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2008.12.14

西班牙武侠大活劇!御存知快男児アラトリステ(☆☆)

リンク: ___映画『アラトリステ』OFFICIAL SITE___.

 ひょんなことから(後日記載)、敗北者さん一押しで見に行ったのがこの映画『アラストリテ』。スペイン映画史上最高の予算を投じて作成された大冒険活劇で、本国での公開は2006年ですから2年前。主演は『ロード・オブ・ザ・リング』のアラゴルンでお客様方も皆様御存知、剣士役なら俺に任せろ、なヴィゴ・モーテンセンです。

 残酷な時の流れの果て。無敵の筈の艦隊も既に無く、沈まぬ筈の太陽もついに傾く斜陽の大帝国、17世紀のスペイン。
 フェリペ四世王のもと、寵臣ガスパール・デ・グルマン・オリバーレス伯爵はその辣腕を振るうも。内憂外患引きも切らず、時代は緩やかな老いを迎えつつある頃。ネーデルラント、フランドルの冷たい川の中に、部隊を率い、その男の姿はあった。乱にあっては傭兵、平時にあっては剣客。剣に己を賭け続ける貧しく傲慢な快男児、その名はディエゴ・アラトリステ。
 戦友ロペの最期の約束を守るため、その息子イニゴを従者として迎え入れたディエゴ。男として戦士として成長しつつ、謎の美少女アンヘリカにイニゴは心惹かれる。一方ディエゴは、請け負った殺しの仕事に裏をかぎ取り、標的の命を救った事をきっかけに、アンヘリカの叔父アルケサルや、オリバーレス伯爵達、彼等の陰謀と抗争劇に巻き込まれていく。
 忠実な、時に反発するイニゴと共に、あるいは戦場に留まり、あるいは戦地を離れた戦友達を頼みに、ある時はフランドルの戦場で、ある時は宿敵である剣客マラテスタと、陰謀と運命に翻弄されながら戦い続けるディエゴ・アラトリステ。世間の目を避け、ひそかに情を通わせる恋人マリア、そしてイニゴとアンヘリカとの運命もまた、時代と陰謀に、そして彼等自身の心の弱さに操り糸を握られ、全ては運命に流されていく。
 激しい冬の時代に、ひとりまたひとり欠けていくアラトリステの戦友たち。数十年にも渡るディエゴの遍歴と戦歴は、すでに決定された最期の戦場へと避けようもなく絡め取られていく……。

 と言うわけで、これはスペインの剣客小説の映画版と言うか、スペインの武侠小説の映画版と言うべき非常に大河な一本でありました。上映時間2時間27分、それでも説明不足に思えるほど詰め込み過ぎだと思っていたら、原作はなんと分厚いハードカバー5冊分もある(しかも完結しておらず、映画では小説に先駆けて、その先の展開まで描いてしまっている)と言う、とんでもないものでした。
 見た最初の感じが、「連続ドラマの劇場版みたいな感じだなあ」と思っていたら、まさにそんな感じだったわけですね。

 別に重要なポイントとして、スクリーンには当時のスペインの著名な劇作家、小説家、芸術家やもちろん政治家などが次々と登場してきます。起きている戦争も、出てくる人物も、スペインの人にとっては説明の必要もないほど有名な人物たちばかり。オリバーレス伯爵などは、リシュリューと比較されていたと敗北者さんが言ってましたが、本邦で言えば井伊直弼のような位置づけ、と考えればいいところでしょうか。
 つまるところ、日本の映画で言えば、幕末や戦国時代末期といったあたりの話を、特に説明もなく外国の人に見せるようなもので、そりゃあ予備知識があれば楽しいよなあ、と言うか、相当予習してから見ないとストーリーは難しいよなあ、と思わせる塩梅でした。

 アクションやビジュアルに関しては、全く言う事無しで満足です。スペインの剣客達の、鍔広帽にシャツ姿で、細身の突剣と短い短剣の二刀流で戦うスタイルは、当時のトラディショナルなスタイルなんでしょうね。銃を撃つために火口が必要で、冒頭、河の中から奇襲を仕掛けるシーンで、手首に巻いた火口の火が消えないよう、時々息を吹きかけながら移動するシーンなんかはぞくぞくします。かと思うと、後半の戦場シーンで描かれる長槍隊同士の激突なんかは。まるで津波の波頭が砕けるように人が死んでいく。個人の技量が大きな問題にはならない、そんなかたちでの戦場の光景を感じられます。
 戦場は盛大な血のイメージ。傭兵の戦い方だからなのか、ノドはかっ切るわ背中から何回も刺して確実に止めを刺すわ、いろんなシーンで人に返り血が飛んだりついたりするわで。でも血だまりと言うよりも、血の描き方と言うものに力が入っている感じ。
 ビジュアル的には、傭兵達や戦場の光景の不潔そうな感じが、きちんと不潔そうなのが大変好印象でした。マスター・アンド・コマンダーとか見た時も思いましたが、こういうところをきっちり描いてると、物凄く雰囲気的に嬉しくなるんですよね。

 複雑な背景と長大な原作を無理に詰め込んでいるだけあって、いろいろと省略に苦しむ部分もありますが、とんでもなく強くて生きるに不器用な、好漢にして快男児アラトリステの活躍を楽しむと言うところでも…… そこだけを見に行くと上映時間の長さに苦しむやもですが…… 同行した皆さんの意見はシビアなものでしたが、個人的には好作であり力作だと感じました。きっと力入り過ぎちゃったんですよ。
 そんなわけで、これから見に行かれる皆さんは、予備知識を仕入れて行かれると吉だと思います。とんでもなく力の入った映画干渉の手引きブログを開設されている方がいらっしゃいました。wikipediaの項目も、こちらのブログさんの記事がもとになっているみたいですね。
 いっぺん見た人も、こちらをチェックされると、あ-、と色々理解できると思いますよ。

wikipedia : アラトリステ (映画)
アラトリステ」映画鑑賞のミニ手引き

 原作は、一巻ごとに趣を変えて、同時代の有名人をうまく起用したりしてまとめているシリーズのようです。こういうところなんか、まさに剣客もののシリーズものって感じですよね。日本語訳はこちらが版元です。

 一寸だけしか出てこない人なんですが、マラテスタの愛人?役のお嬢さんの人が妙ーに心に残りました。と、個人的な〆でひとくさり。

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受信: 2008.12.17 17:01

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