【創作】空きっ腹の作家(★★☆)
公平に言って、賢いとは言いかねる男がいました。
男は物語を書くのが大好きでした。
歩いている人が食べているパンを見て、とても羨ましくなった男は、パンの物語を書けばパンを食べた気になれると思い、パンを称える物語を書き上げました。
それを見ていた人々は、「またあの男はかしこくないことをしている、パンの歌を歌ったところで、おなかがいっぱいになるわけでもないのに」と、男を笑いました。
歩いている人が着ている服を見て、とても羨ましくなった男は、服の物語を書けば服を着た気になれると思い、服を称える物語を書き上げました。
それを見ていた人々は、「またあの男はかしこくないことをしている。服の歌を歌ったところで、来ているボロが立派になるわけでもないのに」と、男を笑いました。
道を行く恋人達が幸せそうにしているのを見て、とても羨ましくなった男は、愛の物語を書けば愛し合った気になれると思い、愛を称える物語を書き上げました。
人々は男の書いた物語を読み、喜び、かしこくないと思っていた男の、思いもかけない才能を称えましたが、男はどうしても納得がいかず、ずっと首をかしげていました。
最初に書いたパンの物語のほうが、ずっと出来がいいし、気に入っていたのに、と。
空きっ腹を抱えて、男はずっと首を傾げていました。
| 固定リンク
「冗談」カテゴリの記事
- 【創作】ビロウ・ザ・レストルーム(2021.06.06)
- 【ロボットイベントレポート】大坂ロボットプロレス・チームばんび旗揚げ興行観戦記【公開リハーサル】(2016.12.07)
- 会社人間カンパニエ(全二巻)(☆)(2016.06.23)
- ぼくの考えたキン肉マン:マッスルエンパイア編(☆)(2014.08.30)
- これ昨日書けば良かったのかな:俺の山月記がラノベすぎてつらい(☆)(2013.04.02)
コメント