蘇るグリーンランタン(☆☆☆)
はるかな昔、高度な文明を築き上げた超宇宙種族ガーディアン。彼らはその総力を結集して超エネルギー源・セントラルバッテリーを作り上げ、そしてその力を操るための端末…… エネルギータンクとしてのパワーバッテリーと、力を発揮するためのパワーリング…… を作り上げた。
ガーディアンには計画があった。このパワーリングを宇宙に生きる多彩な種族の勇者達に託し、彼らの力を結集して宇宙全体の秩序と平和を守ろうとしたのだ。かくて宇宙は3600のセクターに分割され、パワーリングを託された3600人の勇者が生まれた。
宇宙を守る守護者グリーンランタン・コーズを結成した彼らは、無敵の力をもたらすパワーリングを受け継ぎながら、宇宙全ての平和を守るべく戦い続けていた。
……アビン・サーは、3600のセクターの一つ、セクター2814を守るグリーンランタン隊の隊員だった。ある惑星に宇宙船ごと墜落、死期を悟った彼は、リングに命じて己の後継者を捜させる。そしてリングは探し出した-- その惑星に住んでいたひとりの男、カリフォルニアのテストパイロット、ハル・ジョーダンを。
戸惑いながらも、パワーリングとその使命を受け継いだハルは、地球を含むセクター2814を守るグリーンランタンとなる。
シネストロら宿敵と戦う彼の活躍は宇宙に響き、多種多彩な他のグリーンランタン達…… 大は惑星クラスから小は細菌クラスまで…… の中でも頭角を現して、やがて最高のグリーンランタンと呼ばれるようになっていく。かたや地球では、スーパーマンやバットマンらと共にヒーローチーム・ジャスティスリーグを結成する。
恐れを知らぬ男、栄光のヒーロー、ハル・ジョーダン。
このとき誰が思っただろう。のち、彼がグリーンランタン・コーズに反逆を翻し、その隊員達とガーディアンまでも虐殺し、セントラルバッテリーを奪い去るなど。神をも凌ぐ存在パララックスとなり、己の望むまま歴史を書き換えんとして、かつて力を合わせたヒーロー達と干戈を交えることになるなど……。
そして、幾多の歳月が過ぎた。パララックスは消え、ハル・ジョーダンもひとたびは死んだが、あまりにも複雑な経緯を経た彼は、死んだとも生きているともつかないままに地上を彷徨っていた。このまま忘れ去られれば、ハル・ジョーダンにとってはあるいは幸福だったのかも知れなかった。
だが、意外にも宇宙の果てのセクター3599から事件は始まる。パララックスが復活しようとしていたのだ--。
というわけで、グリーンランタン初めての邦訳コミック! で、これはこれで非常に面白いのですが。非常に悩ましいのは、これはさすがにちょっとグリーンランタン入門にしては厳しい、僕だってそんな詳しいわけじゃなくて、結構一生懸命予習とか勉強とかしてなんとかついていけるぜ。というくらいなので、予備知識なにもない人に、これグリーンランタンです、って渡しても、? ってなるのが無理のないところじゃないかなーと思う次第。
というのはある程度無理からぬところで、「リバース」、再誕、のタイトルが示す通り。もともとこの作品、グリーンランタンの初代(正確には二代目)主人公であるハル・ジョーダンが、まあ40年弱くらい同コミックで主役を張っていたわけですが、そのあいだ色んな事が、そりゃもういろんなことが…… 死んだり復活したり、悪人になったり善人に戻ったり、宇宙魔神に超パワーアップしたり一部白髪になったり…… あって、キャラクター的にもかなり「詰んだ」状態になっていたのを。
投げっぱなしの設定とか貼りっぱなしの伏線とかを一度きちんと回収して再スタートする、言わばリセット編だからなんですね。つまり、一話が始まる前の段階で、すでに膨大な伏線とか前提があって、それをどういうふうに、こう、しれっと辻褄を合わせるか、と言うのを楽しむ作品でもあるわけです。推理小説の解決編だけ読んでいるようなもので、まあ、そりゃわからないですよね。と言う感じです。
そもそも作中にグリーンランタンが何人出てくるんだって感じですし(初代アラン・スコット、二代目ハル、三代目ジョン…… この人はアニメに出た人…… 四代目ガイ、五代目カイルに宇宙人キロウォグ、ジェイドも入れると7人)。もはやこの時点でおいてけぼり。
で、このグリーンランタンはそもそもなにかって言うと。見も蓋もないかんじですけど、レンズマンを思い浮かべて下さると一番近いと思います。超宇宙種族ガーディアンが作ったパワーリング、これがグリーンランタンの証。これを持っている宇宙人はなにも人間型ばかりではなく、むしろ人間型じゃない、じゃあ何型だって言われると大変説明に困る形状の宇宙人の皆さんのほうが多いくらいです。サムライレンズマン風に言えば「ぬるぬるの触手」みたいな。
