2月の読書の記録メモ。(☆)
というわけで、月末月初の恒例。2月の読書目録あれこれです。
なんか買ったわりにはあんまり読んでなかった…… と言うのが正直な印象。いろいろ積み上がってるので読みたいんですけど、来月は来月で欲しい本があるのだなあ。詠嘆詞。
そんなかんじで、2月のぶんですー。
2月 の読書記録
【読書状況】 7 冊読了 / 14 冊購入 【購入費】 6249 円
「さびしい女神 僕僕先生 (新潮文庫)」
仁木 英之 新潮社 546 円
読了(2013-02-03) ☆☆☆☆★
不可思議な旱魃、滅び行く辺境の国。ひょんなことから旱魃の「原因」と知己を得てしまったのは、放浪の天才仙人…… の、弟子のただの凡人・王弁君。
どうにかしたい、どうしていいかわからないけど。ひねくれ師匠にそっぽを向かれ、素朴な一念に突き動かされ、手立てを求める王弁君と神馬・吉良は人間界を飛びだして、はるか時の果て、宇宙の果てまでも、はるかな探求へと旅立つ事に……。
自由気儘な僕僕先生と、その弟子・天下の凡人王弁君、そして風変わりな道連れ達の繰り広げる中華ファンタジー放浪記の第四弾。素朴な思いに突き動かされ、はるか道教宇宙を駆け巡る王弁君の必死の願いが胸に突き刺さります。一巻以来、久々に見せる宇宙まで飛んでいく大風呂敷、どこかSF的な匂いの漂う宇宙の描写に、綺麗に畳まれて次巻への予兆を感じさせる結び。
王弁君の強さ、弱い者、選ばれざる者ならではの、微力なれども無力ではない強さ。そんなものを感じさせてくれる、いっそう楽しい一編であります。
「時の娘 (ハヤカワ・ミステリ文庫 51-1)」
ジョセフィン・テイ 早川書房 840 円
読了(2013-02-06) ☆☆☆☆★
事故で入院し、暇を持て余すグラント警部。退屈しのぎに眺めた肖像画にふと感じた違和感から、ベッド探偵となった彼の調査は始まった。
リチャード3世、果たして彼は本当に世評の通りの悪王だったのか? 歴史研究家の若者を助手に加え、調査に乗り出すグラント。犯罪推理のメソッドから事実に当たるその手法は、やがて古の王の人生に、新たな光を当てる事となる……。
史実の資料をもとに、リチャード3世の「常識」に新たな側面から迫る、歴史もの安楽椅子探偵ものの大古典。人名がとっつきにくいところはありますが、要は相続争いだと割り切れば、大筋は掴みやすくなるかと思います。
人の評価、歴史の評価。当たり前だと思っている事は果たして本当なのか、歴史を書いて残した者の意図は果たしてどこにあるものなのか。ふと考え直す視点を与えてくれる良書にして、読後の結びも爽やかな名作であります。
「お化け大黒: ゴミソの鐵次 調伏覚書 (光文社文庫 ひ 11-3 光文社時代小説文庫 ゴミソの鐵次調伏覚書)」
平谷美樹 光文社 680 円
読了(2013-02-14) ☆☆☆☆
大江戸ゴーストハンター、ゴミソの鐵次再び登場。短編集の第二巻です。
このシリーズ最大の魅力は、怪談めいた物語の中に持ち込まれたミステリの風味。毎回、鐵次の元に持ち込まれるのは、霊や人外、ときには人の引き起こす、理解を超えた不思議な出来事ばかりなのですが。
鐵次と仲間達はその出来事の背後に存在する、あるいは存在した、生者あるいは死者の意志を読み解いて、果たされぬ彼らの望みを成仏させようとするのです。
全八編の短編からなる今巻は、上記の定石に従いつつも、謎解きあり剣劇あり宿敵との対決あり、とバラエティ豊か。しかしその多くに通じているのは、死してなお留まり続ける、もの悲しくままならない人の性なのではないでしょうか。
