「アジは歩けない。衣つきならなおさらだ」(☆☆☆☆)
とり・みき先生ご本人のブログでも紹介されていましたが、なにげなく寄った本屋の店頭でいきなり眼に飛び込んできたのがこのカバー!
冷食捜査官ッ!
うっそおおお! このシリーズの新作が読めるなんて!? 夢? 幻? インフルエンザ? そんなことを思いつつ一気に購入し読み解いてしまいました。やっぱり面白い。これ大好き。
そもそも最初に読んだのは、確かコミックトムか犬家の一族へのクリップだったんじゃないかと思いますけど、なにしろシリーズの一作目である巻頭の作品、「冷たい女」は、初出なんと1991年。17年前の作品の新作ですよ。信じられますかはあはあはあ。すいません取り乱しました。
そこは鬱々と寒冷化した、薄暗い近未来。全ての食料は統制され、人類は安全な合成食料を食べて、何の不自由もなく暮らしている。しかし世界には未だに統制前の食料が隠微に蔓延り、人の手から人の手へ、そして不意に亡霊のようにその姿を現す。
「俺」は冷食捜査官。違法に流通する冷凍食品を取り締まる、農林水産省の回し者と言う奴だ……。
……えー、これだけ読むと冗談かギャグにしか思えないと思いますし、実際シチュエーション的なギャグもあるんですが、ときに「DAI-HONYA」のプロトタイプと紹介される特殊化されたこの世界は、どこまでも堅牢です。
陰鬱で、やるせなく、そして法の番人たる「俺」は、とりわけ事件を解決したその時に。どこか心に、自分が今捕らえたものの残り香を感じる。滑稽さを打ち消すほどに、真剣で重厚なモノローグで始まり、終わるこの作品群は、冗談めかしたハードボイルドと言って全く無問題の無いものです。
最初の見開き2ページを見て、あ、と思った方は、買って後悔しないと思います。そうでない方は、あー、大丈夫、僕たちは友達でいられますから。
一言言い添えると、Strawberry Fields Foreverの冒頭は、なんとなくですが、『SF大将』を思い出しました。
あと、石神伝説の続きも待ってます。
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コメント
完全に同じものに同日に引っ掛かっていて、大変安心しました。ダイジョウブ、ぼくらは友達です。
勿論石神井伝説の続きも待っていますよ。
投稿: 烏羽 | 2008.11.22 01:03
ルルイエが実は巨大な冷蔵庫、と言うヴィジョンを見てしまいました。
どうしましょう。
投稿: sn@散財 | 2008.11.30 10:00