【アメコミイベントレポート】アメコミnight!スペシャルレポート・後編(☆☆☆)
さて、休憩のあとは第二部となります。
小プロの担当者さんから、石川裕人さんの略歴の紹介が。なんだか結婚式みたいなことになってませんか。あわせて小プロのtwitterアカウントの紹介が。
石川さんの生い立ちからはじまって、紹介などされますよ。と言うことで、いしかわさんと、同僚の泉さんが登壇。今年でアメコミの仕事を始めて20年にされるとのこと。スゴイ。
まずはDCキャラクター大辞典の紹介から、今後の出版予定から。もうすぐDCレガシーズ、と言うのが出るのだとか。ひとりの民間人の視点から、DCコミックスの歴史上の大事件を語っていく、と言うことで、見たところマーヴルズみたいな雰囲気なのだそうです。上下分冊になる様子。
そのあと「フラッシュなんとか」にゆければ、と言うこと。おおお。おおおおお。
画面にはそして、なぜか建物が。……生まれた病院の画像だそうです。ほんとに生い立ちから始まったー!? ……あ、お生まれがNYなのだそうです。へえー!
アメコミに入ったきっかけは、80年くらいころのこと。当時「アメコミが好きかどうかは遺伝子に入っている」と言う説があったのだそうです。なんと言うロンブローゾ。
ともあれ、きっかけはスターウォーズのコミック。当時受験生だったのだそうですけど、父親に買ってきたコミックを見せられ、「つづきがみたかったら勉強しろ」と言われて。その後、友人が買ってきたのがニール・アダムスの「ジャスティスソサエティ」。もやもやしながら受験勉強していたら、月刊スーパーマンが創刊されてしまい、さらに父親が買ってきた60色のマーカーがとどめになり。それはそれとして、高校には合格(ここでまた高校の写真が)。
その後、大学時代にアメコミのファンクラブ(CLA)に加わり、洋書屋で古本含めもろもろ入手されてたり、洋書の取り次ぎから入手されてたりしていたのだとか。神保町のブックブラザーとかだそうです。20数年前にフィギュアも出てきた頃合い。20年前と言うと、ちょうど最初のバートン版バットマンの映画の頃ですね。もうそんなになるのか……。
話題は、なぜかきんきらのバットマンのフィギュアの話。これ、対酸装備のバットマンらしいのですが、もちろん映画にはそんな派手なものは出てきません。しかしフィギュアは、商品として存在する。つまりは、こういう「映画に出ないフィギュアを出してもいい」と言うことがエポックだった、と言うはなしから、トイビズのマーヴルフィギュアの話に。写真を見ながら、「今にして思うと泥人形のような」。厳しいー。
トイビズにマニアの人が入って、フィギュアのラインナップや出来はどんどん充実していったのだとか。
その後、コミックを描き、一冊だけ書いたその本が、いろいろあって日本とアメリカの両方で出版されたりして。そしてその当時のアメリカ側の担当の人が、のちにマンガ風マーブルコミックスレーベル、マーヴルマンガを立ち上げたのだそうです。へえー!
当時、マーヴルのテリー・スチュアートが、コミックからの派生ビジネスの囲い込みを図っており、その一貫として、日本にオフィスを構えることになった。で、いろいろとあってアメコミに詳しい人と言う求人があり、石川さんは現在務められているウィーヴに入社されたのだそうです。へえーへえー!
