「アイアン・スカイ」:戦争は暴く、月と地球の裏の顔 #鉄空日本侵略
2018年、黒人宇宙飛行士による、初の月面着陸に沸くはずだったアメリカ。
しかし月の裏側に送り込まれた宇宙飛行士は、宇宙船もろともその消息を絶ってしまう。事態の真相がもし地球に伝わっていたとしても、誰一人としてこの事態を信じようとはしなかっただろう。
月着陸船を破壊し、宇宙飛行士ワシントンを捕虜としたのは、カギ十字のシンボルを掲げた軍団、ナチス・ドイツ。
ナチスは敗戦後も地球から逃げ延び、地球の誰一人知らぬまま、人口を増やし兵器を作り出し、月の裏側で密かに生き延びていた。深く静かに着々と、地球侵略の機会を伺っていたのだ。
ワシントンを捕らえた事が引き金となり、准将アドラーの企図のもと、月面ナチスの地球侵略計画は一気に動き出す。
しかしそのころアメリカは、大統領府は。月面ナチスよりも遙かに恐るべき敵に脅かされていた。敵はすでに間近まで迫ってきていた。良策は未だ無く、時間は刻一刻と失われつつあった。
大統領選が間近だったのだ。
月から侵略せんとするナチス、それを迎撃するアメリカと世界の国々。それぞれがこっそり企む思惑と思惑で、事態は突拍子もない方向へゴロゴロ転がり続ける。
果たして、月面ナチスは地球を侵略する事ができるのか、アメリカは、地球の国々はこの侵略の驚異にどう立ち向かうのか。
月からの侵略者、彼ら、そして彼らとの戦争が暴くのは、果たして月の裏なのか、それとも地球の裏なのか……?
そんなわけで、予告編で滅茶苦茶気になって。早速いそいそと見てきました、アイアンスカイ。いや面白かった!
新宿武蔵野館のお昼の上映だったんですが、まあシアターが狭かった事もあったんですが、立ち見も出ようと言う大混雑。ロビーが山手線のごとくごった返しておりました。
ナチスが月から攻めてくる! 宇宙船はなんかヒンデンブルグとかハウニブとか、そういう感じのデザイン! と言う辺りで、すでにもうお腹いっぱいと言うか。ミニチュア感溢れる玩具っぽさが満載で。冒頭の月面着陸のシーンで、宇宙飛行士の動きの、あまりの「それっぽくなさ」に、びりびりくる低予算のウェーブを感じたりもしましたが。実際、本編が始まってしまうと、話の面白さにぐうっと引き込まれてしまいました。
ワンアイデアで延々と引っ張るバカ映画か、あるいはパニック戦争映画かと思っていたら、さにあらず。これは相当に性根の座ったシニカルさと、知性溢れる冷笑感、そして「こんなの笑うしかねえだろ?」と、野太く力強く呼びかけてくる、骨の太い反抗精神の籠もった作品でありました。
なにしろこう。見てると、すごい勢いでどんどん「ええええ、そっちなのー!?」と言う感じで話の筋がよれていく作品。登場人物達は、いずれもその立場だけに立って、ある意味クレバーに、ある意味小狡く立ち回り、彼らの作り出す部分最適が、全体として、いやそっちはないだろう、と言う方向へと転がっていくのです。
そのズレさ加減、真剣だったりそうでもなかったりする、登場人物の繰り出す言動が、もれなく笑いにも繋がってくるのが作りのうまいところ。実際、劇場はゲラゲラ笑う声で溢れてましたし、僕もゲラゲラ笑いました(国連本部のシーンの北朝鮮代表とか実にヒドい)。
一部笑いが起きてて、たぶん可笑しいんだろうけど何がおかしいのかよくわからなかったところとかあって、あれは若干悔しかった。解説が欲しいところですね-。
重厚な音楽とびっくりするビジュアル(特に後半!)、隙あらば挟んでくる小ネタをまぶしつつ。これは強烈な反ナチス映画であり、かつまた、反アメリカ映画でもあります。
その根底から響くのは、あるいは権力、あるいは正義、あるいは力。そしてそれへの賛美に対する、強烈かつ皮肉な反発心。
バカじゃねえの、と、真っ正面から相手に言い放つような、でもゲラゲラ笑える、そんな映画でした。
上映期間如何にもよりますけど、これは色々思うところもあり。いろんな人、いろんな考え方の人に見てほしいなあ、と。そんな風に思った作品でありました。
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コメント
私も見ましたよ~初日の夜に!
円盤、いやDVDとか出たら、映像特典含めて買いですよね~ジーク・ハイル!
投稿: 146 | 2012.10.04 19:43
なんていうか、ひっどい映画ですよねこれ(笑)。
いしかわさんにも是非見に行ってほしいですなー(笑)。
投稿: sn@散財 | 2012.10.04 23:35
ラストシーンで、さり気なく地球表面を飛び交う光と閃光。
火星が出てくるのは次回作の伏線?
投稿: 146 | 2012.10.06 07:19