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2008.09.27

アイアンマン、黄金の贖罪者(☆☆)

リンク: アイアンマン - オフィシャルサイト.

 早速見てきました、土曜の第一回の回でアイアンマン。前評判も非常に高く、またメディアへの露出やアピールも非常に多かっただけあり。正直「あれ? 僕まだアイアンマン見てなかったっけ?」みたいな気分にうっかりなりかけてたりもしたのですが。見てきたら、いやいややっぱり面白かった。
 やっぱり路線としては、ダークナイトみたいに映画と殴り合いをする(むしろ一方的に殴られに行く)覚悟を固めて見に行くようなものではなく、あくまで娯楽作品として丁寧にまとめている感じです。
 ともかくも見て楽しい、うおーすげーすげー! と拳握り固める映画でありながら、後に何も残らない、と言うものでも決してない。トニーをはじめとする登場人物の複雑さ、行動の奥底にある割り切れなさは、ハルクでもそうだった、丁寧に人間を描いているからこそだと思います。

 マーヴルスタジオ作品に共通して思うのは、時間軸の整理の丁寧さが、話の筋を判りやすくするのに一役買っている、っていうところですね。ハルクでも非常にうまく煩雑な説明をまとめていましたが、このアイアンマンでも。物語冒頭、アフガニスタンで米軍の車列が攻撃を受け、トニーがとらわれの身となる衝撃のシーンから、時間を一度遡らせてゼロアワーへ至る道のりを、登場人物の紹介を兼ねて丁寧に描いています。

 --兵器産業スターク・インダストリーの『新商品』、超高性能クラスター爆弾ジェリコ・ミサイル。デモンストレーションのため、自身アフガニスタンに乗り込んだ社長にして兵器開発者トニー・スタークは、突然の襲撃で重傷を負い、謎のテロ組織テン・リングスに拉致されてしまう。テロ組織が(そして米軍も)、自社の兵器を使い戦争をしている。周知していなくてはいけなかった、そんな現実に打ちのめされるスタークに、彼等はジェリコミサイルの製造を強要するのだった。

 偽りの協力を誓ったスタークは、やはり拉致されていた科学者インセン博士と協力し、周囲のスクラップから二つのものを作り上げた。
 一つは、超エネルギー発生装置アーク・リアクター。生命維持機能をアーク・リアクターに置き換え、さらにその余剰エネルギーを使って動作する鎧、それがを二人の作り上げたもうひとつのものだった。廃材から作り上げられたパワードスーツ-- アイアンマン、マーク1アーマーの誕生である。

 圧倒的な戦闘力を見せつけるマーク1アーマーの力で。犠牲を払いながらも、スタークは安全圏へとなんとか脱出する。逃げ延び、帰国し、戦場で見たものの衝撃から、兵器開発からの撤退を表明した彼を待っているのは、陰謀と裏切り、孤立と孤独。
 戦争から利益を得続ける軍産複合体と言うシステム、自らの会社のかつての方針、それこそがスタークの最大の敵。それは、かつて知らずに侵し続けてきた過ちを償うためなのか。彼は自分自身で立ち上がり、世界に蔓延した兵器と戦う事を決意する。
 武器を捨てたスタークが手にするのは、剣ではなく鎧。空を飛び光を放ち、ただひとり幾数十もの銃口に立ち向かう。赤と金に彩られた現代の騎士、アイアンマンがいま立ち上がる!

 というわけでこちら、非常に丁寧に作られた、娯楽良作と言う印象でありました。
 まずなにより登場人物が非常に魅力的。動き出してからの行動は非常に合理的なのに、思いついて動き出す瞬間がものすごく衝動的なスタークのキャラクターと、彼の我が儘に振り回されながら、なあなあと適度にいなす、グィネス・パルトロウの演じる秘書のペッパー・ポッツのバランスが絶妙です。なんていうか(わがままないい年のおっさんの)弟を、適当になだめるやり手のお姉さんと言う感じで。一方、米軍所属のスタークの親友ローディも、カタブツ一辺倒かと思えば、スタークのいい加減さに多少流されてるところもあったりして。二人とも、スタークに都合のいいだけのキャラになっていないところがなんとも素敵です。

 皆さんが非常に良い、と事前に話をされていた、作中のアイアンマン開発シークエンスも勿論魅力的で。設計、開発、実験ときて、やってみたら色々問題点が見つかってフィードバックして、と、その過程が実に丁寧に(そしてユーモラスに)描かれていて。広いのに適度にとっちらかったスタークの開発室の雰囲気と相まって。ガレージで発明している、と言う手作り感にはたまらないものがあります。

 ちょっと可愛いのが、そのガレージでスタークの助手をしているロボットアーム。勿論アームだけなので、見かけは自走式の産業用ロボットって言う風情なんですが、うまくいかないとブツブツぼやくスタークに、文句ひとつ言い返さず(当たり前なんですが)従い、そのくせ、なんか言われるとしょげたようにアームをちょこんと下に下げてみたり。ロボットが好きな人なら、アイアンマンもいいけど、このアームも欲しい、と思ってしまうかもですよ。

 日本ではハルクに続き(本国ではアイアンマンの公開の方が先)、マーヴルスタジオ作品として順当に世に送り出されてきた本作。ロボットバトルよし、アイアンマンのメカ描写よし、人間ドラマよしと、セグウェイあり(ただし一瞬)と、非常に色々な方面から楽しめる作品だと思います。アイアンマンが映画になるのを夢にまで見た人はもちろんの事、いろいろな方に是非。見て貰いたいものだと思います-。

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