当時会社はタートルズの版権の買い付けをされていて、タカラがスポンサーがついて大当たりしていたのだそうです。ダイナミックプロさんに描いてもらったマンガも百万部レベルの大ヒットになったのだそう。あったあったありました。よく覚えてます。
コナミのゲームも当たったので、次はなにか、で計っていったのがX-MENだったのだそうです。石川さんはこのへんの時期に入社されたのだそう。
オリジナルコミックとゲームはすでにあり、当時ひとつだけ抜けていたのが「翻訳コミック」の分野。誰も手を出したがらなかったこの分野について、小プロが引き受けて出版したのが、あの日本版X-MENだったのだそうです。
本当は小学館プロダクションは出版はしない会社だったそうなんですが、小学館がやらない出版はやってもいい、と言うことで、日本語版X-MENは世に出たのだそう。これは相当部数が出たのだそうです。アニメとの相乗効果も相当あったのではないか、とのことで、石川さんはこの翻訳版の翻訳監修から入ることになりました。
X-MENも好評だったので、次はスパイダーマンをやることになり、円谷さんがステージショウをやる、と言う話があったのだとか。ショーのためのスーツもできてきていて、出来のいいスーツだったそうなんですが、これは結局日の目を見なかったのだとか。「どこかの倉庫にあります」との由。
そしてゲームの方は、3DOとかワンダースワンとかに行って、そのー、大変だったですね! と。いい笑顔で。
しかし丁度その頃、マーヴルが買収したカード会社が、大リーグのストの損失をかぶってしまいました。カード会社の売り上げは、やっぱり一番大事なのは大リーグカード。そんなわけで予期せぬとばっちりをかぶって、結局、日本オフィスは閉じてしまったのだとか。
丁度その頃、時はまさにイメージブーム。と言うわけで、メディアワークスからスポーンが出版されることに。これは大ブームとなりました。スポーンの1号は120、30万は売ったのだそうですよ。日本で一番売れたアメコミはやはりスポーンでは、と。
その状況を利用する事を考えた石川さん。スポーンの中でも、アラン・ムーア原作のものを翻訳に引っ張ってきて、徐々に徐々にアラン・ムーアが出版できるムードに周囲を誘導していき、そしてとうとう「ウォッチメン」邦訳にこぎつけることに。
しかし、ここいらでアメコミもひと段落、ワイルドキャッツやヘルボーイのあたりでお休みっぽい雰囲気に。そういえば若干冬の時代っぽかったのですが、この間、いろいろと人の移動や伏流があり。一時期、ソニーではパワーパフガールズを押しにかかったものの、ダメになっちゃったのだそうです。殺伐。
しかしこのときの編集長さんがJIVEに移動され、そこでDCvsマーヴルなどの、数冊を経て仕掛けたのが、「キリングジョーク」。……なんかなりゆきで出版したっぽいDCvsマーブルですけど、僕は大好きでしたよ……。
このあと、しばらくJIVEからはコンスタントに出版が続きます。リーグ・オブ・エクストラオーディナリージェントルメン、バットマン:ハッシュなんかが出た後、JIVEから出たのが「トランスフォーマー」シリーズ。
「アメコミは2年くらいすると現実に気づくんですね。返品と言う形でですけど」。厳しい名言出ました。
ここいらで、アルティメットシリーズを邦訳していたアメコミ新潮もちょろっとだけ紹介が。石川さん、こっちにはタッチされていなかったのだそうです。
アメコミ会社から版権をとるのが難しいのは、経営陣がころころ変わるので、そのたびに方針が変わるからなんだそうです。ふむー。
というわけで、ウィーヴさんはアニメ方向に力を入れることに。まずはビーストウォーズの話をとりつけてを放送。でもこれは半年で終わるし、そのあとどうするんだ、と言うところで、「じゃあ日本で制作すればいいんじゃ」って提案したところ、日本制作に切り替えたビーストウォーズIIが世に出ました。これはかなり当たりましたが、劇場版を作る時は、スポンサーさんの意見があって大変だったのだそうです。
当時はウィーヴは翻訳監修と言うかかわりだったところから、その後、自力でアニメを作れる底力をつけ、ウェブダイバーと言うアニメを製作することに。これは知りませんでした。これは知りませんでしたが、勇者っぽいデザイン。
続けて当時、タカラののE-カラが当たったところから、ぴちぴちピッチを製作することに。この前後もろもろ続けて、東京ミュウミュウとぴちぴちピッチ、マシュマロ通信にマイメロディ、と続いたのだそうです。へえーへえーへえー!
