三つの質問と二つの見解。(☆☆)
一つのデータから二つの見出しを作る事が出来る、と言う例。
リンク: Wikipediaユーザーの過半数、「内容疑わしい」 - ITmedia エンタープライズ.
リンク: Japan.internet.com Webマーケティング - ウィキペディア利用者の約4割が内容を「信用」――アイシェア調べ.
要するに質問の回答を、「疑わしいと思う事がある」をメインに拾えば前者のような見出しとなり、「信用している」をメインに拾えば後者のような見出しとなる、と言う事。
ただネットでのニュース配信はインデックス中心が中心であり、要するに見出しの一行が勝負の世界。興味のある分野であれば中身まで詳しく読むでしょうが、インデックスだけを読んでニュースを大づかみに理解する、と言う人も多いでしょう。そもそもそのためのインデックスなわけですからね。
かくて、同じ会社の同じ発表のニュースを見ても。どちらを見るかにつけ、「やっぱりウィキペディアは疑わしい」と考える人、「やっぱりウィキペディアは信用できる」との印象を受ける人に分かれる、と言う按配です。
だから悪い、と言い切るわけにもいきません。同じソースをどう料理するのか? と言うところが、言うなればフィルタであるメディアの役割であるわけですからね。
「疑わしい、信用していない」と回答した人に理由を聞いたところ「記載された内容が自由に改変可能なため」が40%、「中立的でない、主観が入ってる」には38.5%と票が集まった。(中略)
ただしその信頼度に関しては「改変の自由さ」から、利用者の6割がフィルタリングを通して利用していると言える。
これはアイシェアのプレスリリースより。
ウィキペディアの信頼度に対する留保の理由が「改変の自由さ」のみがピックアップされていて、わずか1.5%差で二位につけている「中立的でない、主観が入っている」が拾い上げられていないですが、これは「一般のメディアも程度の差はあれ、中立的ではないし主観も入っているから」と言う解釈を取ってもいいんですかね。とひねくれた事を書こうと思ったら、それ以前の問題に行き当たりました。
質問と回答をよく読むと、「疑わしい/信用できないと回答した人」(55.6%+5% = 60.6%)だけに理由を聞いていて、その中の40%が「記載された内容が自由に改変可能なため」と答えています。つまり60.6×40=約24.2%。
上のプレスリリースのまとめをもっと正確に表現すると、『ただしその信頼度に関しては「改変の自由さ」から、利用者の24%がフィルタリングを通して利用していると言える。』とならなくてはいけないはずです。フィルタリングを通して見ている人は確かに全体の約60%でしょうが、36.2%の人は「改変の自由さ」以外の理由で、ウィキペディアが信頼しきれない、と答えているわけです。
そもそもこの質問の形式もおかしいといえばおかしいものです。
信用している 39.4%
疑わしいと思うことがある 55.6%
基本的に信用していない 5.0%
これで100%、と言うことは、質問紙はこの三項目です。ほぼ100%、おおむね0%、それ以外、と言う区分。
ちょっとでも疑いのある項目がある(もしくは、自分が見た事がないだけで、ある可能性がある)と思えば、ほぼ「疑わしいと思う事がある」を選ぶでしょう。むしろ、こんな三択で四割の人が「信用している」と答えた事自体がちょっとした驚異で、Japan.internet.comさんの記事はなるほどこういう見出しをつける理由も(ここまで考えれば)納得できる、と言う感じなんですが。
こういう質問であれば、例えば「一部疑わしいと思う事もあるが、大部分は信用している」「一部信用できる部分もあるが、大部分は疑わしいと思っている」と言うように、二番目の項目を細分化すべきでしょう。バランスを取るのは難しいでしょうが、「項目によっては疑わしいと思う」と言う質問を理想としては入れたいものです。なんにせよ、1%~99%では内容区分があまりにも広すぎます。「最初からここを選ばせようとして選択肢を作った」んじゃないか、とか、そういう風な考え方もできますね。
ウィキペディアの内容は、それは過度の信頼は禁物でしょう。4割は大変健闘していると思いますと言うか、そんなに丸呑みして信じていいのかとか、ちょっと不安ではあります。
さりながら、調査機関の調査も、それを掲載したニュースも、もちろん過度の信頼は出来ない。むしろウィキペディアと言う別の土地から生えた木が、第四の権力であるメディアとの間で相互チェック機能を果たしてくれるといい。そんなことを考えた記事でありました。よ。
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