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2009.10.17

ローマ時代を梯子。(☆☆)

 首尾良く早起き出来たので、今日はローマに関する展示を梯子してきました。似たようなテーマの展覧会の梯子なんて、なかなか珍しい経験です。

 最初に行ったのは、国立西洋美術館の古代ローマ帝国の遺産。
 こちらは12月の13日までやっている展示で、取り扱われている時代は主に帝政初期、アウグストゥスとそれ以降の帝政初期の時代を、79年に消滅した有名な都市ポンペイの出土品を交えて紹介しています。
 とにかく圧巻は、皇帝と神々を象った大理石の像。解説によれば、アウグストゥスは共和制末期のヘレニズム的な描写を避け、500年も前に栄えたギリシア風の文化を参考にして-- アーモンド型の目や、理想化された体型など-- 自らの彫像などを作り上げ、それが時代として流行したとの由。並べられている白大理石の像は、造形といい迫力といいどれも圧巻です。
 なんといっても目を奪われるのは彫像の表情で、ほとんどは取り澄ましたアルカイックな無表情…… まさに「彫像のような美形」と言う表現が生まれるに相応しいような、破綻なく整った顔立ち…… なのですが、片腕を上げた皇帝座像に浮かぶどこか苦難にも似た表情は、まるで仁王か金剛力士を思い起こさせる、心理を思わせる顔立ちです。髭の男性神(ユピテルでしょうか)の像も、左右がわずかに非対称なあたりに、表情を感じます。
 細部の細部まで神経が行き渡っていて、一部の隙もない…… かと言うと、そうでもなくて。指は爪や指輪まで描かれているほど細かいのに、たとえば足を見ると足の指がほとんど描写されていない。グリフォンを従えた神の像は、柱によりそって立っている(安定させるため?)恰好になっているけれど、柱と体とグリフォンは、あるところで完全に融合して省略されている。写実と省略がものすごく上手くて、まるで何も省略していないかのように思ってしまう。このへんはすごい上手いですね。
 たとえば銀や画像などで神々を表現したものもあったのですが、大理石の彫像は量といい質といい、まさに圧巻でした。石の文明とは間違いないところ。ところで青銅器だけは別格でものすごく目を奪われましたが、出来がどうこう以前に、僕はひょっとしたら自分が古代青銅器マニアではないかとか思い始めた次第です。殷がすごいんだ殷が。違う今はローマの話だ。

 ローマの水道の部品が鉛を使った合金とか紹介されていてひやひやしたり、アウグストゥスが当時の文人とさかんに交流して、言わばメディア戦略をぬかりなく用いていたらしいことなどが紹介されている下りを抜けて、展示はポンペイの出土品に。絢爛な金のブレスレットなどが展示されている一方、出土状況のところに「人骨27」とか書いてあるところに、そっと舞台袖に仕舞い込まれたポンペイの死の匂いが漂ってきます。…………などと、穿ったものの見方をしているつもりでいたら、「硝子の骨壺(なかみいり)」が展示されていて、ガードを下げた心に真正面からカウンター。すいませんごめんなさい美術館ナメてました。

 ポンペイの風景と、ローマの市民達が余暇を楽しみ始めた話の中に、キケロの手紙があってにやにやしてしまいました。「別荘に来たらやる気が出なくなって、本読んだり海見たりばっかりしてます。執筆ぜんぜんやってないです」みたいなの。だめっぽい。