続いての作品、ダイガンダーの製作中に、ハズブロとタカラが提携。そこで「マイクロン伝説」を作ることに。日本製のアニメであるカーロボットがアメリカで受けたのを受けて、そこで日本製作のアニメをアメリカに持ってくる、と言うことになったのだそうです。
そこで石川さん、G1からの流れを汲む、正当派リバースの続きを作ろうと思ったものの、「いや今の子供覚えてないから」とつっこみを受けて、リスタートになったのだそう。
アメリカ側は口出しあんまりしないから、と言うものの、そこはスポンサーのタカラさんとのせめぎ合いを繰り広げつつ、マイクロン伝説を作成。続編のスーパーリンクまで決定したものの、その後は(まだ放送前だったのですが)別会社作成になったのだそう。そのへんになると向こうの担当の人の意見がかなり押しで厳しかったのだそうです。
その別番組、ギャラクシーフォースの時は石川さんはなんかいろいろあって関わらず、そのかわりに行かれてたのが、ステージ上にいる泉さんだったのだそうです。
スポンサーさんの無茶ぶりは、それはそれは大変だったらしいです。そうこうしているうちにトランスフォーマーは実写映画化されまして。
なんでもジャパンプレミアの時、石川さんがトイレに行ったら、マイケル・ベイと隣あわせになったのだそうです。へえーがどんどん増えていく!
その後はビューティフルジョーのアニメ化。そこで脚本を一本書かれたそうなんですが、昔の同人誌のキャラクターをするっと出されたのだそう。いろいろあって放送されなかったそうなんですが。
そうこうしているうちに、ヴィレッジブックスの名前がここで登場。ソニーマガジンズから出版部門を買収し設立した子会社ヴィレッジブックスから、いろいろあってアメコミを出版することになったのだそうです。
というわけで、ヴィレッジブックスの第一弾として、「ロング・ハロウィーン」が出版。以後、こつこつと出版を重ねて現在に至る、というわけですね。
もっとも仕事としてはこちらがメイン、と言うわけではなく、ディアゴスティーニのシリーズなどで、鬼平や東宝特撮映画などを担当されているのだそう。
ディアゴスティーニのような、パートワークの出版から学んだことは多くあり、多く売るためには多く予算をかけなくてはいけない、それを回収する仕組みをつけなくてはいけない、と思うと。固いファンに堅く売る仕組みも大事である。形態が違うと売り方も違うんだな、と言うことを学んだ、とのことです。
スヌーピーの雑誌に挑戦したことがあり、それはうまくいかなったそうですが、シュルツさんの書斎を見学したり、お墓参りに行ったりしたそうですよ。
ここからは、お題はがらりと変わって。「アメコミと日本のマンガの違い」と言う題目に。
まず出版社のサイズが全く違う。アメコミの出版社はアメコミだけを出版している。日本の出版社は総合出版社であって、たとえば集英社がワンピースにかけられるリソースは全く違う。
とにかく、アメリカは広すぎる。たとえば、通勤の途中で、ふらっと寄って買う、と言うことは全くない…… と言うか、本屋に寄る、と言う生活習慣がそもそもない。基本的に通販であり、ここは大きく根本的に違う。
日本のマンガは感情移入を大事にするが、アメリカのドラマは第三者的な視点を大事とする。アメコミで泣いたことは二回しかない、と言う石川さん、うち一回は「スーパーマン・ラストストーリー」の、スーパーガールがちょっと出てくるシーンなのだそうです。もうひとつが気になる……。
映画でもそうで、普段の感情表現はアメリカ人のほうがオーバーなのに、ことフィクションだとクールなのはどうしてなのかと。
ヒーローの位置付け、と言うものも、受け入れにくいものがあるのではないか。アメリカ人にとってヒーローは、ウルトラマンのような上の存在、超越者ではなく、同じような存在である。スーパーマンIIでスーパーマンが倒された敵に一般人が向かっていく事があるが、そのへんが受け入れがたいのではないか(スパイダーマンの映画でもそういうシーンありましたよね)。
これは理由としては、宗教に起因しているのかもしれないし、日本のヒーローが仮面を被っていることも、仮面を被った存在=人間以外のもの、になる、と言うあり方のヒーローの方が、日本では受け入れられたのではないか。
