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2010.12.21

気の毒なジョン。(☆)

 例えば英国において、エリザベス女王やリチャード王と言ってもそれだけでは厳密には誰のことは判らない。同じ名前で王様になった人がいっぱいいて、たとえば今のエリザベス女王ならエリザベス二世陛下ですよね。ごっどせーぶざくいーん。
 しかしイギリスの国王でジョンといえば、今のところ一人しかいません。ジョン2世はいないのです。
 それがかの悪名高き、欠地王ジョンです。

 暴虐な君主の象徴の代表選手として歴史上つねに描かれるジョンですが、殷の紂王の例を見ても判る通り、悪逆も度が過ぎると、却って信憑性を失うものです。まして、誰かの評判を上げようと思えば、対照となる別なものの評判を落としてバランスを取る事は、近代ならずとも常に行われてきた事です。
 王朝の最後の王が暴虐である、と描かれるのは、それを倒した者の正当性を証明する為に、最も簡単で確実な手段であるからです。

 在位十年のうちイギリス領土に留まったのはわずか六ヶ月、父親が死に王冠を継承するや、あらゆる手段を講じて金を掻き集める。軍資金を手にするや王国を留主にしてひたすら戦争に明け暮れ(目的地に着く前も遠征途中にキリスト教国を何度も征服し)。
 念願の戦場で異教徒と戦うも、友軍と手柄を争って仲違いした挙げ句、単独で戦争を続け、結局、宗教戦争にも関わらず、異教徒相手に和平を結ぶ。その帰路に、かつて戦場で侮辱した王に捕らえられ、莫大な身代金を払う事になった。これを払う為に考えたのがハンコを変えること。「余はハンコを新しくした。ゆえに前のハンコをついた借用書は全て無効である」。本当にこういうことをやって、借金から外交条約まで踏み倒したと言う。

 これは誰の業績か? もちろん悪逆非道のジョン王…… ではなく、その先代の王にして兄、キリスト教徒一の騎士、獅子心王と称えられたリチャード一世の業績です。ジョンの風評が芳しからぬ事にはもちろんそれなりの根拠があるのでしょうが、リチャードのこの行動を見て、そのリチャードが英国の英雄として持ち上げられるのを見れば、そこになにがしかの後世の意図を感じるのは、むしろ自然なことじゃないか、とは思います。これがまだ、リチャード、ジョン、と兄弟続いて無能な王が続いた、とかなら、なんとなく判るのですが。

 思えば、リチャードは宗教的な情熱に突き動かされて十字軍を組織し、エルサレムまで進撃した騎士でした。一方のジョンは宗教にはもっとドライで、カンタベリー大司教任命の件で教皇と争い、破門までされています。当時社会にとって、教会の持つ世論への影響力は、今日におけるマスメディアの比ではなかったでしょう。
 気の毒なジョン。「ロビン・フッド」のジョン王も悪人に描かれているようですので、そのイメージを少しは緩和してくれる人が居る事を祈りつつ。

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