「カーナッキのような霊媒までが……」(☆)
帰り道の電車で偶然にも発見してしまい、思わず衝動的に購入してしまったのが幽霊狩人カーナッキの事件簿。
そもそもカーナッキと言う名前を見かけたのは、十九世紀末怪奇ロンドンの百科辞典的小説・ドラキュラ紀元の一節より。切り裂きジャック(ここでは吸血鬼の娼婦ばかりを狙う殺人鬼)の探索のために、虚実入り交じった警官や探偵達がロンドンを徘徊します。ご存じレストレードやフロム・ヘルのフレッド・アバラインなどの中に混じって、《思考機械》ヴァン・ドゥーゼン教授と同じちょい役で、本当にちょい役で、「捜査はしたけど結果を出せなかった探偵達」の一人として、名前が拾い出されていたのでした。
カーナッキと言う聞き慣れない響きと、あとの解説に乗っている「幽霊狩人カーナッキ」の登場人物、と言う説明がなんともぐっと来て、なんとか読めないものかと思っていたものでした。幽霊狩人ですよ幽霊狩人。こののけぞったサブタイトルのつけかたが実にステキ。どっかでなんとか読めないかなあ…… と思っていたら、なんか本屋でちょろっと売ってたと言う案配です。
まだ二三話読んだだけですが、なんていうか不思議な感じの小説です。霊媒と言いますが、主人公トマス・カーナッキの使う道具は、言うなればクトゥルーの呼び声のPCクラス。しかして持ち出す道具が、五芒星に配置した真空管による電気式五芒星だったりして、もうなんていうかガジェットが無茶でステキ。そんなかたちで異次元からの形なき侵略者に脅かされたりしたかと思えば、よくよく調べたら実は霊現象も旧支配者的なものも絡んでいなくて、ロジカルに解決しうる事件だったりして。途中まで読み進んで、「この事件はどっちに振れるんだろう?」とわくわくしながら読めていく、と言う実にふしぎーなもの。全十話、楽しんでいきたいと思います。
因みにゴーストハンターではなくゴーストファインダーだそうです。カーナッキはカルナックなんでしょうねたぶん。
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コメント
ハイセンスですね!!
ヘップバーン=ヘボンみたいな?
ドラキュラ紀元とは著者も訳者も違うのに
創元推理文庫の編集者さんが同一人物なんでしょうか
そんなに古い訳でもないですよね
投稿: ヨッコ | 2008.04.04 14:19
>ヨッコ姉さん
あとがきをよくよく読んでみたところ、このカーナッキ。本来はかなり古い作品で、本国では最初の作品が1910年発行、初の邦訳は1952年だったそうです(絶版の由)。
この往古の邦訳で「幽霊狩人カーナッキ」と言うステキに過ぎる邦訳が付けられ、それがそのままドラキュラ紀元邦訳の時に引用されたみたいですね。こういうのを見るとやっぱりこう、むかしの邦訳はセンスがはりきってると思う次第です。
創元推理文庫もかなり好きですけど、今はなき社会思想社の日本語センスも大好きでした。ジュラシックパークだって、もし映画が公開されなければ「恐竜動物園」とか言うタイトルで邦訳されていたにきっと違いなく。
投稿: sn@散財 | 2008.04.04 23:07
はて? 確か訳は荒俣宏だったような気がしたんだけどそれって「異次元を覗く家」の間違いか…
本日書店で確認したら新訳という事が判明
ふーむ 創元さんありがとう
カーナッキに至ったのは
変幻の地のデルヴィッシュ→異次元を覗く家→カーナッキ
なんてコースでしたよワタクシは
投稿: サンドマン | 2008.04.09 01:15
>サンドマン先生
こんな、って言うと失礼ですけど、こういったマイナーな本を新訳ですからねー。ステキですよね。
ドジスンの本はほかに読んだ事がないんですよねー。ブライアン・ラムレイと一緒に探してみたいと思います。タイタス・クロウはめちゃくちゃで結構好きだったんだ。
投稿: sn | 2008.04.10 22:01