X-MEN:ファースト・ジェネレーション(☆☆☆☆)
リンク: 映画「X-MEN:ファースト・ジェネレーション」オフィシャルサイト 6月11日(土)全国ロードショー.
1960年代、アメリカ。のちに冷戦と呼ばれることになる時代。東西対立の影で暗躍する秘密結社・ヘルファイヤークラブと、その首領セバスチャン・ショウを、二人の男が追っていた。一人は平和のために。一人は復讐のために。
ひとりは遺伝子と生物の変異について独自の理論を発表し、その道の専門家として注目を集めていた青年チャールズ・エグゼビア。そしてもう一人は、ナチスの収容所で人生を破壊され、家族の、そして自分自身の復讐のためにショウを追うエリック・レーンシャー。互いに交わる事のないはずの二人の人生。しかし、二人には共通のひとつの秘密があった。世界の誰もがまだ誰も、その存在を知らないもの-- 生まれながらに超能力を備えた、新人類・ミュータントだったのだ。
陰謀を巡らすヘルファイヤークラブとの戦いの最中、やがて二人は出会うことになる。秘密を共有し、互いを尊重する親友となり、やがて力を合わせて、まだ見ぬ若き同族達を導き、彼らを指導し訓練すると言う大きな責務にやがて乗り出す事になる。
チャールズに庇護された少女若レイヴン、天才青年ハンク・マッコイ、強力過ぎる自分の能力に振り回されるアレックスらが、彼らに見いだされ、彼らのもとで学んでゆく事になる。時代が迎えた急激な危機の真っ直中に、やがて若者達を率いて二人は乗り込んで行く事になる……。
その頃、まだ世界の誰もミュータントの存在を知ってはいなかった。人類とミュータントとの対立も、まだ存在してはいなかった。世に知られる最初の世代のミュータント達の、最初の戦い、そして最後の共闘の、これは物語。
というわけで、X-MENファーストジェネレーション、見て参りました! のちのち述べますが。いろいろとしくじりをして最初の数分見逃したものの、大満足のていでありました。X-MENは実は3を見ていないんですが。2が最高なのは譲れないとして、ウルヴァリンよりもこちらのほうが好きかも知れません。
舞台の主軸は、若き日のプロフェッサーXとマグニートー。二人がまだ若く、世界にはまだミュータントは知られておらず、従ってまだミュータント差別が存在もしてはいない頃。東西冷戦の影で暗躍する組織ヘルファイヤー・クラブ…… ここでこれ使ってくるか、と言うところが実に心憎い…… と戦うためにミュータントを集める事になるのですが、若い生徒達にも話のフォーカスは当たるものの、話のメインになるのはやはりチャールズとエリックの二人に、セバスチャン・ショウとの対立。
そして面白い切り口なのは、もう一人の主人公…… と言うか、事実上のヒロインとして、あのミスティーク、レイヴン・ダークホルムがクローズアップされているところ。シリーズの悪側レギュラーとして、つねにマグニートーに連れ添って陰謀を巡らす悪女、と言うイメージが強いミスティークですが、年代を遡ったこの頃のミスティークは、エリックではなくチャールズに庇護され、自分の本来の姿を嫌悪する少女として登場します。ミュータントと人間、異相のフリークスと正常な多数派、その狭間で苦悩する存在です。
マシュー・ヴォーン監督の作品は、他はキック・アスしか見た事がないのですが、相似と対比と言うものを上手く話に、そしてビジュアルに繰り込んでくる監督なんだな、と言うイメージを持っています。キックアスの主人公とマフィアのボスの不思議な相似、彼らとビッグダディ&ヒットガールの強烈な対比。そんな相似と対比が幾重にも織り込まれているのが、今回のX-MENなんだなあ、と言う印象を受けます。なおかつ、すべてのものが表層ではなく、別の角度から見た側面を持っている。チャールズとエリック、彼らとセバスチャン・ショウ。ミュータントと人間、平和と戦争、ソ連とアメリカ(特にソ連艦隊とアメリカ艦隊の描写の対比の際立ちっぷり)。
ことにエリックとチャールズの、ミュータントであると言う事の陰と陽の側面。その狭間にいる存在がミスティークであるわけで。彼女が物語の軸のひとつを担うのは、脚本の妙であります。
ただ気合が入りっぱなしと言うわけではなく、シーンシーンにちょっくらお茶目を越したボケを転がり込ませてみたり(エンジェルと出会うシーンは必見)、過去のシリーズを思い起こさせる小ネタと言うかむしろイジリを詰め込んでみたりと(ショウにまであんなこと言われてるし)、ブリティッシュコメディみたいな茶目っ気もたっぷり。ビジュアル的にも、華美な方向や幻想的な方向ではなく、軍艦だったり、会議の席上だったり、小道具周りに至る雰囲気を地味目にかつしっかりと作っている印象。
やや詰め込みの印象があるのと、X-MENシリーズを見た事がない人にはなかなか勧めにくい映画ではあるのですが。ただのあの人々の若い頃の話、と言うところに留めず、歴史的事件にX-MENの存在を思いっきり絡めると言う野心的な脚本は見応え充分。
夏に向けての娯楽映画の第一陣として、これはお勧めしたいと思います-。
……にしても作中、どうもリモコンでテレビの音量を操作してるっぽいところがあって、そこだけちょっと気になるんですよね。内容は気に入りましたし冒頭を見落としているので、時間があったらもう一回見に行こうかな……。
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