一番のお勧めは、ある商人が念願の別荘を買ったと思ったら、前の住人が幽霊として住みついていた、と言う「飛鳥山寮」。なぜ、を追ううちに意外な方へと話が転がっていく、ミステリ風味が最も濃い作品です。「梅供養」「庚申待」の、濃厚な怪談風味もお気に入りです。
「KEYMAN(4) (リュウコミックス)」
わらいなく 徳間書店 650 円
読了(2013-02-17) ☆☆☆☆★
アメコミヒーロー的な世界感をもう一捻り、偽りのヒーローと陰謀に立ち向かう、警察官達と謎の魔女の戦いを描くKEYMAN4巻。
アーロン警部や新聞記者サリー達と協力体制を築き、情報と対抗手段とを手にしつつある、アレックス達対策チーム。死せる初代キーマンの重要な情報を求めるうち、新たなキーマン、そしてさらなる敵との戦いを余儀なくされる事に……。
初代キーマンの秘密を中心としたシビアな物語運びに、力対力で見せるアクションシーンは今巻も健在。アレックスとウォルター、恐竜ゴリラコンビの暴っぷりに、ここぞと言うところで踏ん張るピートの見せ場も嬉しいところ。小ネタも楽しく、ことにキャラクターのネーミングは要所要所でニヤニヤしてしまいます。
そして実にいいところで終わってしまうのがこの4巻。続きも楽しみであります。
「モンスター娘のいる日常(2) (リュウコミックス)」
オカヤド 徳間書店 650 円
読了(2013-02-17) ☆☆☆☆
ラミアにハーピーにケンタウロス。いきがかり上、異種族のお嬢さん達のホームステイ先にされてしまった青年。誘惑その他と戦ったり戦わなかったり、てんてこまい系日常を描くシリーズの続編です。とうとう人間型とは言いかねる新キャラも登場し、だぁりん君の崖っぷち生活は続いております。
同じテーマの「セントールの悩み」と比して、こちらは相当に青年コミック寄りと言うか男性向け寄りと言うか。
ともあれ、しょうもない人はいても本質的に悪人は出てこない、ゆるやかな世界観にモンスターな娘さん達の生態をディープにネジ混んでくる、そんなユニークな一作であります。
「機動戦士クロスボーン・ガンダム ゴースト (3) (カドカワコミックス・エース)」
角川書店(角川グループパブリッシング) 588 円
読了(2013-02-22) ☆☆☆☆
F91も含め大河シリーズへと成長したクロスボーンガンダム、Vガンダム編に突入した第三巻。この巻の中心は、主人公フォントとライバルのジャック。彼なりの(そしてこの原作でしか有り得ない)やり方で、ただ巻き込まれたダケの立場から、自らの戦う事を決意するフォントの姿。そして"サーカス"の一番手として登場した強敵ジャックの、また別の側面。言ってしまえばありがちとも言えますが、それを厳しい苦悩として描き出すのはやはり長谷川流の骨頂でしょう。とうとう登場した主人公機も相まって、続きの気になる一冊です。
「アバンチュリエ(5) (イブニングKC)」
森田 崇 講談社 620 円
読了(2013-02-25) ☆☆☆☆★
ルパンvsショームズ、決着! 金髪婦人編が終結し、そして一旦連載が仕切り直しとなる第5巻。移籍と続行が決定してまずは嬉しい限り。このシリーズの魅力は、ことにルパン、そして登場人物達の、力強い目と表情。笑い、悲しみ、喜怒哀楽をオーバーなまでに表現する、子供っぽさと悪賢さを兼ね備えたルパンを、愛らしく憎たらしく描き出すとともに。ルパンとショームズの一進一退の頭脳戦神経戦を、相反する二人の表情をコントラスト強く描き分ける事で見事に表現していると思うのです。末尾のルパンのデビュー戦の話も味わい深く、まずは続いて良かった、と思う一冊であります。
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