魔女と官僚凍土を彷徨う、靴ずれ戦線第一巻。(☆☆☆)
貧すれば鈍するとは良く言ったもので、人間追い詰められるといろんなものに頼るもの。
1941年、不可侵条約を破り電撃的な侵攻を果たしたナチス・ドイツの前に、てんやわんやでおおわらわのソヴィエト政府。
なにがどうしてそうなったのか、ロシアの魔女バーバ・ヤガに従軍を求める羽目になったのは、貧乏籤にもほどがある目に遭うナージャ少尉。いろいろあって彼女とともに従軍することになったのは、大阪弁の若き弟子魔女ワーシェンカ。
空に陸に兵器の数々が飛び交い、雪が全てを閉ざす東部宣戦を。死霊の籠もる塹壕に迷い、独逸の魔女と挿話も場所も前後しながら、あっちを彷徨い、こっちを転戦する、ナージャとワーシェンカの珍道中。憧れのベルリンも終戦の日も、物語の終わるはるかな彼方。魔女と官僚の運命やいかに!
というわけで、……あれ? 考えてみると、速水螺旋人さん単独の本を買うのって初めてかも。靴ずれ戦線の一巻を買ってきました。
ナチスドイツ相手に戦い続けるソ連軍に、助っ人として加わった魔女ワージェンカと、ドイツ軍やナチスの魔女、さまざまな土着の精霊との戦いというか、迷惑のかけあいというか。なんなんでしょうねこれは。
心地良い雑然とした雰囲気に、戦場の中での(戦場とは思えない、では決してない)日常といった雰囲気を描きながら、ときに屍が累々と転がり、時に味方が(敵ではなく)暴力を振りまく。それらすべてが、殺伐としているでもなく、ほのぼのとしているでもなく。すがすがしいまでにドライなユーモアでまとめられた、いやなんか違うな。ええと。
うまく説明できない、しかし忘れがたい。魅力にあふれているのです。
なんとも不思議な。そして手触りのいい雰囲気を感じる。そんな作品群であります。何を今更感がありますけど、一度読んで好きになった人はたまらなくはまりこむタイプですよなあ。ものすごく遅ればせながら、深く納得しました。
ところで途中途中にあるメカコラム、「螺子の囁き」はまさに圧巻。参ったかさあどうだとまでの密度で迫ってきます。
……こちらはこれから、きちんと読みますね。
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