五大湖フルバースト、あるいは横綱と言う名の孤独の果て(☆☆☆☆)
相撲がアメリカの国技、デトロイト・スモー・ガーデン、だいたいが四股名が五大湖、そもそもフルバーストってなんだよ、と、あらすじを語るとネタとしか思えないこの漫画なのですが。読んでみると、非常にシンプルで力強い、漫画の源に立ち戻るような筋運びであることを、力強く感じる漫画でありました。
全米相撲の頂点に立った最強の男、技の横綱・五大湖。二百連勝を成し遂げた無敵の存在、多彩な技を操る事から、技の横綱と呼ばれた彼は。ある理由から、機械の体に生まれ変わり、全米相撲に引導を渡す鋼の悪魔と化してしまいます。
最悪の敵となった最強の男に対し、伝説の横綱が立ち向かう、と言う筋運びなのですが、この作品の魅力は、登場する人物・場所が、非常に限定されている、というところでしょう。
場所はほぼ土俵の上限定。そして登場する人物達も、土俵上で相対する二人、五大湖と横綱を覗けば、相撲協会理事長、五大湖の息子クリス。それに一件の糸を引く科学者グラマラスと、非常に限定されています。
土俵と言う名の密室。そしてその上で展開する、肉体と機械のぶつかりあい。なにかが狂っているかのような絵の力強さは、肉体の力を、漲る緊張を誇張的なまでに称えた馬力に満ちた力強いもの。
それらの上に載っている、物語の主題は-- 横綱と言う名の孤独。最強のプライドと、最強のプレッシャーを受け、人生を狂わせていった、ひとりの男の孤独の物語なのです。
下巻の巻末には、前日譚となるのでしょうか、三部作の第一部「両国リバイアサン」も収録されており、こちらも強くお勧めする次第です。
強さとはなんなのか。力とはなんなのか。報われることもなく、癒されることもない、そんな優しさの物語。短いですが、思うところが多くありました。
この相撲三部作、いまのところ二作なのですが。この「五大湖フルバースト」の売れ行き次第で、第三部の刊行が左右される由。
これほどまでに野趣の力と優しさの両方に満ちあふれた物語、それも最後が「心」の物語だと聞けば、読みたくなるなと言うのが無理と言うもの。
皆さんにも是非、ご一読願いたい次第です。度肝が空まで飛んでいきます。ぜひに!
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