ガフールの勇者たち:危機の名は神話、または繁栄(☆☆☆)
第一部の主人公ソーレンと四羽の仲間達(~6巻)、そしてその次の世代となる、第二部の主人公ナイロックの物語(7巻~8巻)。話は古代に飛んで、伝説の英雄フールの出自が語られる第三部(9巻~11巻)を経て、3巻ぶりに原題に時間軸は復帰。
今回のストーリーラインの主人公は、新たな神木の王コーリン。彼を支えるソーレン達四羽…… 映画の主人公でもある勇者ソーレン、機敏なジルフィー、陽気な力持ちトワイライト、そして真面目な智恵者ディガー…… も、かなりひさびさに一線に戻ってきての活躍です。
純血団を散々に打ち破り、ついに伝説の燃える石までも持ち帰り、未曾有の繁栄を迎えようとしているガフールの神木。懸念の晴れないコーリン王を誘い、ソーレン達は領土巡察の旅に出る事に。ところが旅先で耳にしたのは、神話の時代に滅んだ筈の黒フクロウの魔術の影。一方、神木の留主を預かるオツリッサやマダム・プロンク達は、神木のフクロウ達が「燃える石」を崇拝しはじめたのを目の当たりにすることに。やがて神木は内外から、深く静かに危機を迎える事になる…… と言う筋書き。
やはりベテランの域に達した四羽の、ひさびさの活躍が拝めるのが嬉しいところ。ジルフィーが先導し、トワイライトが歌い、ディガーが熟慮するコンビネーションに、すっかり父親になったソーレンが、よき年長者としてコーリン王を補佐しているのも印象が強いです。若い頃よりいいキャラになったなあ。
意外なキャラが意外な姿で再登場していたり(涙が出てきます……)するのも面白いところ。見所は、これまで脇役としてちょいちょい出てきた派手好きの歌姫マダム・プロンクに意外なスポットライトが当たっているところでしょうか。したたかで現実主義なのは変わらないけれど、それはそれとして彼女も意外な侠気を見せてくれます。
もちろん、ぼくらのヒロインおつりさんことオツリッサさんは今回も絶賛大脇役。この人、大人になったら絶対めんどくさい大人になるなあ、と思っていたら、予想を裏切らぬめんどくささで実にステキ。有能なのに生きるのがヘタな彼女の姿はぜひ注目を。
13巻もどうやら7月頃には出るようで、このペースなら来年早々には完結までこぎつけそうですね。とうとう「異生物」のことがクローズアップされてきたようで、一体どう結末をつけるのか。非常に楽しみにしたいと思います。あとおつりさんの行く末も。忘れそうになるけどジルフィーも。
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