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2011.10.15

キャプテン・アメリカ、例えその気持ちが何百回裏切られようと。(☆☆☆)

 第二次世界大戦! 欧州を席巻したナチスの猛威は今や世界を覆い、アメリカもまたこの敵と戦う為に戦乱の中へと斬り込んでいた。新大陸の兵士達が、イタリアへ、フランスへと陸続と送り込まれていたその頃--。
 兵士になることを許されなかった一人の男が、今日もまた志願兵の門を叩いていた。
 虚弱で病弱な青年、スティーブ・ロジャース。のちに世界最初のヒーロー、キャプテン・アメリカと呼ばれる事になる男。

 スティーブ。体重の不足と持病のせいで、兵士に志願するも何度も失格になった、ひ弱な男。
 それでも、彼は。皆に迷惑をかける奴がいれば、見逃せない男だった。殴られても逃げる事なく立ち向かう男だった。咄嗟の危機に、考えるよりも先に。自分の身を投げ出すことを厭わない男だった。
 軍人となった親友バッキーにその身を案じられ、戦う事はないんだと諭されながらも。皆が、仲間達が命を賭けて戦っている間、ただ弱いからと言うだけの理由で、己ひとりが安全なところに居る事に耐えられない男だった。--そして、それでもなお。悪を憎んでも、人を憎まない。本当は誰も死なない事を望んでいる、そんな男だったのだ。

 ほんの偶然から、超人兵士製造計画が彼の存在を見いだし、プロジェクトに加え、鍛え、試し、そして、被験者第一号にスティーブを選んだ。亡命ユダヤ人のアースキン博士がスティーブに望んだこと。それは、いつまでも彼自身のままでいること。善良な人間でありつづけること。
 実験は成功する。ナチスの破壊工作とアースティン博士の死と言う犠牲を払いながら、第一号の、そして唯一の超人兵士として、スティーブ・ロジャースは再び生まれ変わる。だが、博士の死で超人兵士計画が挫折した今。戦場に立つはずだった彼の運命もまた大きく狂っていた。
 強く優しく、ひ弱だった青年スティーブ・ロジャース。キャプテン・アメリカを、人々の理想の体現者となる道を選んだ男の物語である。

 というわけで、見てきましたキャプテン・アメリカ。

 もちろん物語は過去、第二次世界大戦。キャプテン・アメリカ誕生の経緯を語る映画でありながら、娯楽としてうまくまとめられた戦争映画、と言う雰囲気でした。

 物語の中心はもちろん超人兵士キャプテン・アメリカ、宿敵は頭が赤い髑髏となったナチスの改造人間レッドスカル。彼ら二人が軸なのは変わらないのですが、敵味方に多くのキャラクターを配し、しかも両陣営が、それぞれ生き生きと動いていく。そんな集団対集団と言う図式が非常にうまく描けている、星条旗を着た娯楽スパイ&戦争映画、として組み立てているのが上手いところ。

 味方は多士済々、スティーブの理解者である美女のエージェント、ペギー。父親のようにキャプテンの誕生に関わったアースキン博士。名優トミー・リー・ジョーンズの演じる老練な指揮官フィリップス大佐、あのスタークの父親ハワード・スターク。
 ダムダム・デューガン(ほんとそっくり!)ら、Aチームのように豪快でタフな特別部隊の面々。そして、キャプテンの最大の盟友、バッキー・バーンズ。
 敵もレッドスカルとヒドラ党に、兵器を開発する天才科学者ドクター・ゾラ、さらには彼らの後ろ盾となるナチスの軍団。

 そんな彼らが、一枚岩とは言えない敵と味方、それと裏腹の戦友の絆。それぞれに得意分野を持つ寄せ集め部隊の野郎共、さらには巧みな調略による情報収集、等々。
 悩み、迷い、それでも進もうとする、シンボルたるキャプテンの周囲で、組織と組織の戦いは着々と繰り広げられている…… と言う組み立ては正直うまいなあ、と。ちょっと見ると単純な筋立てに思ってしまいそうな映画ですが、巧みで軸がぶれないプロット運びは上手いの一言です。……キャップの「任務」とか、本当にもう根性悪いなと思うくらいの説得力があって、もう。
 ストーリー運びで、意外に思ってかつすとんと落ちたのは、相棒バッキーの扱い方でしょうか。二人の関係性をああいいうふうに捻った事で、リアリティに傾くと浮いちゃいそうになるバッキーの存在が、元々よりもうまく落ち着いていたんじゃないかと思います。ウィンターソルジャーっぽい雰囲気もちょっと出ていたりして。