レンズは意志疎通を強化する道具ですが、グリーンランタンのリングはもっとビジュアルに映える力を持っています。光を自由な形状に変えて、どんな武器も道具も作り出せるのですが、直裁的には緑色の念力と考えればだいたい間違いありません。でっかい拳にして殴ったり、剣にして相手と斬り合ったりと、描いてる人の想像力次第でいろんなことが出来るのが面白いところ。ちなみに全身に張り巡らせば宇宙服代わりにもなり、生身で宇宙をばびゅーんと飛んでいるかっこいいビジュアルのできあがりです。
弱点は24時間ごとに充電(まあ電気ではないですが)が必要なので、パワーバッテリーに入れて補充しないといけないところ。それと、何故か黄色の物体には効果がない、と言う事です。これについても、実は…… と言う理由が、ちょろっと出てきたりしております。
そんなこんなで、映画に備えての入門編としては、ちょっと厳しいかな、とも思う、このグリーンランタン・リバース。
とはいえ、重要な役柄でバットマンやスーパーマンなども出てくる豪華な一作であることには相違ありません。とくにこの作品でのバットマンの行動や立ち位置は、他のヒーローとバットマンとの関係を理解するのに充分なもの。
というわけで、あんまり詳しくない人にはちょっと難しい気はしますが。ご興味のある向きにはぜひ。な、このグリーンランタンなのでした。映画のほうはさすがにそこまでは、と思いますので。まだ先のことですけど楽しみにしていたいと思います。
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コメント
まあ、でも確かに入門編ではないですよね。
『リバース』以前の「グリーンランタン宇宙」の設定って、継ぎはぎで、でまかせのものも多いんですよ。
それを、ジェフ・ジョンズが新たな要素を付け加えながら再設定し直したアップグレード版第1話が『リバース』なんですよね。
ジェフ・ジョンズ版グリーンランタンは、こっから先が面白いので、過去についてはまあ「そんなことがあったんだな」程度でいいと思いますよ。
遡って読む必要も特にないと思います。
(アメコミでそれやりだすとキリないですし。)
『リバース』以降のレギュラータイトルは、ハル中心の地球編『グリーンランタン』と、ガイとカイル中心の宇宙編『グリーンランタン・コァ』の2つに分かれます。
新生コァの誕生編『リチャージ』が好きなんだけど、次に邦訳が出るとしたら『シネストロ・コァ・ウォー』かな?
でも、そうだったら『インフィニット・クライシス』が先か。
結論:ヴィレッジブックスがんばれ。
投稿: キャプテン | 2011.02.08 23:19
やめてみて!? ヴィレッジブックスのHPは以下略!?
というわけで一知半解、お恥ずかしい限りの生かじりなグリーンランタンで一席打ってみた次第です。とまれ、どこかで切れ目を設けて出すとしたら、たしかにリバースしかないんですよね……。いろいろ大変だったんでしょうなあ。
アメコミものでも地球が絡まない話はあんまり人気が出ない、とか言う話を昔ウォッチャーが言ってたような気がしますけど、グリーンランタンはそう考えるとすごい頑張ってるタイトルなんでしょうねー。
いつかはブラッケストナイトの邦訳とか出るのかなー。とか、気長に楽しみにしております……(笑)。
投稿: sn | 2011.02.09 21:51
あっ、『リバース』の帯裏見たら、夏に『グリーン・ランタン:シークレット・オリジン』が刊行予定って書いてあった!
『シークレット・オリジン』はグリーン・ランタン新シリーズの#29〜35で展開された、グリーン・ランタン=ハル・ジョーダンのオリジン、最新アップデート版です。
しかも、これ『ブラッケスト・ナイト』の伏線にもなっているのです。
奴らはやる気だ。
あと、余談。
グリーン・ランタンってレンズマンが元ネタなのは確かなんですけど、ある時期からジェダイ化してるんですよね。
パララックスはダースベイダー。
カイルは最後のジェダイ=ルークで、そのメンターであるガンセットはヨーダ。
シネストロ・コァはシスの暗黒卿。
つまり『リバース』は『ジェダイの帰還』なわけです。
じゃあ、ジェダイとして再生したアナキン(ハル)がルーク(カイル)やジェダイ化したハン・ソロ(ガイ)らとともに、シスの暗黒卿軍団(シネストロ・コァ)と大戦争を繰り広げたとしたら?
つまり『シネストロ・コァ・ウォー』はそんなお話。
投稿: キャプテン | 2011.02.13 01:49
おおう!>シークレットオリジン(今後につながるルート付き)。夏に出すってことは、秋に日本公開の映画につなげるコンボなわけですね。初学者にもそうでない人にも納得できる編成。なるほど……!
ガンセットがヨーダ……! 色々な意味で納得できすぎます。ガイ・ガードナーはハン・ソロ。なるほど。収斂性が高いですね……。
イエローリング持ってるのがシネストロ軍団なんですね。なんかサイボーグスーパーマンとか混じってる……。
いろいろ総合すると、確かに業界的にヴィレッジブックスには頑張ってほしいです。もしくは個人的に英語読解力身につけると言うことで。
投稿: sn@散財 | 2011.02.13 21:25