『デッドコピー』、リストアされた女(☆☆☆)
ある日、世界は5年後で。そして、私は殺されていた。
--クローン技術が実用化・法制化され、「殺人事件の被害者」のクローン再生が認められた未来。
14歳の少女・志保は、培養槽の中、19歳の肉体の中で突然目を覚ます。最後に覚えている記憶は、クローン体にすり込む記憶を記録するための「バックアップ」に参加した事。それが意味することは一つ-- 自分は誰かに殺され、そして蘇ったのだ。合法クローンとして。
自らの肉体の変容、そして変わってしまった世界に戸惑いつつ、家族に、新たな知人に、かつての友人に接する志保。しかし誰もが腫れ物に触るように、肝心な事実に触れようとはしない-- 誰に、なぜ、自分は殺されなくてはいけなかったのか? 見知らぬ5年後の自分は、いったい、どんな人生を送っていたのか?
自分の死の原因を捜し求める彼女の行動が、やがて優しさと偽りの壁を引きはがす。「復活」がもたらすサスペンスの行く末は……。
てなわけで、珍しくもJコミですっかりはまってしまったので、作品の紹介など。
だいたい書いた通りなんですが、クローンとしての復活が、実用化どころか合法化された未来。バックアップを行っていなかったせいで、かなり記憶が巻き戻ってしまった状態で蘇ってしまった主人公の少女が、「今」と「昔」の記憶のギャップに苦しみながら、自分の死の真相に迫ろうとする…… と言う筋書き。
SF作品ではありますが、作中で使われているのはクローン技術のほぼワンアイデア。しかしながら、もし「クローンが合法化されたら?」と言う事が起きたとき、どのような問題が起こりえるのか? どんな社会に影響があるのか? と言う部分を、きっちり、それもただのフレーバーではなく、作中のギミックとして濃厚に織り込んできているのが、この人の面目躍如と言うべきところ。
(このへんを、「復活した主人公が病院から出たところで、マスコミやデモ隊にもみくちゃにされる」と言うあたりで、きっちり説明してしまうあたりが実に上手いなあ、と)。
死と復活、差分バックアップ、「私」とは誰か、そして罪と罰。様々な要素を織り込んで、全4話と言う中編できっちりまとめているこの作品。
ざっくりと斬り込んで、爽やかに終わらせる手際は、この手のSFが好きな人ならきっちり嵌るだろうなあ、と思う次第。せっかくのJコミなので、いろんな人に読んでほしいなあ、と思い、紹介させて頂きました。
……あと「だいらんど」を読んだら、怒濤の勢いで両方とも紹介したくなってしまったんですが、さすがに自粛。
しかしでもこっちも、フレーバーから想像した中身が、とんでもない方向に飛んでもない方に行ってしまう作品でした。こっちも紹介したいなあ…… と思っております。
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