ノブナガン、信長銃を持つ女(☆☆☆☆)
人知れず、彼等は海に棲んでいた。遙か宇宙から降り注ぎ、生命38億年の歴史を凄まじいスピードで駆け上る、謎の生物『進化侵略体』。生態系を簒奪すべく、とうとう彼等は陸地へと、台北市へと上陸を果たしてしまう。
だが、人類もまた対抗する術を整えていた。超国家機関DOGOO、彼等は擁する戦士達、その名はE遺伝子ホルダー。歴史に名を刻んだ傑物達の名と遺伝子を受け継ぎ、超武器AUウェポンを操る二十四人の守護者達。
戦場と化した台北市に、「ニュートン」が、「ガンジー」が、そして「切り裂きジャック」が降臨する。だが敵の力は彼等の予想をも超えていた。窮地に陥る「切り裂きジャック」の前に、予期せぬ援軍、二十五人目のE遺伝子が現れる。受け継ぐ遺伝子は織田信長、手にする武器は巨大な銃。
人類を、友達を守るため、轟き吼える信長銃! ノブナガン三段撃ちを受けてみよ!
というわけで、かいぶつだいすき久正人先生の新作は、まさかの怪獣vs偉人の超常バトルもの。この色々かなぐりすてた感じのストレートさが、たまらなく魅力な作品です。
なにしろ主人公の所属する秘密機関の名前がDOGOO(ちなみにボスは遮光器土偶)、偉人の転生者がE遺伝子(イー・ジーン)ホルダー、そして使う武器が英雄ウェポンって、もういいよね。いいですよね。と言うくらいに直球ドストレート。
さらに海から侵略する謎の怪物達、「進化侵略体」の、無言で大群で押し寄せる、有無を言わせない雰囲気はまさしく怪獣そのもの。彼等が、それでも様々な予期せぬ手口で押し寄せてくるさまは非常に圧倒的。超速度での進化、と言うテーマのままに、古生物の特徴をそれぞれに遺す敵達の姿は、怪物ラブが横溢しています。
そしてこの作品でとても変化球と言うか魔球なのか、敵に相対するE遺伝子保持者達のラインナップ。なんていうか、こう。この手の作品で必ず出て来る人達を、意地でも出してやるもんか、と言うようなズレっぷりが、非常にたまりません。
なにしろ、主人公が信長なのはいいとして、二人目でいきなり切り裂きジャック。あれ、偉人って言ったよねさっき。というか実在の人物カテゴリなの。そしてあとからあとから出て来る、およそあんまり、宇宙人の侵略と戦いそうもない偉人の数々。
ガンジー(バリヤー使い)でアイザック・ニュートン(重力使い)ときて、まさかのベーブ・ルースですよ。どうやって戦うのかと思ったら、滅茶苦茶かっこよかった。どういうふうに思いつくんでしょうほんと。
直球勝負なのは、主人公の人柄もまたしかり。そしてそれがまた大層魅力的でもあります。
信長の転生者、小椋しおは、ミリタリーマニアのちょっと浮いちゃってる女子高生。自分がズレていると言うことに、どうにもならない自覚を持っていて、自分を「並以下のガキ」と評する彼女が。突然戦う事になってしまい。恐怖し戸惑いつつも、戦う意志を自力で固めて立ち上がる。
考えてみれば、転生ものと言うのは主人公も周囲の人間も巻き込まれ、否応無しに戦う事になるものですが。そこに甘えず、泣き言に浸るでもなく。自分の力で戦う事を堂々と宣言する。そういう意味でも、あえてそれでもストレートであることに拘った物語なのだと思います。
まだまだ味方のE遺伝子保持者も登場しきっていない、これからが楽しみな作品。続刊の刊行が楽しみであります。
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