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2013.06.09

バーバラ、巨人に加害する者。(☆)

 タイトルは「I KILL GIANTS」より。いい話なのでamazonするといいです。
 タイトルが似てたのでジャイアントキリングとごっちゃになった、てな話もよく聞きましたが。いまこんにち巨人と言えば、J.P.ホーガンでもなければブライアン・シンガーでもなく、進撃の巨人のことになるのでしょう。
 ここでいきなり話の腰が折れちゃうわけですが、僕その、進撃の巨人は読んだことないのです。なんていうかその、急に盛り上がったのに乗り損ねてしまったので、世間の熱気が過ぎてからのんびり読もうかな、とか思っているわけですが(注:同様のパターンに「鋼の錬金術師」があって、今だに全部読んでいません)。
 ですが時折、ニュースサイトで書評なんかを見る事があって。未読の者として、そこから察するところに。
 「理不尽な加害者」が実際に存在する、と言うところも、その理由なのではないか。少なくとも、書評を書いた人達のいくばくかは、「理不尽な加害者が存在することが、この物語が支持されている理由なのではないか」と思っているのではないかな、とか、そんなことをつらつらと考えておりました。

 なにしろどういう話なのか、あらすじを読んだりあらましを見たり、あとなんかすごい前に、本屋でお試し冊子を見た(ああいうの好きで)くらいの知識しかないのですが。つまるところ、筋肉剥き出しの巨人は人類を襲う圧倒的な敵であって、人間の形はしているけど、意志の疎通とか言葉が通じるとか、つまり戦う以外でなんかうまいことをやる方法とかが特に見あたらない存在でしかない。

 圧倒的に強く、圧倒的に理不尽で、そして相手に正義のかけらもない…… と言うか、正義とかそんなかんじの価値観を、共有できそうな余地も見あたらない。つまるところ戦うしかない相手。理不尽で一方的な加害者。
 そういう存在を、あるいはそういう実在を。読者は心の何処かで求めているのではないか。理不尽で、かつ圧倒的な加害者の存在、その反対側の秤には、正義であり理知であり、一方的な被害者の存在が仮定される。
 つまり、それが、読む人、書評を書いた人、それぞれの考える「あいつら」と、「僕達」に仮託されているのではないか、と。「あいつら」は、人である必要はない。集団であり、国家であり、顔の見えない「なにか」であってもいい。産経新聞の書評では、たしかそれは「外国」と曖昧に表現されていて、朝鮮日報では社会の富裕層、既得権益階級として仮託されている。

 もちろん、いままであった数知れない物語の中に、理不尽で共感不可能な「敵」が出てきた例は枚挙にいとまがありませんし、その中にも、実は「敵」と味方が同種の存在だった例や、共感不可能かと思ったらそうでもなかった例、と言うのは、ぱっと出てきませんが、例示していくとたぶんきりがないくらい、それぞれ思いつききれないくらい、あるんじゃないかと思います。

 というか、この物語が圧倒的に支持されている理由がなんなのか、実際のところ、読んでみないと僕にはわからんと思うのです(読んだらわかるかどうかは、また別の問題として)。
 しかし、ある種の大人達が、「こういう物語が支持されている理由」を、「理不尽な加害者が実在する」ことに求めていた」と言うくらいのことは、どうやら口に出してもよさそうです。

 世間の話を聞いていると思うよう、多かれ少なかれ、誰しもにある部分だと思うんですけども。人はわりと被害者側になりたがる。この「側」と言うのは重要なところで、実際に被害を受けたいわけではない(口ではそういうかも知れませんが)が、被害者「側」ではいたい。そして、加害者である「あいつら」に対して、被害者側として相対したいと思う。
 それに付随する、と言うか、切っても切れない信念は、「被害者であれば、加害者になりえない」と言う観念ではないか、と思うのです。被害者側である(繰り返しますが、実際に「被害者」であるかどうかは関係はなく、むしろ被害者と被害者側と言うのは対立する概念ですら有り得ると思うのですが)限り、行動は正当化されると言う観念。「自分はかくかくなる被害にあった。ゆえにこうする事は正当であり、加害ではない」と言う概念であり、それがつまるところ、圧倒的な加害者である巨人を倒す、と言うふうに仮託されている…… と見なしている人達がいる…… のではないか、と思うのです。

 僕はなにしろ、その話を読んだ事がないので。内容を自由に空想するしかないのですが。
 巨人がいて、人間がいる世界なら、小人もいたら面白いかもなあ、とか思うのです。言葉が通じず意志が通じず、知性を持っているようにも見えず、哀れみを誘う外見もしていない小人です。人間は彼らを食料にして食べたり、性悪な人間は憂さ晴らしのためだけに殺したりする。人間はそのことを、悪いとも思わなかったり、悪いと思って止めたり、悪いけども仕方がないことだ、と諦めたりしている。そして、そんな世の中で巨人と戦っている、と言うような。

 読んだ事のない漫画の中身に思いを馳せつつ、自分の子供の頃にも思いを馳せつつ。そんなつらつらとしたお話でありました。

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