 地獄の門を背中に上野を出て、次に向かったのは東京八重洲は大丸デパート。ここの10階でも展示をやっていまして、こっちは古代カルタゴとローマ展です。
 ローマが王政から共和制に移行し、これから地中海に覇を唱えようと言う時代に、地中海の覇者だったのがこのフェニキア人の国家カルタゴでした。フェニキアの神々とエジプトの神々、男神バアルと女神タニットを信仰し、航海者であり商人であった彼等カルタゴ人は、シチリア島を巡ってローマと古代の世界大戦たるポエニ戦争を繰り広げ、ハンニバルやスキピオのような伝説を生み出したのち、敗北して破壊され尽くしました。
 しかし一世紀ののちローマ都市としてカルタゴは再び再建され、往時をも凌ぐ第二の最盛期を迎え、数百年の長きにわたり反映を遂げます。最終的にカルタゴはヴァンダル族によって破壊され、それは西ローマ帝国が滅亡するわずか40年ほど前の事でした。にわか勉強にわか勉強。
 そんなわけで、一度ローマ人が文字通り根こそぎぶっこわして、なおかつその上からローマ式都市を作っちゃう、と言う二段階戦術を取ったおかげで、長年わからないことが多かったカルタゴの遺物から、あれこれと展示がなされています。
 ローマ以後の絢爛なモザイク(そしてそこに描かれている血のモチーフ)にも目移りしますが、見所はポエニ以前の本当のカルタゴの発掘品でしょう。素朴なテラコッタによる副葬品の仮面、子供の副葬品として植えられていたと言う哺乳瓶。そして言わば墓碑にあたるのでしょうか、記念碑には必ず女神タニットの象徴化された姿が刻まれ、往時の信仰の厚さが伺えます。
 わけても鮮烈だったのが、「円形をしていた」と言うカルタゴの軍港の復元模型。多数のガレー船を擁したカルタゴ海軍の本拠地は、ガレーを引き上げて修理できる(それも船とほぼぴったりの横幅の!)乾ドッグをいくつも横に備えたと言う、まるで連邦軍の秘密基地か私鉄の車両基地か、と思うような機能的な面構え。こんなかっこいいものを……! と感に堪えない気分になります。

 さて、ふたつの展示を見ていると、展示の仕方にも違いがあり、なかなか面白かったです。
 西洋美術館のほうはスペースをふんだんに使えるだけあって、通路も広く、大きめの展示物をかなりのゆとりを持って並べています。一方の大丸の展示のほうは、もともとが広くないこともあり、それほど大きくない展示物を中心に(大きいものちゃんとありますよ)、割とこじんまりした感じでまとめています。
 ただ、個々の展示に関して、「これはこのようなもので、こういうことに使われていたと思われます。こういう特徴があります」と言う解説が、大丸のほうの展示ではほとんどの項目につけられており、見ているものがどういうものか、どこを見るべきか、と言う事が細かく提示されています。詳しい人が見ると邪魔になるのかも知れませんが、「あまり知識のない人にアピールする」と言う点では、これはかなりの好印象だと思います。
 ローマ展では、たとえば解説に「馬の頭部のついたオイノコエ」とか書いてあるんですが、オイノコエがなんなのか、と言う事についての説明はなかったんですよね(たぶん音声ガイドのほうにはあったんでしょう)。ちなみにオイノコエとは酒を注ぐ器のことなのだそうです。ピッチャーですな。

 似通ったテーマで二カ所で展示が行われると言うのは珍しいケースだと思うので、両方見に行って展示の仕方とかを比較してみるとが面白いのでは、と僕は思いますが、どちらか片方を、と言う事であれば、大丸のカルタゴ展の方をお勧めする次第です。詳しい事情がわかったほうが、やっぱり見ていて興味が沸きますからね。

 そんなこんなで、ローマな感じに浸ってきた休日でありました。
 ローマな休日(オチ)ということで。

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日記・コラム・つぶやき」カテゴリの記事

コメント

浸って来たと言うクセに両展示にはローマ風呂が欠けてるじゃないか
片手落ちですな

べ、別に妬んでる訳じゃないんだからね! ないんだからね!

投稿: サンドマン | 2009.10.18 15:14

 カラカラの時代とかじゃまだないころの展示なのと、カルタゴじゃないほうは個人の住宅の展示が中心だったので、浴場の話が出てこなかったのかも知れませんね。と言うのはともかく。

 大理石の彫像のような美形、って言う意味がよくわかる展示でしたよホント。石なんて一発勝負の素材で、あんなものを昔の人はよく作ったものだと思いました。

投稿: sn@散財 | 2009.10.20 22:50

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