緑雪洞、緑弓(☆☆☆)
舞台はDCユニバース、スーパーマンやバットマン、ザ・フラッシュと同じ世界での物語。
銀河の大脅威に常に目を光らせる宇宙の守護者・グリーンランタン・コーの隊員であるハル・ジョーダンは、星空を駆け巡り、隕石を打ち砕く力すら持つ超戦士。
ある事件を巡って、弓矢の名手である無頼のヒーロー・グリーンアローと対立することになった彼は、今まで思いもしなかった、アメリカを巡る現実に直面する事になる。深刻な人種差別、薬物汚染、貧富の拡大、狂信的なカルト。
善悪のはっきりと分かれた天上界から、誰が正しくなにが間違っているのも定かならざる地上への堕天。グリーンアローとグリーンランタンは、今まで描かれなかった「現実」とぶつかりながら、アメリカを渡る旅を始める事になる。
1970年、日本の漫画界でなにがあったかとちょっと調べてみたら、力石が死んだり銭ゲバの連載が始まったのは1970年の事だったらしい。すごい年だったんだなあ。
売り上げの凋落に悩んでいたグリーンランタン誌の企画として始まり、ゲストにグリーンアローを招いて続いたこのシリーズは、コミックの中に、今そこにあるアメリカ社会を持ち込んで表現してみせました。それは第一話で、大家と住民のいさかいにたまたま介入したグリーンランタンが、黒人の住民に切々と諭される台詞で、はっきりと示されています。
曰く、あんたはオレンジの肌や紫の肌の宇宙人を助けてるんだってね。でも黒い肌の人間のことは……。
まだ前半を読み終えたばかりですが、悩む正義感グリーンランタンと、行動を重んじる好漢グリーンアローのコンビは、ある種、DCの理想と現実の象徴、スーパーマンとバットマンのコンビに相通じるものがあるかも知れません(あそこまで万能でも悪人でもないとは思いますが)。
いずれにせよ、ここで持ち込まれ語り継がれた「現実」は、やがてウォッチメンやダークナイト・リターンズのような形で一度結実し、さらにそのラインは今に至るまで脈々と語り継がれる事になります。
事件が一応解決しても、本当にそれでいいのだろうか、と後味の悪い余韻の残る物語。疲れている時にはなかなかつらいですが、気になる物語。後半もじっくりと読み込んでいきたいと思います。
このあとすぐ、グリーンランタンとアヴェンジャーズの新刊も控えてますしね-。
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