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2012.05.22

走れヒーロー、誰よりも早く:DC邦訳フラッシュポイント(☆☆☆☆)

フラッシュポイント (DC COMICS)

 史上最速の男ザ・フラッシュ、速度の根源スピードフォースの力を宿し、光さえ稲妻さえも追いつけない男。
 その名を受け継いできた多くの戦士、ジェイ・ガーリック、ウォーリー・ウェスト。そしてバリー・アレン。

 しかしバリーは、あるときふと気付く。自分がフラッシュではなくなっていることに。世界からフラッシュがいなくなっていることに。見渡せばすべてが変わっていた。スーパーマンはいなかった。サイボーグがヒーロー達の旗手の座を務めていた。アビン・サーは不慮の死を遂げる事なく地球を含む広大な宇宙を守護し、ハル・ジョーダンは危険すれすれのテストパイロットの地位を楽しんでいた。
 そしてなにより、海底王国アトランティスを率いるアクアマンと、アマゾネスの軍勢セミッシラを指揮するワンダーウーマンは、大西洋沿岸を壊滅させながら、人類を巻き込んでの全面戦争を続けていた。
 いや、なにもかもが変わったわけではない。たとえば、光目映いゴッサムシティの夜を、バットマンが翼を広げて舞っているではないか。いや、あれも本当にバットマンなのか? それとも?

 力を失い、そしてまた、フラッシュとしてのあるべき記憶を徐々に徐々に失いながら、宿敵リバースフラッシュの存在を確信したバリーは戦いを決意する。そして人類をも巻き込みながら、絶滅戦争を繰り広げる二人の超人王を前に、サイボーグもまた超人の軍勢を組織する事を決意する。
 改変と大戦。二つの危機に立ち向かいながら、バリーがやがて相対する本当の敵。真相を前にして、バリーが選んだ最後の手段とは……。

 てなまあ感じで、非常に楽しいこちらは、2011年度、つまりほんとに去年行われたばかりの、DCをすべて巻き込む巨大クロスオーバー。
 見て判る通りの世界改変ものなのですが、すごいのは、この「フラッシュポイント」のあと、世界が元に戻らないこと。--つまり、DCユニバースの世界設定は、一回この「フラッシュポイント」でリセットされ、それどころか連載誌もカウントがリセットされて、新たに#1から発行される、と言うのです。

 元々アメコミは長い歴史や複雑な歴史を持つキャラクターが多く(特に人気のキャラクターなら、月に何誌にも登場しているのでなによりです)、その積み重ねの歴史には慣れない人は入りにくいものですし、またシナリオを書く方にしても、ずいぶんある積み重ねは大変なものなのだと思います。
 そこで、というわけではないでしょうけども、DCユニバースでは過去に何回か、「世界破滅の危機を乗り越える」大事件のあとに、世界感そのものが整理されたりリセットされたりする、と言う事件が起きてきました。そしてその最新の企てが、今回の「フラッシュポイント」と言うわけです。

 フラッシュポイント終了後、DCユニバースは新たに整理され、「5年ほど前にスーパーマン達、新世代の超人達がデビューした」と言う設定に作り替えられます。その過程でこっそり、ワイルドストームのような別ブランドのコミックのキャラクター(グリフターとか)なども取り入れ、現在もその新設定で走り続けている、と言うか、走り始めたまだばかり、と言うところなのです。

 メインを張っているのが、バットマンはともかく、フラッシュやサイボーグと若干知名度的にマイナーなことや、世界改変ものの宿命で、元の世界を知っているかどうかで面白さが変わってくる、と言う、色々難しいところはあると思いますが。このアメリカで行われたばかりの旬のネタを、新鮮なうちに持ち込んできてくれたというところに、まずは、なにより敬意を表したいと思います。

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