シビルウォー、戦いにはつねにふたつの正義……(☆☆☆☆)
最初にTIGER&BUNNYの設定を聞いた時、真っ先に思った事。それは「今にもシビルウォーが始まりそうな話だなあ」と云う感想でした。
その時点でシビルウォーはもちろん未訳であったため未読でもあったのですが。今般、邦訳が出版され、ようやく読む事ができました。
2006年発表、全7巻。キャプテンアメリカやアイアンマン、スパイダーマンが登場するこの話は、こんな風に始まります。
--ティーンズの若手ヒーローを中心としたヒーローチーム・ニューウォリアーズ。リアリティTVと契約した彼らは、カメラや取材チームを引き連れて。アメリカの片田舎に潜伏していた悪人達と、意気揚々と戦います。いかした台詞とシャープなパンチで格上の悪人共をブチのめし、堂々の大勝利。になるはずでした。
悪人のひとり、ナイトロが大爆発さえ起こさなければ。
周辺のなにもかもが死にました。
ニューウォリアーズは全滅。戦っていた悪人達も全滅。近くにあった学校、近隣の住民数百人も。
駆けつけたアヴェンジャーズとX-MEN、ヒーロー達の混成軍が目の当たりにしたのは、焦土と化した街。あるいは骨だけになり、あるいは黒焦げとなった無数の遺体。そして瓦礫の下のわずかな生存者。
そしてそれは。ヒーローであるはずの仮面の人々に、市民が疑いの目を向けるようになる、決定的な出来事となったのです。
全ての超人達に正体を明かし、データベースに登録する事を迫る超人類登録法。これが成立すれば、多くのヒーロー達はその活動を非合法とされてしまう。避ける方法はただひとつ、マスクを脱ぎ、政府の前にその正体を公表すること。
議会で可決し、署名され、発効を待つばかりの登録法。キャプテン・アメリカはそれを受け入れる事を肯んぜず、アイアンマンはそれを推進する道を選びます。
それぞれに仲間を集め始める両者。政府の秘密軍事組織シールドと協力し、非合法のヒーローを投獄する牢獄を設計し、キャプテン達と戦うための策を練るアイアンマンと、ハンク・ピム、Mr.ファンタスティックら、その一派。一方で地下に潜り、追い回される仲間達を救いだし、味方の戦列に加えていく、ルーク・ケイジ、デアデビルら、キャプテンアメリカのシークレット・アヴェンジャーズ。
それぞれの道を選ぶX-MEN、スパイダーマン、ファンタスティック・フォー。不気味な動きを見せるシールド。家族が友人が、仲間達が。敵味方に分かれる。離反する者、合流する者。血を流し犠牲者を出し、多くのものを巻き込みながら、戦火は拡大していきます。勝利のために繰り出す手段の数々に。なんのために、誰の為に、戦うのかを次第に見失いながら。
とにかくとんでもない数の登場人物が登場し、事態が複雑に転々としていく物語。人々の信頼を失い、それを取り戻さなければならない立場のヒーロー達が、敗北の恐怖と闘争の熱狂に次第に取り付かれていく。派手で豪華でありながら、辛く厳しく、答えの出ない物語でもあるのです。
あまりにも多い登場人物があるので、とっつきがいいとは決して云えない作品なのですが。なんとかして、いろんな人に読んで貰いたいなあ、と思う次第です。
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コメント
京都国際マンガミュージアム一階のえむナビに置いてあるアメコミ「シビルウォー」(日本語版)は俺が寄贈したものだ!!。すごいだろう?。
投稿: 山田与作 | 2015.07.19 16:05