわててヘルメットをかぶりなおしたと思しき様子で頭を回収に訪れ、この一見は解決。結局顔を出さなかったお二人ですが、演技のあとに流れた取材映像で思いっきり顔が出ていたのはどう考えればいいものか。

6: 美影(みかげ)

 ここでいきなり、次の次の出番のはずのラマーズ4の名前がコールされ、山里さんが真っ白になりかけましたが。ほどなく呼び出しのミスと判明。ほっとしたコメントのあと、改めて美影の呼び込みが行われます。
 こちらは、小型二足を日頃見慣れた目には、ひさびさにロボットー!と言う感じのロボットです。メイド風と言うかゴスロリ風の衣装を身につけ、何やら乳母車のようなものに乗せられています。パフォーマーの方も白衣を着ての登場です。
 クラシックのBGMとともに、ステージは無言のまま進行。乳母車に乗ったまま、両手を大きく振って踊っている美影ですが…… あ、これはひょっとして。つまり白衣を着ているのはパフォーマーの人が医者と言うことで、これはシチュエーション的には「クララが立った!」、車椅子の女の子が自分の脚で立つ、と言うシチュエーションなわけですね。ひとしきりむずがったあと、医者(であるパフォーマー)に手を引かれ、乳母車もとい車椅子から立ち上がって一歩一歩歩き出す美影。最後は医者(であるパフォーマー)の胸に抱かれて、一緒に観客に手を振って綺麗に修了となりました。

 取材映像によれば、このロボットは萌えをテーマにした製作で作られたもの。スーパードールのボディを利用してフレームを作り、二足方向を可能にしたとのことで、萌えの最大公約数的なものを求め、不気味の谷を乗り越えるべく製作した、との由。
 「他のロボがどれだけバカなのか見てみたい。出会いもあればいいなあ」と言う製作者さん。「専門家なので厳しい目で見てしまうんですよ」と言う樋口監督、この場にそぐわないほど真剣な目と口調で美影の製作者さんと語り合っています。
美影、と言う名前の由来は。萌えの対象は本来二次元のものであって、それはそれぞれの心の中にこそあるもので実体とはなり得ない。美しいが影のようなもの、と言うことで、美影(みかげ)と名付けた、とのことでありました。
 稲見教授は、フレームの、ことに脚を細く仕上げた細工に着目されていました。そして樋口監督は静かながらも絶賛。「家に欲しい」との声に「監督絶賛じゃないですか」と山里さん。僕は斜め後ろくらいの席に座っている人が露骨に引いている声を上げていたのが気になりました。
 そしてステージ上、いつのまにかぜんじろうさんが居ません。席にはバカメーターだけがちょこなんと置かれています。すごい! いつ消えたんだ!? イリュージョンだ! と思っていたら、ほどなく復帰。トイレ行かれていたそうです。……すごいなしかし。
 この時点で、時刻は22時18分。終了予定時間を1時間20分押しておりました。

7: ラマーズ4

 本当の罠と言うものは、あることが判っていても引っかかってしまうものだ、そう言った人もかついていました。それと同じで、何が出てくるのかおおむね想像がついていても、実際にそれを目にすると爆笑してしまうと言う事はあることです。
 妊婦さんコーラスロボット・ラマーズ4。名前からしてすでに狂ってますが、四体の実物が並んで出てきた姿を見た時、僕は体をくの字に折り曲げて笑っておりました。だめだなんかこれすごいツボに入った。
 さて、このラマーズ4。この四体は言わばそれぞれスピーカー(恐らくはアンプ兼スピーカー)のようなもので。ヘソのあたりにつながったケーブルで、横にいるパフォーマーさんが持っているコントローラーと接続されているようです。同様に、口元にスピーカーがあり、この周りが黒く縁取られているのがなんとも黒ヒゲ危機一髪な風情。一方電源スイッチは胸についており、これを1個1個入れていく様が、司会にも審査員にも大好評と言うか、まがった風味にやや受けでした。

 一緒に出てきたパフォーマーの方は体格のいい男性で、なんかちょっとイタリアあたりの歌手っぽい服装。口元にはヒゲも。ラマーズそれぞれと接続されてケーブルをずらりとぶら下げたコントローラー(胎盤型だそうです)を抱え、この人も無言で直立不動です。
 電子アコーデオンのような要領で、コントローラーについているたくさんのボタンを押し込んでいくと。それぞれの音程で、四体のラマーズ4が歌い出します。はー、ふー、ほー、と言う感じでそれぞれ独立から和音へ。和音は音楽へ、さらにはなにかのバックの演奏のような雰囲気に…… 思った瞬間。いきなりだしぬけに、パフォーマーの人が第九を歌い出しました。それもものすごく朗々と。
 あまりのことに驚きつつ、人間ひとりとロボット四体のコーラスが響き渡り。歌声以外は終始無言のまま、ラマーズ4のデモは修了となりました。

