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2011.10.16

堺三保アメコミ塾東京出張版に行ってきました! おおむね前半だけレポート。(☆☆☆☆)

 というわけで、堺三保さんのアメコミトークイベントに行ってきました!
 レポートがなぜ前半だけなのかと言うと、後半はpomeraの電池が切れた上に、そのあと懇親会まで行って結構飲んだので、正確に思い出すのに混乱を来すからです。しょんぼり。
 と言うわけで、時間遡って以下pomeraから。

 かなり知らないところに迷い込んだ感じで、妙な緊張感が漂っているのですが。本日はこちら、新宿からちょっと北にずれたところ、大久保ワンビートに参りました。
 昼間にキャプテンアメリカの映画を見たところなんですけれども。今日は六時から、こちらで堺三保の出張アメコミ塾東京版が行われます。お題はもちろん、昨日公開されたばかりのキャプテン・アメリカについて。

 観客の皆さんはお話を伺っていると、主催の堺さんの知り合い率、と言うか業界関係者の方が多い感じなんでしょうかね。なんだか色々とクローズド感漂う会話が飛び交っております。

 まだ開演時間はちょっと先みたいですけども、出演陣の皆さんがすでにステージ上に。ステージの前には小プロの翻訳したアメコミの数々が。「シビルウォーはないんですか?」「それは弊社じゃありませんので」という質問が。小プロの方がいらっしゃってるみたいですね。あー、そうか、聞いちゃいけないことだったのか。
 壇上にある小プロ系の邦訳アメコミ、見てみるとヘルボーイ以外は全部持っていると言う事実が明らかに。しょぼーん。

 客席は二階席(出演者控え室)も兼ねてみたいなので、おおむね二十席弱くらいでしょうかねー。すでに一杯になりつつあります。
 出演者とステージの間には物販ステージ兼賞品置き場みたいなものが。ものすごくでかいキャプテンとウィンターソルジャーのフィギュアが置いてあります。あれプレゼントなんだろうか。
 お客さんが増えてきたからか、観客席が拡大されております。移動する人が出てきてちょっと整理。

「キャプテンアメリカの予告編を見た人ー」と、とりあえずステージ上から問い合わせ。これはまだ始まっていなくて世間話だそうです。ザボーカーはバルト9で大入りだったそうです。確かにすごい人出だった。平均年齢48歳くらいだったそうな。会場はザボーガーの話で引き続いて大盛り上がり。
 背景にプロジェクタから文字が。開始は18時20分と出ました。

 オープニングっぽい音楽が。テロップで何気なく「電人ザボーガー公開記念トーク」みたいな文字が流れましたけど、それ違う気がする。
 出演者と客席が対話する事によって進行するトークライブ、なのだそうですよ。なんだか想像のつかない雰囲気なんですが。20分押しでスタートです。
 堺さんから紹介。「大阪でやると九割知り合いなんですが、さすが東京だと七割です。映画の宣伝ということですが、翻訳した本の宣伝をしたいと思います」。
 中盤でクイズ大会をやるのだそうですよ。トーク陣は堺さんと、柳下毅一郎さんと添野知生さん。……なんだかすごくないですか。すごいとこ来てしまった。

 まず画面にはキャプテンアメリカ第一号の表紙が。その話題からスタートです。
 でも、お高いんでしょう? と言う話に、「最近は紙じゃなくて電子版の復刻版が結構出ている」とのこと。ヒトラーぶっとばしてますが、作中ではその話はないのだとか。出版社もまだこの頃はマーヴルじゃないそうです。でも作者は若い頃のジャック・カービーなので、これがのちのちの復活に響いてくると言う事に。

 アメコミファン以外の人にキャップの話をすると、アメリカ万歳みたいな話なんでしょ? みたいな話をされるので、その誤解をなんとかしたい。
 確かに登場当時はそういう話だったが、結構ほのぼのした、のらくろみたいな話が多いと。アメリカののらくろと。軍に志願するところが引っかかるのでは、と言う話も。
 貧弱な兄さんが変な科学者の実験に引き受けて超人兵士になった、と言うスタイルは今も昔と一緒。軍の広告塔になる、と言うところまで踏襲していると。
 その後、再現しようとする米軍が、人体実験魔みたいな扱いになって、そのたびキャップは苦悩したのだそう。ウルヴィーとかもそうですもんね。