絵の受け入れられ方も日本とアメリカでは違う。アメリカでは絵はリアルで、まじめな話をするのなら、絵もまじめでないといけない、と言う観念がある。スタン・リーがHOTELをみて、マンガみたいな絵でまじめな話をするのか、と疑問に思われた。アメリカのほうが許容範囲が狭いのではないか。
デォフォルメしたスパイダーマンを見せたら、「この年のころはまだスパイダーマンじゃない」と言われたとか。
この違いは、漢字と英語、表意文字と表音文字の違いから来ているのではないか。とのことでした。言語から来るイメージ展開の違いではないか、とのこと。hmmmmmm、ですね。そしてそんな話をしている最中に、こっそりすぴさんと小プロの方が壇上に。
そんな中で日本でもアメコミが受け入れられたのは、ジム・リーの影響が大きかったのではないか。その絵柄と、それにストリートファイターIIのブームがあり、この相乗効果があったのではないか、とのことでした。
ここでいったん話がカットされ、アンケートからの回答に。アンケートに「石川さんに聞いてみたいこと」の項目があったのです。
質問はまず、DCのリブートから。「商売なのかな、と……」と、石川さん。
ぶっちゃけ一番好きなのは? と、「スーパーマンですね。おもしろくない(答え)ですけど」
マーヴルとDCで最強は誰か? 「その雑誌の主人公が最強なのではないか。キャラクターの魅力は強い弱いではないのではないか」
石川さんみたいにアメコミを仕事にしたいんですが、ごはんは食べていけるでしょうか? と言う質問。
「自分は社員なので食べていけるんですが…… 翻訳者はいつも募集しています。ボコボコに赤入れますので、それに耐えられる精神力のある方を」
今後の出版予定、マーヴルはアベンジャーズを。映画あわせでスパイダーマンもやりたい。売り方を変えてみたいのもある。古いマンガをうまいこと出せないかな、と思っている。
マーヴルクロスを復活させてほしいんですけど、と言う質問に。やっぱり権利関係が難しくていろいろ大変みたいです。
スラングを訳するときに気をつけていることは? 読みやすくて分かりやすくて、「それらしい」と言うところを、うまくできれば、と思っている。たまには冒険することもある。ググレカスとか。
日本でアメコミを訳してくれた伝道者として、石川さんに拍手をお願いします、と壇上のすぴさんでした。
喝采喝采、で、いったん〆となり、ここからプレゼントタイムとなります。
浮浪者フィギュアて。あー、やっぱりキャプテンブーメランでした。今度はキャットマンです。ヴィランチーム充実。
というわけで、プレゼントタイムはすべて終了。今日は不発でした。南無!
最後は石川さんのご挨拶から。「小プロさんもヴィレッジブックスもよろしくお願いします。寝ずにがんばりますので」とのこと。
ここで石川さんへの拍手とともに、イベント終了となりました!
……いやー、実に色々と濃い、楽しいイベントでありました。
翻訳者としての活躍ももちろんですが、アメコミが出版できる状況、状態を作り出すために、様々な尽力をされていたんだなーと。暢気に本屋の書架を眺めている向こうには、いろいろな事情があったんだなーと思った次第です。
ヴィレッジブックスとウィーヴの関係なども、まったくもって知識の埒外だったことで。トランスフォーマーのアニメ化の話とこんなふうに関わりがあったのか、とか、まさかここでテレビ東京系のアニメの名前がもりもり聞けるとは思わなかった、とか。
まさしく予想外の話をいろいろ伺えた、楽しいイベントでありました。最後に石川さんにもちょっとだけご挨拶させていただけまして。満足でありましたー。
今後、こういうイベントが定期的に行われると嬉しいな、と思いつつ。歌舞伎町を出た昨今でありました。
次回も是非参加したいと思います-。
イベントのあとは、ひさびさにアボットチョイスさんに寄ってきました。三ヶ月ぶりくらいだったかも。
北狐レッドを頂きました。おいしゅうございました。次回もまたこの寄り道コースにしたいですね。ということで、おわりでした。
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