 こちらの製作者さんは、明和電気土佐社長の大学の後輩さん。「学閥です」とか言ってました。

「明和電気さんの子孫みたいな感じですね」
「同じ大学の後輩です」
「こんな人ばっかりなんだ……」
「いや陸の孤島なので」

 紹介ビデオによれば、ちょっと前に流行したアカペラと、妊婦さんのラマーズ法を組み合わせてこのパフォーマンスを考え出した、とのこと。
 稲見教授は「胸などにスピーカーを内蔵しているロボットは多いが、きちんと口から音声を出しているのは立派」とのコメント。「どんなロボットにも立派なコメントがつくのがすごいです」と山里さんに違うところで感心されておりました。

8: ロボプッチョ

 さて、最後の登場はロボプッチョ。プッチョと言えばUHA味覚糖のお菓子です。そのなんか微妙にひずんだ顔をしたマスコット、ぷっちょくんのロボットがこのロボプッチョ。要素が中央からオフセットした感じの顔がついた四角いボディに、細い手足の生えたロボット。これが大1小2、ステージに登場します。それぞれには紅白の旗が手に握られて。
 オペレーターの方はつなぎを来た男性が二名。この方達は本当にUHA味覚糖の方々だそうです。

 小さいのが合成で「アカアゲテ、シロアゲテ」と始めたあと、大きなロボプッチョがゆっくりと前進しステージの前方へ。膝も足首もない感じの関節で、歩くたびに「プッチョ」「プッチョ」とサウンドロゴが流れます。小さいロボットに続いてこちら大きいプッチョでも、赤あげないで白あげて、とまずは紅白旗揚げゲーム。そのあとは移動しつつ向きを変更しますが、「プッチョ」「プッチョ」とサウンドロゴに足音に、途中「よいしょ」「よいしょ」と言う声が入ります。一体またこの使い分けはなんなんでしょうか。と思っていたら、今度はよいこらせいこら方向転換。するとその拍子にロボプッチョが転倒! 派手に転がった胴体は半分から割れてしまい、中身が見えてしまいます。音声合成でしばらく「タスケテー、オコシテー」と、腕をばたばたさせて自己主張していたロボプッチョ。どうなるのかと思っていたら、しばらくして腕がかたん、と力尽き、ロボプッチョ…… 沈黙。
 ご臨終です。

 脱力系なのに思いのほかブラックなラストで修了となりました。

 紹介ビデオによれば、こちらはUHA味覚糖の本物の社員の方。宣伝用に作られたロボットとのことで、撮影している風景の背後にはRB1000やKHRの姿も。小さいロボプッチョも大きいロボプッチョも構造としては同一で、使っているサーボの数は六軸。ちなみにこのサーボ、半分は自社開発だそうです(基盤はヴィストンのものを…… とあとで言っていたような気がしますが、よく聞いていませんでした。すいません)。

 こちらは今後の予定はまだ決まっていないものの、CMなどで使えるのではないか、とのこと。「陽の目を見ないものをだいぶ作ってきたので……」「いい会社ですね」とか、もうひとりの人の醸し出す「やらされてるオーラ」を感知して質問してみると、「六ヶ月前に異動の命令を受けて、産業ロボットかと思ったらこれで、それからずっと納得していない気分が続いています」とこれまた存外にシビアなお答えでありました。

 さて、これで八体のバカロボ、演技はすべて修了。一度緞帳が閉まり、審査が行われます……。

 ……再び緞帳が開くと、そこにはステージせましとびっしりと、八体のバカロボが勢揃い。首がもげたキントレーも大転倒したイナ☆ザウラーも、上半身がもげたロボプッチョも仲良く並んでいます。我が目を疑うほど圧縮濃度の濃い世界です。