 で、50年代に消えちゃったキャップを、70年代にスタンが復活させるって思いついて、今のキャップにつながったのだそうです。
 他社の昔のヒーローを復活させようとしたのはなぜ? と言う質問に、ジャック・カービーと組んでいたせいなのでは、と。
 アヴェンジャーズはなんで復讐者なのか? 最初ロキに騙されてやられたので、ロキにやりかえすってことで復讐者=アヴェンジャーズになったらしい。
 あっと、客席で対面に座られていたのは海法さんらしい。びっくり。
 JLAに対抗して結成して、4号でキャップがメンバーに加わったとのこと。リーダーになったのは年長者だからっていうことで。

 さて問題は、何人もいるキャップ問題について。戦中に行方不明になったって言う設定を作っちゃったけど、キャップは50年代まで実際居たので、偽物というか別人を用意して辻褄を合わせていた。
 アメコミの欠点は「なかったことにする」ことができない。あった設定はなんでも辻褄を合わせようとする…… と言うことで、襲名式ってことにしちゃった。
 詳しい事はウィンターソルジャーに書いてありますが、4代目キャップは薬の副作用で頭がスーパーになってしまった、とのこと。

「後付けのドラマはアメコミの面白味でもあるんだけど、大人として見ると、なにやってんだこいつらは」と。柳下さん。

 60年代以降のキャップは、戦意高揚のヒーローに、戦意高揚のヒーローの姿を問いなおさせる、と言う意義がある。たとえばベトナム戦争には行っておらず、むしろ戦争に巻き込まれていた人を助けているし、スパイディもベトナムでPTSDになるフラッシュを助ける話などをしていて、売上を上げている。
 キャップはアメリカの正義をずっと悩んでいるヒーローであって、半世紀以上悩んでいる、とっても暗い話。まじめだから、悩んでわき道にそれることが出来ない。暗い話だけど、そこが面白いと。

 もう一つスタン・リーが面白いのは、キャップを黒人のヒーローと組ませた事で。元々アフリカ人のブラックパンサーとも違う、アフリカ系アメリカ人のヒーローであるファルコンを登場させて、しかもキャップの相棒に据えた、との事。当時は公民権運動とかの時代。画期的な事です。

 キャプテンは政治的に振り回される事が多い、と言う話題に。汚職を行った上院議員と戦って、キャップの衣装を捨ててノーマッドになったり、ザ・キャプテンになったり。さらにアメリカ政府の任命した新キャプテンアメリカと殴りあったりする羽目になる(のちのUSエージェントであったという>本当)。
 「キャプテンアメリカを大統領候補に!」の話で、群衆の前で、僕はイヤだって演説するキャップがスライドに。
 ウィンターソルジャーのライター、エド・ブルベイカー曰く、キャップのファンはめんどくさい。右翼のファンも左翼のファンも好きなことを言い出すのでと。
 とても政治的なキャラクターで、DCだとあり得ない。政治的なキャラクターで暗い話なんだけど、基本的にリーフなので、最終的にはレッドスカルと殴りあうことになる。「うまく行かなかった時の平成ライダーっぽい」 おおーう。

 なぜキャップは愛されているのか? →そんなに人気はないのよ。ギャー。
 「ずいぶん冷や飯食ったんですよ」「数字持ってないんですよ」 やっぱり人気はスパイダーマンとX-MENに集中している。けど、アイコンとしての知名度は非常に高い。
 アメコミファンにとってはアイコンとしての力が強い反面、日本人などほかの国民にとっては退いちゃう原因になっているのだと思うと。

