科学の世紀の怪盗紳士(☆☆☆)
二十世紀初頭、フランスを中心にヨーロッパを騒がせていた謎の怪盗アルセーヌ・ルパン。1巻で宿敵(と言うには、あまりに気の毒なのですが……)ガニマール警部との対決、そしてルパンの収監から物語は始まり、ルパンの脱獄、そして「私」こと語り手ルブランとの出会い。さらには宿敵、イギリスの誇る世界的名探偵、皆さん御存知のハーロック・ショームズとの初邂逅までが、三巻で描かれる事になります。
原作を読んだ事がないので、再現度を云々することはできないのですが、アレ? と思う虚をつき、絶妙な隙をついて超人的な振る舞いを見せるルパンと仲間達の振る舞いはやはり絶品。そしてそれに輪をかけるのが、絵柄の力強さ。このエピソードの頃のルパンは二十歳前後、若々しく傍若無人であり、完璧な変装を持ちながらなお、心の振り幅は表情豊かです。
策略を完全に遂行させ、当の被害者を前に大哄笑したかと思えば、笑われた当の本人に妙な気遣いを見せたりもする。なにかの段取りが狂った事には内心に焦りを見せ、そして予期せずして本心を見抜かれ、瞬間の憤怒をたぎらせる。
意表を抜く策略、表情豊かな振る舞い。そして筋運びのテンポの良さと意外性。ぎょっとする面白さを感じられる作品、これから面白くなってきそうなところ、続刊も楽しみであります。
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