 さて。あの例の往復するスポットライトの演出とともに、選出されたバカロボのグランプリは。2番目に演技したキントレーZでありました。どうやらご両親がいらしていたらしく、壇上から挨拶する製作者さん達。
 審査員の皆さんの挨拶からすると、審査が非常に割れていた様子がうかがえるのですが。「人間は鍛えれば強くなるが、機械は鍛えると減っていく。人間と機械の違いの本質が入っているのではないか」「アイデアひとつで、ここまで行ける」「フィクションにおけるギャグを実際にやる、と言うのはバカロボのテーマの一つなので」「この大きさと、ブートキャンプって言う色あせ気味のネタのチョイスが」「オチもついてなくて、一つの作品になっていた」と、それぞれの皆さんの評価でありました。

 自分の感想としては、単体としてのロボットの性能は、もうプッシュくんが抜群に優れていて、パフォーマンスとしての、なんていうか、遠いところに行ってしまいました度では勃具が一週上回っていて、それをラマーズ4が追う展開、みたいに考えていたので、キントレーZがグランプリ、と言うのは、実は意外な感じを受けていました。

 しかし考えてみれば、これは確かに納得できる結果だと思います。意図するところ、受け取るところはそれぞれあるにせよ、公式ページにうたわれたバカロボ2007は「笑えるロボットコンテスト」です。
 決勝参加の八組を見ていると、このような分類も出来ると思います。

1)ロボットがほぼ単独でパフォーマンスを行っていたもの。

 2:キントレーZ、8:ロボプッチョ

2)ロボットが主であり、ロボットをアピールするためにパフォーマンスが行われていたもの。

 1:プッシュくん、6:美影

3)ロボットが従であり、全体としてパフォーマンスになっていたもの。

 3:勃具、7:ラマーズ4

4)それはそれとして本人達が面白かったもの。

 4:イナ☆ザウラー、5:カキールX&JUNKO2007

 こう考えると、ロボットがあくまで主軸である、と言うところが揺るがなかったところで、キントレーZは非常に優れていたのではないかな、と思う次第であります。

 全体的に言うと、もちろんなんていうかこう。仕込まれたネタとしての面白さと、ロボットが本質的に持っている一生懸命さ、ギリギリ感みたいなもの、そして得体の知れない遠くに行っちゃってる感が混ざりもせずに繰り出されてくる感じで。お客さんの層も含め、非常にロボットイベントっぽくない感じで、これはこれで非常ーに楽しめました。雰囲気の違うイベントがあちこちであって、その層がゆるやかに重なり合っている、って言う雰囲気、非常に面白そうでしたしね。

 開場時間が遅くなり、いきおい終わる時間も遅くなった事だけがネックでしたが、あとで聞いた話では直前公演がすでに30分押しだったとのこと。始まる前からすでに押していたわけで、それはどうしようもないことです。
 ともあれ、にもかかわらずお客さんは大入り、おおむね好評だった次第で。これは気を良くして、2回、3回と続けてほしいなあ、と思う次第であります。

 ちなみにちなみに。大きなカメラで撮影されていたこのバカロボの様子ですが、後日、映画に編集されて上映されるとともに、DVDなども発売される予定、とのことでした。
 なんていうか、これはもうライブで見てぎりぎり感を味わって欲しい部分が非常にありますので、特に勃具の動きと音なんかは、せめて映像で見ないとあの「えー……」みたいなイヤな緊張感は味わえないはずですから。
 この文章を読んで気になった向きの方は、ぜひぜひ。上記の映像作品に目を通していただきたいな、と思う次第です。

 ……書いちゃってからなんですが。このレポートの内容について、怒られないといいなあ。びくびく。

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コメント

blog拝見させていただきました♪
バカロボで女子高生ユニットのプロデューサー的な者ですw
つまりあのフルフェイスマスクの製作者です。
クールと言って貰えて光栄でした☆
私、ただいま大学院生でありましてあの作品は学部時代の作品です。
上記に当時実験で使っていたサイトをリンクさせていただきました。
あれ自体はバカロボではなく広告メディアの実験としての作品なんです、実はw
よければアクセスしてください☆

投稿: sio | 2007.11.09 23:49

 コメントありがとうございました! 神戸にいると言われていたプロデューサーの方ですね。

 いや本当、あのメッセージヘルメットは非常に印象的でした。もうなんていうか、シュールなSFの登場人物っぽくなっていて素敵でしたよ(笑)。
 これがまた、制服姿にあのヘルメットと言うのが妙にはまってまして。「お二人はロボットじゃないですよね?」とか確認されてましたよ。

 サイトも拝見しました。……うっかりアンケート答えちゃいましたが(笑)。
 ともあれ、これからもご活躍、期待しておりますー。

投稿: sn@散財 | 2007.11.11 18:19

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