波瀾の星、狩人の荒野(☆)
一作目「オルタード・カーボン」は文庫で出ていたのを買って読んで、二作目の「ブロークン・エンジェル」がハードカバーしかないのが文庫に落ちるのを待っていたんですが。どうしたわけか、三作目、この「ウォークン・フュアリーズ」がいきなり文庫で出るのが先だった、と言う。首はひねったものの、シリーズとはいえ必ずしも順番じゃなくてもOK、と言うことで、先にこっちを確保した次第です。
タケシ・コヴァッチは名前の通り日系人で、太陽系とは別の宇宙にある植民星ハーランズ・ワールドの出身、と言う設定でした。日系人が幅を利かせ、異星人の遺物がさらに幅を利かせる、謎めいたハーランズ・ワールドの描写は一作目でもちらほら出ていたのですが、今回の舞台はそのハーランズ・ワールドそのものです。
舞台の転々とするのが魅力でもあるこのシリーズなのですが、どうやら序盤の舞台はニューホッカイドーの様子。北海道の名を冠された広大な大陸は、内戦時代にばらまかれた自律兵器が、今なお手前勝手に稼働し続ける危険な土地。そこを「掃除」して安全な開拓地に変えようとする傭兵デコム・コマンド達の中に、いろいろあってタケシは紛れ込む事になるのですが、この当たりの光景が、なんともメタルマックス風味でたまりません。「これはニューホッカイドーの話だ。あそこじゃなんでもまだ稼働してる。そもそもそれが問題なんだろうが」みたいな台詞もあって、なかなかにニヤリです。
他にも主な登場人物一覧を見ていると、第一作で出てきて、特に内容については深く触れられなかった、ハーランズ・ワールドの革命思想の話なども出てきそうな雰囲気。まだ上巻のほんのさわりですが、すでに「アレ?」と思うような掴みもばっちり。
とりあえず通読して、そのあとさらにじっくり楽しみたいと思います。うむうむ。
それにしてもこの話、くにゃさんとちょっと前に話をしていた「キャラが死なないor死ねないPBM」に相通じる話があります。殺し屋を返り討ちにしたあと、さらに生き返って逆恨みされないようにもう一手間かけたりとか、そういう世界観でありますしなあ。
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