津軽生まれのカーナッキ。(☆☆☆)
このシリーズ最大の魅力は、怪談めいた物語の中に持ち込まれたミステリの風味。
毎回、鐵次の元に持ち込まれるのは、霊や人外、ときには人の引き起こす、理解を超えた不思議な出来事ばかりなのですが、鐵次と仲間達はその出来事の背後に存在する、あるいは存在した、生者あるいは死者の意志を読み解いて、果たされぬ彼らの望みを叶え、成仏させようとするのです。
全八編の短編からなる今巻は、上記の定石に従いつつも、謎解きあり剣劇あり宿敵との対決あり、とバラエティ豊か。しかしその多くに通じているのは、死してなお留まり続ける、もの悲しくままならない人の性なのではないでしょうか。
一番のお勧めは、ある商人が念願の別荘を買ったと思ったら、前の住人が幽霊として住みついていた、と言う「飛鳥山寮」。なぜ、を追ううちに意外な方へと話が転がっていく、ミステリ風味が最も濃い作品です。「梅供養」「庚申待」の、濃厚な怪談風味もお気に入りです。
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