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2012.10.13

V.S.ダイナスティ、中国王朝の至宝(☆☆☆)

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 跪射俑、だそうです。
 つまりどういうことかと言うと、中国王朝の至宝展を上野まで見に行ってきましたよ、ということなんですな。

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 さて、この中国王朝の至宝。この名前だと歴代王朝の収集した珍品銘品の数々、と言うのを想像しそうですが、今回はそういう趣向ではなく(こないだ故宮展やりましたしね)。むしろ、それぞれの時代の生産物や文物を、発掘品を中心として瞥見することで、古代から中世に至る中国史を通しで見ていこう、と言う構成です。
 面白いのは、それじゃあ歴代中国史を直線的に、とリニアで並べるのではなく、それぞれの時代ごとに、二つ以上の中心を設定し、「何々vs何々」と言うスタイルで、それぞれの時代をとらえていることです。
 中国は多中心の文化であり、各時代に多元的な文化が存在し、それが衝突したり融合したりした歴史の上に、中国文化が形成された、と言う考えが、その根本にはあります。まあ確かに、あれだけ国が広けりゃあそりゃそうですよね、と言う気はします。
 大雑把に行って、それは南北の、黄河流域と長江流域の文化の違いが、ひとつの軸としてあります。ときにそれは内省的な思想と外向的な思想の違いでもあり、異民族と漢民族の違いでもあり、確かに矛盾する発想同士が、ときに争い、時に微妙なバランスで共存し、そのバランスが大きく損なわれ、また回復する。そんな反復を経ていることが納得できるような、つまりなんだ。同じ時代でここまで違うのかこれ、みたいな感じの内容が、次々と出て来るわけです。

 まずは上古の時代、文明の曙。夏殷周の黄河三王朝、だいすき青銅器(三本足の青銅器の、すごい小さい奴があって、これまたずいぶんと可愛い)に、たったひとつだけ本物の甲骨文。対する長江流域は、蜀の三星堆遺跡に代表されるような、目の飛び出た謎の仮面で持って行かれる、黄金と仮面の文明。

 この長江と黄河の異質さは、そのまま次の章、春秋戦国時代の斉・魯と、楚との対比に持ち込まれていきます。楚時代の墓から発掘された漆塗りの木器の数と見事さは目を見張るもので、紐だけを新調した革鎧の鮮やかな黒などを見ていると、楚は黒の文明だったんじゃないかな、と言う気さえしてきます。鉄器ですし。

 続いては、神がかったスピードで天下を統一したあと速攻で滅んだ秦と、その秦の後を受け、かれこれ四百年近くの名目を保った漢の対比。この対比はアンフェアじゃないかと言う気もしますが、何かにつけて完璧で圧倒的な秦の陵墓と、かつての青銅器を模した土器など、どこか生きる者のゆとりを感じる漢の副葬品の様子には、なるほど時代とキャラクターの大きな差を感じます。
 ところで漢の景帝(武帝の一代前)の陵墓が発見されて、それもすごい大規模で話題になった、と言う話が展示でも出ていたのですが、発掘作業の様子、と言う光景で並んでいたのが、なぜかものすごい量の豚の彫像(発掘品)で、それがお行儀よく並んでいる光景はちょっとしたショックでした。なんていうかもっといい写真は。

 後漢の滅亡、そして皆だいすき三国志の時代を経て、統一を果たした晋も速攻で滅んだのち、五胡十六国とも東晋十六国時代とも言われる時代、そして六朝、南北朝時代へと続く混乱と分裂の時代に雪崩れ込みます。ここいらへんが次の章で、北朝と南朝を対比し、中央アジアに至る異文明を吸収した北朝と、漢民族の伝統を保持しつつ大きな進歩を遂げる南朝の文化についてまとめられます。

 このあとは、統一王朝の時代、花匂う唐のみやこ長安と洛陽の対比(ここだけはちょっと対立テーマに苦しい)、そして再びの五代十国の争乱を経て、かなり偏った形ではあるものの、南北朝対立となる遼と宋との対峙に入っていくのですが。だいたいまあ、紹介はここいらあたりで。最後にちょっとびっくりするものが出てきますよ。

 最近の発掘調査で出てきた様々な文物を織り交ぜながら、各時代それぞれの文明や文化性を紹介する、さすがに扱っている時代が長いので大づかみではあるものの、実に興味深い、かつまた貴重なものの多い展示会でありました。
 何よりも、ひとまとめに中国文明でいっしょくた扱いにされているものに、多中心的・多義的な意義があること、そしてそれらが時代時代で大きく変化している、と言うこと。そこいらあたりをきっちりと、形を持って示している、と言うところ、非常に面白い展示会だと思いました。見に行く機会がある方は、ぜひ行かれるとー。と思う次第です。

 ……あと、そうそう。行ってみたら、音声ガイドに、ふつうバージョンと「キングダム」バージョン(声優さんがざっくり解説してるらしい)があって、ちょっとびっくりしました。こういう切り方もあるのか! と感心しましたが、アニメ見てないのと、さすがに平成館の中では日和りたくなってスルーしてしまいましたが。ましたが。
 いやー、でも。秦以降の時代をどうやって解説してたんだろアレ。と、ちょっと気にはなった次第です。

 あとミュージアムショップに寄り道したら、キティちゃんが跪射俑になったデザインのハンドタオル売ってて瞠目しました。どこまで仕事えらばないのキティちゃん。

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コメント

面白い記事をありがとうございます。
時間を作っていってみたいが、見たい映画も多くてどうしよう(。>0<。)。
お題が「対立軸」ということですが、王朝名が国名(秦、漢等)から元、明、清とモンゴル族侵攻後で付ける基準が変わった点で対立軸があると思いますがその辺は何か面白い展示がありましたか?

しかし「キティちゃん」・・・。

投稿: O-GA | 2012.10.14 16:34

 いつまでかは判りませんが、となりの本館でやってる出雲展も同じ券で見られるのでお勧めですよ-。

 ちなみにこの王朝展、実は最後が「宋vs遼」のところで終わっているのです。そのあとがどうなるのか、はものすごく気になるところなので、正直、気になるんですけどね-。どうしてまた、こんな中途半端なところで終わっているのだろうかと(笑)。

 キティちゃん、半端無いです。びっくりしました(笑)。

投稿: sn@散財 | 2012.10.15 23:43

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