マルドゥック・スクランブル(コミック版)(☆☆☆☆)
原作は改訂の文庫版を読んで、ヴェロシティに行く前に、と思ってコミック版に手を出してみたのですが、これはかなり大胆なコミカライズで唸りました。
もちろん大きな話の流れは原作に準拠しているのですが、細かいところどころか、かなり大きくキャラクターの動き目が変わっている(例えば裁判所のシーンは丸ごとなくなっていて、検事のキャラがだいぶ変わっていて、原作ではそこで暴かれていたバロットの過去は違う状況で語られている等)のですが。それが違和感よりも、むしろ「これもありだ」と思わせる方向で動いているのが凄いところ。
文章と言うスタイルではなく、コミックと言うスタイルに最適化した、と言う域を超えて、原作をばらして作り直している、しかもそれが原作の精神に準拠していて面白い、と言う。ビッグオーにあった台詞で言えば、「譜面に忠実ではないが、譜面に誠実」なコミカライズ。これはやられました。
筋立てを整理してくれるオリジナルキャラクターの使われ方や、「一見、許容範囲内の異常者」といったかんじのデザイン(このへんが絶妙)の、猟犬五人組の鬼畜な暴れぶりといい、原作を読んだ人も読んだ方が、と思うところは数限りなくあるのですが、ひとつどうしても触れたいのは、なにかを食べているシーンが、ストーリーの組み立てやキャラクターの把握に大きく貢献していること。原作の食事シーンも良かったですけど、こっちもいいです。カンノーロを食べるシーンが、ほんとにほんとにもう。
バロットはともかくとして、ウフコックがデザインといいキャラクターといい、かなりマスコット寄りに調整されているのは受け付けられない人もいそうな気はしますが。まだ途中までしか読んでいませんが(まだ読んでるのは2巻、巻末で猟犬五人組との戦いが始まったあたり)。こちらも続きを楽しみに集めてみたいと思います。
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