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2008.06.28

マーキュリーマン!(☆☆☆☆)

リンク: ___映画『マーキュリーマン』OFFICIAL SITE___.

 見てきました銀座シネパトス。結論。おもしろい! ちゃんとおもしろい!
 関東関西でたった2館の上映だなんて大変勿体ない、とくにアメコミが好きな人には全方位的にお勧めの映画です。

 たとえばこの映画を、アメコミの映画化人気にあやかったB級作品だと思っているのなら、それは大変な間違いだと思うし心得違いだと思います。それは確かに分類すればB級になってしまう映画だとは思うけれど。見せる! 楽しませる! と言うことを、きっちりと考えている作品だと思います。

 とりあえずはっきりしておきたいのは、彼はタイ版スパイダーマンでは決してない、と言う事。スーツ姿がスパイダーマン3のブラックスパイダーマンに似ている、と言うだけで、マーキュリーマンはスパイダーマンとはあまり似ていません。ピーターはヘタレなメガネくんですが(そしてもちろん、それが彼の魅力なのですが)、チャーンは内なる何かに突き動かされて危険に飛び込んでいってしまう、感情に振り回されてしまう直情的な男です。スパイダーマンは饒舌ですが、マーキュリーマンは黙して戦います。
 そしてマーキュリーマンの主な能力は、意外に思うかも知れませんが磁力。マグニートーもかくやと思うほど磁力を自在に使いこなし、それを流麗なアクションと場合によって切り替えて(融合して…… はいないのが、難と言えば難かも)披露します。トラクタービームのように磁力を使って自分の体を宙に飛ばすあたりは、でも、なるほどスパイダーマンと言われたら確かにそうかも、と言う感じ。

 もう一つ聞いてほしいのは、この映画が直裁的に訴えているのは、テロと、対テロとの戦争に対する、第三者からのアンサーです。悪役であるウサマ・アリは、そのわかりやすい名前の通りにイスラム教徒のテロリスト。アメリカ憎しを声高に訴え、アメリカを排除するためにテロ行為を繰り返す。これがアメリカの映画であれば、テロリストと戦うのは自明の理になってしまうか、あるいは問うこと自体が難しい問題となってしまうでしょう。
 しかしタイのヒーローであるマーキュリーマンは、その理と非を(あるいは仏教徒の視点から、と言うところもあるでしょうが)問いかけます。そして、悪い行いは悪い行いだ、と喝破する。

 見終わってから思うのですが、マーキュリーマンは正義のヒーローではないのかも知れません。むしろ、独善を戒め、独善と戦う、そんなヒーローなのかも知れません。
 前言を半分だけ撤回。目に見えないものじゃない、理念理想じゃない。むしろ手の届くものを守ろうとする彼は、確かに、タイのスパイダーマンなのかも知れません。表面的にではなく、もっと深いところで。

 さわりはこんな感じ。

 遙か古代より伝わる、神秘の存在『護符』。持つ者を不死身にするとも、恐るべき武器ともなるとも言われ、世界数多の神話の源となった存在。
 そんな『護符』のうちのひとつ、チベットに伝わる秘宝『月の護符』が、テロリストによる襲撃で奪われてしまう。護符を守るため戦うも力及ばなかった巫女・プニマは、月の護符の奪回を計画する。
 一方のタイ。大規模火災の現場で、消防士のチャーンがまたも命令に背いて無理な救助に挑んで、叱責を受けていた。正義感に溢れると言うより、衝動的な何かに突き動かされ、トレーニングに打ち込み、無理な救助に挑むチャーンは、チームワークを乱すとして職場からも次第に浮いた存在となっていく。
 そんな中、東南アジアの国際テロ組織の大物、ウサマ・アリが、収容されていたバンコクの刑務所からの脱走計画を実行に移していた。自ら事件の渦中に飛び込んでしまったチャーンは瀕死の重傷を負い、重なった偶然から『太陽の護符』の力をその身に宿してしまう。

 厳しい鍛錬で鍛えた格闘能力に加え、体から高温を放ち、金属を自在に操り、銃弾をも跳ね返す肉体を手に入れたチャーン。だが月の護符を手に入れ、また太陽の護符をも手中に収めようとするウサマの陰謀は、チャーンの家族を、そしてタイの平和を激しく脅かしはじめる。
 プニマに科せられた修行を超えたとき、チャーンは反撃を開始する。漆黒を纏う不死身のヒーロー、マーキュリーマンとして……。

 あと、ぜひものすごく見てほしいのが、主人公の妹(現在)・グレース役のパリンヤー・ジャルーンポン。
 微妙な書き方をしてますが、ええとですね。このグレース。元々は主人公ので。ムエタイボクサーとして鳴らしたあと、ファイトマネーで性転換して服飾デザイナーになったと言う設定なんですが。いくらタイの映画だからってこんな設定にしたらタイの人怒んないのか大丈夫なのか、と思っていたら、驚いた事にこのプロフィール、役者のパリンヤーの来歴、ほぼそのまんまでした。
 『ビューティフルボーイ』って言う映画で描かれてたそうなんですが、低い気合いの入った声でファイトを繰り広げる、なんかどう見てもチャーンより強い妹の姿を見ていると、これがリアルタイハーフか…… と、感銘を受けてしまうこと請け合いです。

 そんなわけで、全日本的に拡大上映を目指すためにも、是非皆さんに見てほしいー! と思う映画でありました。東京近郊の人は、たぶん映画館の銀座シネパトスを見るだけでも相当な話の種になると思いますので。機会があったら、たとえ無くても。ぜひぜひひとつ、でありました。

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コメント

マーキュリーマン見たい!

>パリンヤー
ああ、あのパリンヤーですか!
パリンヤーは10年くらい前、武道舘で女子プロレスラーの井上京子と異種格闘技戦やってました。

投稿: キャプテン | 2008.07.01 18:23

 きのうの飲み会は、なぜかマーキュリーマン率が非常に高い飲み会でした。4人中3人がマ組でマーキュリーマン見てない人が少数派と言う、二度と有り得ない状況でしてよ。
 そこで出た結論としては、「微妙に高い価格でDVDとして発売される。発売日に買わないと二度と手に入らないか、すぐにカートで1000円くらいで売られるかの二者択一」みたいな話でしたが(苦笑)。
 予想外のヒットで拡大上映、とかになってくれないかナー、と祈ることしきりです。おもしろいもの。

 パリンヤーさんは全然知らなかったんですが有名だったんですね……(笑)。アタックナンバーハーフといい、タイネタだと必ずこういう話がどこかにありますね。するとネオタイ代表のガンダムファイターは。いやいやいや。

投稿: sn@散財 | 2008.07.01 22:00

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