「AVENGERS ASSEMBLE!って掛け声かける担当なんですよね。それで、アヴェンジャーズ集まれ!」って言ったけど評価してくれなかった。「それじゃ金八先生ですよ」「頭韻踏んだのに!」 そして駄洒落翻訳で引き合いに出される、伝説の「びっクリプトン」。

 冒険アクションな視点で進んだ90年代の話題から、2001年の9.11、「ニューディール」ラインから、ウィンターソルジャー編で原点回帰に。
 キャプテンは007のように、政治的な話と活劇の話の間をふらふらと揺れているのではないか。
 というか、最近だとマーヴルは迷走している話が多いのではないかと。「シビルウォー」「ハウス・オブ・M」みたいな話で結構まずい感じの流れだけど、最近持ち直してきている。

 と言うわけで、シビルウォーの話に。
 ここで、政府側じゃない方に立つのがキャプテンアメリカの彼たる所以。なんだけど、アイアンマン映画だけ見ていると、全然体制派っぽくないよなあとか。でも企業人であるアイアンマンからすれば、確かにそうなる。
 キャップvsアイアンマンは、親友同士が政治的な信条の違いで対立することになってしまう、って言う、実にアメリカな話だそう。

 キャプテンアメリカを見ると、みんな政府の犬だ、って思うけどそうじゃない。キャプテンアメリカは政府の犬として生まれてきて、そんな自分に悩む話なんだ、と。

 アメリカには右翼といっても二種類あって、大政翼賛的なな右翼と、個人の力で政府と対決する右翼の二種類がある。そんなわけで、キャップは右翼からも左翼からも好かれている。
「じゃあキャップ人気あるじゃん」「いやコミックス売れないんで」

 絵がついてこないとだめなんですよ。と。アメコミのヒーローにはみんなそんなところがあって、それを極端に体現しているのがキャプテンアメリカなんだと。
 キャプテンアメリカはかわいそうなんだと。他のヒーロー達には、先生とか社長とか表の顔がある。ところが、キャップは職業がヒーローで、私生活がない。
 キャップはアメリカの象徴なんじゃ。って、そっちはスーパーマンだそうです。

「じゃあどうやって食べてるんですか」「食わせてもらってるんです」 食客みたいな、と例えられて、急にキャップが武侠っぽく。ファンタスティック・フォーも正体公開してますけど、あの人達は表の顔:発明家ですからね。

 スーパーソルジャー計画についての質問。ハルクやウルヴァリンは関係あるの? と。ハルクは「新型ばくだん」のせいで緑色のあんなものになったので、原作では関係ない、と(映画では関係ある事になっている)。
 ウルヴァリンは普通に関係があります。ウェポンX(テン)ですね、「米軍に人体実験された」って言う設定の持っているキャラクターは、みんなスーパーソルジャー計画の被害者だった、みたいな話に。
 DCにもカドマス計画みたいな超人計画があるけれども、こういったものは60年代以降のアメリカ文化を反映している。政府はどっかで悪いことをしている、と言う確信みたいなものが、フィクションに出ているんだ、と。

 アヴェンジャーズに加えた時は、スタン・リーはキャップのキャラクターをそこまで考えていなかったが、絵的に映え方が全然違うのでは。デザインの力、アイコンの力はすばらしい。キャプテンアメリカは、誰が描いてもわかる。イヤだって言う意見も分かるけども、訴求力はすごい。
 絵の力っていうのはやっぱりすごい。アイアンマンが来るようになったのは、ここ20年くらいでみんなCG使うようになって、格段にメカとかの作画が良くなったから。
 ところで絵の話から、ウィンターソルジャーの、海パン一丁で東部戦線を練り歩いているのが実はおかしいんだけど、つっこまれるまで分からなかったなど。

 コスチューム革命の話で、画面には実に微妙なキャプテンアメリカが。出たところで、休憩時間となりました。

 場所が狭いせいか、皆さん移動で大混乱しております。ここで休憩時間切り上げて、クイズ大会に。一応キャプテンに絡んだクイズなんですが、あんまりアメコミっぽくないかも知れないそうです。どうなんだ。クイズのテストは髭とTシャツの話に。「映画はみんな見てるんですか?」「お二人は見ています」「堺さんは」「仕事と洗濯してました」なんという。アヴェンジャーズは公開が日米三ヶ月くらいずれるそうですよ。

