一手動かば一手追われる、裏切りのサーカス(☆☆☆)
リンク: 映画『裏切りのサーカス』公式サイト.
とりあえず一回見てきました、原作は未読でしたが、いやこう、難解でした……!
今は昔、米ソ冷戦時代のイギリス情報部・サーカス。退職していた元幹部スマイリーはある日政府の呼びだしを受け、元上司の死と一つの任務を告げられる。それは死んだ上司が、ずっと胸に抱えていた疑惑。情報部の幹部達の中に、ソ連情報部に通じる裏切り者が潜んでいる、と言う確信。
ティンカー、テイラー、ソルジャー、プアマン、とコードネームを振られた、今やサーカスを切り回す立場となった幹部達を相手に、部下も、同僚も、誰が味方と言えるのか、定かならざる静かな戦いを繰り広げる事になる、スマイリーと彼のチーム達。部下の暴走や黙殺されていた事実が明らかになる中、かつて対峙した強敵の影が、厚い雲のような疑惑の先に、実在感を持って立ち上がってくる……。
とまあ、スパイものなのですが、この作品は静。ただひたすらに沈鬱なまでに抑圧された静に支えられた作品であります。
うたい文句通りアクションやカーチェイスがあるわけではありません。スマイリーはあくまで冷静に、沈鬱に、まるで安楽椅子探偵のように、容疑者達の様子を睨みながら、実働部隊となるギラムを中心とする部下達に、手掛かりをピンポイントで指し示していきます。
しかし、この行動はあくまで内偵。その行動は敵のみならず、味方にも監視され、たとえば通話は盗聴され、行動は監視されており、一つの行動は、誰かも判らぬ相手側の次の手を呼び、部下や味方のミスやちょっとした過信が原因で、いくつもの事象が起き、再びゲーム板はバランスを取り戻し。そしてその新たな状況を睨み、スマイリーは沈思黙考していくのです。
ともあれ、いつ噴火するかも知れない火山のような、多くを語らないゲイリー・オールドマンの存在感を楽しみつつも。ちょっとでも油断すると、たちまちのうちに置いてけぼりになってしまう、そんな難解な映画だと思いました。とりあえず原作を非常に読んでみたい、読まなくては、と思い、映画館を出たその足で、紀伊国屋で原作本を買ってきた次第です。
余裕があったら、もう一回くらい見に行ってみたいなあ、と思うような。高揚感ではなく、圧力のような。不思議な存在感を感じる、そんな映画でありました。
いしかわさんの真似をして、映画で印象に残った台詞で〆にしたいと思います。
若干うろおぼえ気味なんですが。
「君には観察力がある。孤独な者の才能だ」
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