シノビガミ龍:ワールド・ウォー・ニンジャ!(☆☆☆)
そのシステマティックな構造が非常にユニークな、対人戦強化型の忍者TRPG・シノビガミ。
前作「シノビガミ怪」から始まった退魔編、その続編に当たる「シノビガミ龍」が登場です。
「怪」の戦いを生き延び、コンビを組んで魔物との戦いに明け暮れている鴉とハサミのもとに舞い込む依頼。
目的地はロンドン、標的は抜け忍・牙峰。吸血鬼にして忍者と言うこの怪物と戦うため、MI6の諜報員BBB、かつての仲間、かなりあにうり二つの少女・夜鳴鶯。そしてさらには謎また謎の古代ローマ忍者、ジェネラル・カイザー・ローマがこの戦列に加わる。
吸血鬼の野望が渦巻く戦場となったロンドンに、カイザーの雄叫びがこだまする。空を走るローマンモービル、宙を舞うローマンシールド! 来てくれ、見てくれ、そして勝て! ジェネラル・カイザーここにあり!
そんなわけで、すっかり毒気にあてられてウソ解説をしてしまいましたが。螺旋人さんのBBBさんもたいがいなキャラだと思いました。美少年をはべらせる大富豪のMI6メンバーでダブルオー要員でしかも忍者て。
サイコロフィクションつながりで、一部「ブラッド・クルセイド」の設定ともリンクしていると言う、なかなか豪華な構成。シノビガミで外国が舞台、と言うだけでも中々にわくわくしますが、正調シノビガミとは若干別方向に進化しているようで、これはこれで興味深いと思います。
嬉しいのはルールセクションで、「怪」ではちょっとさびしかった忍法の種類が一気に増加。「弐」で登場した下位流派の忍法も整理統合されて掲載されており、さらに下位流派そのものの種類も、退魔編の設定に合わせてなのか、かなりの数が追加されています。
六大流派に四つの下位流派があり、下位流派が総計二十四個。「弐」では三つずつだったので、勘定の上では一個ずつ増えています。ただし、無くなっている流派(ハグレモノのNo.9など)もあるので、新設定的にはそれだけ増えている感じ。
それぞれの紹介には、主要NPCの紹介や、その下位流派の存在そのものがシナリオフックになりそうな設定もけっこうあり、またメインの流派の説明も、これまで説明不足気味だった流派間の対立の理由について補足されているなど、なかなか読み応えのあるものになっています。
肝心のルール、と言うか忍法はざらっと読んだだけなんですが、これまで絶対的だった奥義の内容に干渉できる忍法が出てきた事で、「怪」からの傾向である、奥義から忍法への比重強化の方向を保持している、と思います。
それでも、これまでは奥義破りの強化などがメインでしたが、忍法そのものの内容が、例えば、制限付きで絶対防御を突破しうる性能を持った攻撃忍法なども登場してきており、奥義以外のオプションの比重を持ちつつ、戦う恰好になってきそうです。
……そういえば、怪では協力もの的なテーマを前面に押し出していた気がしますが、龍ではそれほどそこを強く押していない気はしますね。そういう意味でも、バランスを取ってきているのかも知れません。
世界観的にもルール的にも大きな広がりを提示したシノビガミ龍。まだ(怪も)プレイしたことはありませんが、二冊合わせてバランスが取れてくるのではないか、と言う気はします。
いろいろ、ああもあろうこうもあろう、とPCを作りたくなるのは、いいゲームであると言う証左。これもちょっと、楽しみにしたいですねー。
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