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2012.09.29

ニンジャスレイヤー、狩る者が狩られる側に回るとき。(☆☆☆☆)

ニンジャスレイヤー ネオサイタマ炎上1

 twitter連載、と言う、なんかちょっと紙芝居っぽい発表スタイルで大人気の、忍殺ことニンジャスレイヤー。
 書籍版が発行された、と言う事で。これは翻訳チームにもわらいなくさんにもお金儲けて貰わないと、と思い、いそいそと買って参りました-。

 さて、この作品の魅力は多岐にわたります。
 twitter連載と言う、連載と読者からの突っ込みとか同時進行する、独特のライブ感溢れるスタイルや、話が前後して掲載される事による、全体像を推測しつつ読み進める一種の謎解き感。確信犯的におもしろい方向に間違っている近未来日本の描写。それに、知らず知らずのうちに真似しちゃいそうになる強烈な日本語のセンスなどなど、キャッチーでわかりやすい魅力に満ちあふれている娯楽作なんですけども。
 やはり根本、物語の骨子がしっかりしているのが、この作品の魅力だと思うんですよね。

 舞台はサイバーパンク的な近未来の日本。ここは政治と産業とヤクザが、緊密に支配社会層を形成していて、格差社会がかなり進行している…… と言いたい…… ものの、どこか笑えない現実との連続性を感じる世界。
 産業界は暗黒メガコーポと言われる大企業連合によって支配されており、彼らや政界をさらに支配するのが、闇社会に君臨するニンジャ達。
 面白いのは、彼らはニンジャって言ってますけど、僕らの知っているニンジャとはかなり違う、と言うところ。確かに手裏剣を投げたりとかもするんですが、(大部分は)別に修行を積んだとか、忍者の里の出身とか言うわけではありません。普通の人間に、ある日ニンジャソウルと言うらしい、なにかが憑依して、ニンジャと言う存在に変わってしまう、と言う設定なのです。
 ここだけ抜き出すと、なんじゃそりゃ、と言う感じになっちゃいますけども。いわゆるニンジャと言うよりも、超常能力者バトル、と言う風に捕らえても、つまりはまあ、構わないと言うわけです。それぞれのニンジャが、なぜかその能力を現す英語のニンジャネームを持っている、って言うのも、アメコミのヴィラン的な面白さがありますし。

 この「ニンジャソウル」と言う設定は、別に投げっぱなしや説明のためではなく、話の根幹に関わっています。ニンジャソウルは憑依した人間の心を歪め、徐々に邪悪な方向へとねじ曲げていく、と言うのです。
 主人公フジキドは、穏やかなただのサラリーマンだったのですが。理不尽に妻子の命を奪われた怒りと、その怒りに吸い寄せられたニンジャソウルの力とで、復讐の殺戮者・ニンジャスレイヤーと化す事になります。
 しかしフジキドは、自分の中にある「人間としての復讐心」と、ニンジャソウルの囁く「殺戮の欲求」の狭間で、戦いながら苦しみ続ける事になります。

 話の根本的な主題は、ニンジャスレイヤーと、悪のニンジャ組織ソウカイヤとの戦いになるのですが。この一巻でも、それに巻き込まれた、あるいは自ら身を投じた、さまざまな立場の人々が、入れ替わり立ち替わり、主人公として現れてきます。この、さまざまな視点から語られる、善悪ないまぜの暗黒の街。その語られ方の魅力が、作品のまたひとつの魅力であろう、と思うのです。

 ニンジャスレイヤーにより相棒を殺され、自らも殺戮の標的とされたソウカイヤのニンジャ。そのソウカイヤを支配する暴君。
 あるいは、息抜きの娯楽を楽しんでいたエリートサラリーマン。転校先でつつましく暮らそうとしていただけの孤独な女子高生。夢に破れて自暴自棄になり、暴動に身を投じた下層労働者……。

 短く切り取られた、彼らの視点から、断片的に組み上げられていく街の風景と戦いの記録。そういう視点で見ていっても、この作品。長大なれども冗長ならず、と言う非常に面白い作品だと思うのです。

 書籍版の発行は、機会として絶好だと思いますし。これまで興味があったけど読んだ事がなかった、と言う皆さんに。これまでちょっとなかった形式の娯楽文学として、ぜひお手に取って頂ければ、と思う次第です。

 ついでに思うことふたつ。
 「ニンジャは戦う前に必ずアイサツして名乗りを上げる」と言うギミックは、twitter連載、と言うスタイルで、ともかくキャラクターを紹介する、と言うスタイルには、非常にマッチしてるんだなあ、と改めて感動した次第。文章量の非常に良い節約になっていて、しかもそれが設定にもなっているという。

 もう一つは、日本で発行を行っているのが、あくまで翻訳チームであり、原作者は別にいる、と言うところ。
 いや、僕は「これは翻訳チームが書いてるよね、原作者ってそもそもがいないよね」と言うスタンスで曲解してるんですけども(笑)。
 たとえば書籍展開などを行う場合、こういったスタイル…… つまり、そもそもの権利は自分達ではない第三者が保持しており、自分達は部分的に代行しているに過ぎない…… を取る事で、予期せぬ形での商業利用を防げたりとかするのかな、とか。そんなことを考えた次第でした。
 まあ僕の妄想なんですが、本当だとしたら、かなりうまいなあ、と(笑)。

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