 というわけで、キャプテン・クイズー。
 フィギュア三点とパンフその他が賞品。って、第一問がいきなり小林昭二の星座とはって。僕はもちろんここで消えました。南無。
 第二問は世界の料理ショー。正解はニューオーリンズ風じゃなくてニューヨーク風でした! ガットマイオー!
 なぜか正解者数が前よりも増えていると言う謎の事態が発生しておりますが、第三問。ダムダムデューガン問題。
ここでトップ3確定。残りの人はもう一問。

 キャップはウルヴァリンの爪に耐えられるか問題。正解は「耐えられる」。えー、ヴィブラニウムってアダマンチウムより丈夫なの!? あ、ヴィブラニウムとアダマンチウムの合金はもっと丈夫なのか……。
 キャプテンカナックはマーヴルと関係ない、って誰ですかその人。

 ……だいたいこのへんで、pomeraのバッテリが切れました。ゴウランガ。
 後半はマーヴルスタジオの映画の話を中心に。十数年前のアメコミ映画の時代はコスチューム革命にあった。ティム・バートンのバットマンでコスチューム革命が起きたこと(画面には90年代映画のキャプテンアメリカが)

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 参考資料:なぜか家にあった90年代キャプテンアメリカ(のVHSビデオ)。

 今のマーヴルの映画が来ているのは、ひとえにロバート・ダウニーJrにかかっている、と言う事に。
 アヴェンジャーズの予告編から、話は転じてDCコミックスの映画の話題に。DCのヒーローのほうがやりやすいはずなのに迷走している、どうにかならないものか…… と言うような話題で、たしか終わりになった気がします。

 そのあとは懇親会に。最初はどうしようか迷っていたのですが、海法さんと話させていただいたことから参加させて貰う事に。
 そして参加してよかった! すごい楽しかった! と言う結論に。なんだか楽しすぎて皆さんのお名前とか聞くのをすっかり忘れておりましたが、思う存分、昔の映画の話だとか最近の動向の話だとか、DCリブートの話とかロブ・ライフェルドの話とか、ヴァーティゴがなくなっちゃった話とか。アダム・ウォーレンのダーティペアが日本語アメコミ枠で出ませんかと言う話から(アダム・ウォーレンなら「ライブワイヤーズ」を、って言う話をして、歴戦の猛者達にきょとんとされて恥ずかしい思いをしたり)、MARVEL Xの思い出話。マーヴルゾンビーズ出版の噂に皆さんが驚喜し、小プロの方の復刊希望アンケートにサンダーボルツ(第一期)を出して、キューブリックかミニフィグでアメコミキャラクターをいっぱい作られている方の作品リストを見せて貰ってうおーすげーと盛り上がり。その間、画面を見るとキャプテンアメリカ(90年代)が出ていたりすると言う、落ち着いて考えなくてもマッポー的光景でありました。なんというブッダシット。

 最後は新宿駅のほうまで一緒になった方と、ヤングアヴェンジャーズの話をしながらすっかり盛り上がって帰って参りました。どなたか存じませんが、おしゃれな帽子の方、その節はありがとうございました。

 そんな感じで、非常に楽しませていただきましたアメコミイベントでありました。濃厚にもほどがある。
 また開催されたら行きたいですなあ……。アメコミナイトも(DC大辞典あわせで)やってくれないかなあ…… と、そんな風に思った一日でした。有り難うございました、運営された皆様、お疲れ様でした。

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コメント

 忘れてましたが、トークの最後は日米ヒーローの「正義の追求」のあり方の違いについて、大変熱いトークが繰り広げられてたのでした。こんな大事なテーマがどうして記憶から抜けるかねえ……。

 トークを踏まえての私論を書きかけたんですが、長くなりそうだったので、別エントリにしたいと思います。結構面白くなってきた。

投稿: sn@散財 | 2011.10.16 14:30

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