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2012.07.28

闇の騎士対闇の闘士、ダークナイトライジング(☆☆☆☆)

 8年。
 人の為した事を偽りと言うのなら、その8年はただ偽りのうちに消えていった。
 光の騎士と讃えられたハービー・デントが非業の死を遂げ、彼の名を冠したデント法が施行され、すでに8年。ゴッサムは長い平和を享受していた。
 ジム・ゴードン本部長その人の指揮のもと、ゴッサム市警は勢力的に活動し、かつて市民を脅かした凶悪犯たちは次々とブラックゲート刑務所に封じ込められていった。警察の活動と治安の向上に、いつしかバットマンは街を飛ばなくなっていた。いや、デントが死んだあの日から、もうバットマンはゴッサムの夜から消えていたのだ。
 そのバットマンの仮の姿、大富豪ブルース・ウェインもまた、人々の前に姿を現さないままに、長い日々が過ぎていた。死んだとも、重病になったとも、様々な噂が平和なゴッサムを飛び交い、そして消えていく。

 妥協と努力、偽りの平和。人々は平和に慣れ、闘争を過去にしようとしていた。ゴードンは過去が正しかったかを思い悩んでいた。ブルースは、バットマンは過去になろうとしていた。それをよしとしようとしていた。
 パーティの夜の窃盗事件が、緊張を突き破る。犯人は窃盗の常習犯セリーナ・カイル。被害者はブルース・ウェイン。目的が窃盗ではないと見抜いたブルースの頭脳が回り始める。忠実なアルフレッドの懸念を他所に、再びブルースの、バットマンの、止まった時間は動き始める。
 外の世界では、誰も知らぬままにすでに時間は尽きようとしていた。テログループによる科学者の強奪、不自然な孤児の死、それらを統率するマスクの男ベイン。その手はすでに広く大きく、平和に眠るゴッサムの夜を覆い尽くそうとしていた。

 闇の騎士は不滅なのか? 答えは出ないまま、ゴッサムに長い冬が来る。雪が消えるとき、残るもの、立っている者は誰なのか。
 すでに終わっていたはずの、闇の騎士の最後の戦いが、いま蘇り幕を開ける!

 てなわけで、ダークナイト・ライジング見てきました。
 始まってすぐに「ええええ!? そうなってんの!?」的な展開になっちゃうわけなんですけども。相変わらずとんでもない感情濃度を振りまいてきます。3時間弱と言うかなり長い上映時間にも関わらず、ここは尺が足りなかったんじゃないかな、とか、ここはもっと時間をかけて見たかった、とか、そう思ってしまうような、非常な濃度を持つ作品であります。

 前作の8年後となる今作、新たな敵はベイン、そしてキャットウーマン。ベインは、原作のビジュアル的には覆面プロレスラーみたいななんかアレな外見ながら、非常に優れた戦略眼と、薬物強化の果てに人間離れした肉体の強さを合わせ持った、智勇兼備の悪の天才。そしてキャットウーマンは、ティム・バートン版では2ですでに登場している、バットマンきっての悪女ヒロイン的な存在(いっぱいいますけどその中でも最右翼クラス)です。

 ベインのトム・ハーディは、「インセプション」にも「裏切りのサーカス」にも出ていたんですが、あれ? 誰だっけ? と思わず確認してしまうようなビジュアルの変わりっぷり。まあ、あの特徴的なマスクで、すでに顔が半分以上隠れているのでわかりにくくはあるんですけど。あんなにあの人ごつかったっけ? って思うような強烈なビジュアルです。一方のアン・ハサウェイのキャットウーマンも、登場のときの仕草っぷりから、ああ、これは確かに! と納得しそうな、滑らかというかいかにもそれな動きを見せてくれます。細かいところですけど、セリーナがルームメイトっぽい(ちょっと頼りない)女の子と一緒に暮らしてる辺り、「イヤーワン」の設定をこっそり持ち込んでいる感じ。
 そうそう、このシリーズはバットマンの中にある超自然的なものを、かなり排除してきていますけども。その上で、原作にあった設定を、うまく消化して再構成しているあたりは感銘ものです。詳しく言いたいけど、ほとぼりが冷めた頃にこう。

 全体としては、有名なコミックのシリーズのエッセンスを色々と取り込んだ上で、骨太のオリジナルストーリーを構築している感じ。そして作品を通して感じるのは、バットマンを、ブルース・ウェインを取り囲む痛苦。過去が、現在が。自分が、他人が。肉体が、精神が。成功が、失敗が。理想が、行動が。すべてがブルースを責め苛み、彼を追い詰めていく。それでもなお前進しようとするのか、前進したところになにがあるのか。
 強烈な喪失感と孤独に、かつてなく苦しむブルースとともに、ダークナイトでも描かれた、ゴッサム自身の、普通の人々の戦い、善と悪のせめぎ合いも、また描かれています。長く、辛く。そして多分、尺がもっとあったら、さらに徹底的に。
 ノーラン監督が描きたい事なのかどうかは判りませんが、映画の展開を、そしてベインの言葉を見ていると、それはまるで。本当に悪なるもの、そして、かすかなる本当に善なるものは、個人ではなく集団の、群衆の中にこそあり、その天秤は悪の勝利へと、止まる事なく傾き続けているのではないかと。そんな気を受けるのです。

 身もフタもなくまとめてしまうと。前作ダークナイトの域に達する事が出来た、とは残念ながら言いにくいですが、三部作の最後、有終の美を飾るに十分の風格を備えた、アクションとビジュアルと、見ている者に正面から殴りかかってくる、打撃の重さを持った映画だと思います。
 痛苦で始まり、痛苦で終わる男の物語。その完結編を、ぜひ。

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コメント

見ましたよ~
DVDでもう一度見たいですね~
Rが主演の作品は作るんでしょうか?
アルフレッドの夢が叶って良かった。

投稿: 146 | 2012.07.29 15:36

 ブルーレイ、欲しいですね(笑)。橋の空撮とか綺麗なんだろうなあ……。
 映像特典で何が入るか楽しみです。トム・ハーディのコメンタリとか見てみたい(笑)

投稿: sn@散財 | 2012.08.04 08:51

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受信: 2012.08.03 12:12

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