 俳優ではトミー・リー・ジョーンズと、トビー・ジョーンズ、二人のジョーンズの存在感が際立ちます。つねに不敵で動じないフィリップス大佐と、内心を動作のはしばしに覗かせるドクター・ゾラ。仮面劇でもものともしないヒューゴ・ウィーヴィングも、怪演っぽい雰囲気でレッド・スカルを演じきっています。なんだか楽しそう。

 キャプテン・アメリカと言う名前、あの外見から、これがアメリカ万歳ー、な脳天気な映画だと思う人は、きっと多いのだろうと思います。それが原因で見に行きたくない、と思う人も。
 しかし、アメリカとはなんでしょうか。それはアメリカ軍でしょうか、アメリカ政府でしょうか、アメリカの大統領でしょうか。アメリカの国民でしょうか、特定の知り合いの「アメリカ人の誰か」でしょうか? 「アメリカ人は嫌いだけどあいつだけは特別だ」と言うようなアメリカ人の? それは「いつ」のアメリカでしょうか。今でしょうか、戦争をしているときでしょうか、建国当時のアメリカでしょうか?

 スティーブ・ロジャースは、アメリカで生まれたヒーローであり、アメリカの理想を背負う道を選んだヒーローでした。
 しかしアメリカの理想である彼が、つねに戦いを強いられる最大の敵は、アメリカの現実であり、しばしば、それを具現化した存在である、アメリカの政府や軍、官僚組織であったりするのです。
 スティーブの本質は「人々の理想であろうとする男」です。何も考えず、無媒介に己こそが理想なりだと考えるような、そんな傲慢な存在では決してありません。理想は理想でしかありえず、現実の存在には決して辿り着く事ができない。それはフィクションのキャラクターであるスティーブですら逃れられる道ではない。それでも、彼は、あるいは彼を作り出した人々は、何度も何度でも幻滅させられると判っていても、理想を追い求める事を止めはしない。

 理想を追い求める男として、アメリカに生まれたからこそ、彼は「キャプテン・アメリカ」を名乗る事になりました。キャップを生み出せる懐の深さこそがアメリカである、と言う気はしますが、それは大きく見れば偶然とも言えます。

 もしあなたが嫌うものがアメリカの傲慢であるのなら、己が謙虚である事を誇る人間であるのなら、あなたはこのキャプテン・アメリカを見なくてはいけません。
 なぜなら、「良く知りもしないものを、良く知りもしないままで、非難し、見下す」。それを人は傲慢と言うのですから。あなたの嫌いな、あなたの中にあるアメリカがしているのと、全く同じ事なのですから。

 アメリカン・コミックと言うもののあり方の源流として、もっともストレートな姿を現しているであろうキャプテン・アメリカ。
 多くの人に見て欲しいと思います。楽しんで欲しいと思います。考えなくてもいい。十分楽しい。でも、考えてもいい。
 そんな映画だと思いました。

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コメント

初日に仕事帰りに滑り込んで鑑賞しました。
幾つか、アイアンマンやマイティソーの伏線と言うか、接点を見いだして、楽しみました。
ただ、光線兵器を多数備えた要塞に、鉛弾ぶち込んで突破するシーンだけは幻滅(泣)
キャプテンアメリカの活躍が、影響しているでもなく、内外から挟み撃ちしたでもなく~
根性論で感動するのは、子供とスポーツ選手とアメリカ人だけか?
全身アザだらけになりながら、必死に開発したアイアンマンマーク2のトニースタークの優位性を一気に無効化する勇気と根性!

性格的にも、トニーとスティーブは真逆の存在なのかも?

投稿: 146 | 2011.10.17 18:10

 「なぜナチスの弾丸は当たらないのか」が解明されるには、戦後のガン=カタの完成を待たねばなりませんゴウランガ。
 冗談はともかく、まああのへんはAチーム状態ですからねー。大目に見て頂くしか。

 キャップとアイアンマンは確かにいろいろ正反対なんですよね。親友ではあるんですが、ほんとにお前ら仲いいのかって思う事もしばし(笑)。
 歯車がうまく噛み合ってる時は、リーダーと参謀で時折喧嘩しつつうまくいってるみたいなんですけど、ダメになるととことんまで行っちゃう。シビルウォーの時なんかはそれぞれ派閥率いて内戦しちゃってましたしね。

 映画だと、ロバート・ダウニーJrがビッグネーム過ぎて、他の俳優さんがみんな萎縮しちゃってるんじゃないか、って言う話をしてましたヨ。

投稿: sn@散財 | 2011.10.17 22:49

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