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2009.12.12

【読書】江南の鐘(☆☆☆)

 中世中国、唐の時代を舞台に、のちの名宰相・秋仁傑(ディー・レンチェ)と副官達が難事件を次々と解決する。東洋学の大家ファン・ヒューリックに手による、「オランダ人の書いた中国探偵もの」ディー判事シリーズ。
 会社近場の図書館にハヤカワポケミスが意外と充実していることが解り、借りて読んで見ました。かなり昔にハードカバーで出ていた時期、一読したはずなんですが、やっぱり面白かった、と言う話。

 のちの名宰相ディー・レンチェ、まだ官界の修行中、と言う若い頃のお話。
 信頼する副官達とともに、地方都市の長官を歴任するディー判事は、転任命令を受けてつごう三つめの任地へと転任してくる。転任先は物資豊かな江南の土地、蒲陽。
 街は栄え民は富み、前任の判事も極めて優良な人物と、申し分のない土地柄に、ディー判事も副官達もいたく満足のてい。しかし繁栄に隠れた、そして繁栄を脅かす陰謀を、やがて彼等の目は鋭く見抜く事になっていく。自白しない殺人犯人、必ず御利益が授かると繁栄する仏寺、そして二十年間も同じ訴えを繰り返す老婦人。三つの事件が明らかになっていくうち、次第に追い詰められていく判事達。暗闘と陰謀のぶつかりあう鮮やかな逆転劇、ディー判事と四好漢の運命やいかに。

 ディー判事シリーズのおもしろいところは、判事の役どころがただ探偵や刑事というわけではなく、自ら罪を裁く立場にもあり、また地方都市行政の責任者でもある、と言う、立場の特殊さです。矛盾点を推理し、物証を発見し、犯人から自白を引き出せばはい終わり-- と言うわけではなく、トリックもギミックも見抜いて、犯人も手法も特定された段階から、どう追い詰めていくか、と言うところに見所が出てくるわけです。まして、一見明白な犯罪、犯人が現れた後も、行政官ならではの様々なしがらみに囚われ、明白な判決どころか調査すら行えない事もありえる、という。
 自由に動けない彼を、忠実な執事ホン警部とともに支えるのが、副官として判事に仕える三人の好漢。謹厳で剛直なチャオ・タイ、陽気な拳法の達人マー・ロン、さながら判事に仕えること関羽と張飛の如し。そして油断のならない三人目は、老いぼれ詐欺師のタオ・ガン。判事の手足となって陰に陽に立ち働く彼等の活躍が、小説のメインの部分を占める事になります。

 もっとも、本編では三好漢の活躍は割と控え目。タオ・ガンなんかは割を食ってばかりの可哀想な立場になったりもしていますが、今回の主役はディー判事そのひとです。
 知略と陰謀を駆使して暗躍し、表立っては戦うことも罰する事もできない相手を追い詰めていくディー判事の活躍っぷりは、その行動の理由を推理する事が、四つめの事件といっていいほどのミステリ。無意味に見える行動に、あとで判明する裏の意味を知るに及べば、なるほど、悪を倒すのは悪だけだ、と言うロジックも理解できるものだ、と思う次第です。

 なかなか入手困難だとは思いますが、シリーズの一編だけでも、一読をお勧めしたいと思う次第でありました。

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