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2013.06.20

神よハルクを救いたまえ:ワールド・ウォー・ハルク(☆☆☆)

ワールド・ウォー・ハルク (MARVEL)

 映画版『アベンジャーズ』には、宣伝にも使われた、ニヤリとするやりとりがある。
 睨み合いながら「私には軍隊がある」と威圧するロキに対して、トニーが「こっちにはハルクだ」と切り返す、と言うシーンだ。
 そしてその言葉の通り、ハルクは強かった。ただただ、ひたすらに強かった。ハルクに必殺技はない。ハルクが必殺技なのだ。
 だがハルクには弱さもある。脆さがある。野獣のようなその怒りは、味方となれば果てしなく心強い。だが、怒り狂い、また操られたハルクは、時としてヒーロー達の最大の敵とも、最大の障害ともなってきた。だが、それでも。ハルクは、ブルース・バナーは、彼らの一員だった。ヒーロー達の仲間だったのだ。

 しかし、もし。そう、もし。ハルクが本当にヒーロー達の敵となったとしたら。その怒りと無敵の力を、地球のすべてのヒーロー達に叩き付けたとしたら。
 激突のあとに、残るのは地球なのか、それとも……。

 ヒーロー達が二派に分かれ、熾烈な内戦を繰り広げた「シビルウォー」の終結後。
 アイアンマンはSHIELDの長官となり、投降したキャプテン・アメリカは、凶弾に倒れ亡き人となった(※「キャプテン・アメリカ:デス・オブ・ドリーム」と同時期の話です)。
 キャップ派のアベンジャーズが地下に潜伏し、アイアンマンがイニシアティブ計画を発動させ、アメリカ全州にヒーローチームを配置する計画がスタートし始めた、ちょうどその頃。
 宇宙の彼方から、ハルクが帰ってきた。義兄弟ウォーバウンド達と、惑星サカールの軍勢と、そして、かつてないほどの怒りを引きつれて。

 ハルクは怒っていた。かつてないほど冷たく怒っていた。二度と戻ろうと思わなかった故郷、地球の大地を踏みしめながら。脳裏に蘇るのは、四人の敵の顔。
 シビルウォーの勝者、アイアンマン=トニー・スターク。
 史上最大の魔術師ドクター・ストレンジ。
 最古のヒーローチーム・ファンタスティックフォーの頭脳にしてリーダー、リード・リチャーズ。
 そして超人類インヒューマンの王ブラックボルト。
 かつて、彼ら-- 秘密結社イルミナティ-- が下した決定。それは、不安定要因たるハルクの地球からの追放。騙され、宇宙船に乗せられ、宇宙の果てへと追放されたハルクが辿り着いたのは、暴力の支配する野蛮な惑星サカール。数奇な運命に導かれ、空から降ってきた緑色の巨人は、仲間を集め、民衆を解放し、やがて圧制者レッドキングを打倒して、自らサカールの新たな王、救世主となる。

 守るべき王国を、守るべき民を得たハルク。そして守るべき妃を、やがて守るべき我が子を得るはずだったハルク。
 だが、そのすべては一瞬にして失われた。イルミナティが仕掛けていた周到な罠によって。ハルクを地球からサカールへと導いた、宇宙船が大爆発を起こした事によって。
 百万の民を、妃カイエラを、そして生まれくるはずだった我が子を一瞬にして奪われ、とうとう、とうとうハルクは怒り狂った。革命の闘争のなか、堅い絆で結ばれた義兄弟ウォーバウンド、そしてサカールの軍勢を引き攣れ、彼は地球へとやってきた。
 すでにブラックボルトは、月面の戦いでハルクの力に屈した。ささやくだけであらゆるものを破壊する男が、叩き潰されたのだ。圧倒的な力で。

 標的は三人。猶予は24時間。敵は全地球、すべてのヒーロー。
 アイアンマンが、Dr.ストレンジが。アベンジャーズが、スパイダーマンが。ファンタスティック・フォーが、地球上のありとあらゆる力が存在が、ただひとりの男を、ハルクを倒す、それだけのために立ちはだかる。だが、敵はハルクだ。ハルクなのだ。

 ハルク対全地球。怒りのタガの外れたハルクを、もう誰も止める事はできない。すべてを敵に回し、すべてを叩き壊しながら、破壊一途の大驀進を続けるインクレディブル・ハルク。だが、冷たい怒りを湛える、冷えながら燃える彼を立ち止まらせたのは。意外にも、どんな力でも、どんなヒーローでも、どんな敵でもなかったのだ……。

 というわけで。ハルク対世界! 念願のワールド・ウォー・ハルク、読了であります。怒り狂うと、もう誰にもどうにもできない無敵の力を持つハルク。しかし彼が怒り狂い、地球へと侵攻を果たした事は、彼なりに、と言うか、それはもうハルクのほうが正しいんじゃないかさすがにこれ、と思うしかないような理由があります。
 そしてかつての仲間に対して、愛憎それぞれ入り交じる態度を取る、ヒーロー達の態度もまた。標的とされた三人もさることながら、アベンジャーズの面々、ことにハルクとはもっとも縁深いシーハルクの振る舞いといい。そしてまたこう、次々とハルクと戦う事になるにしても。その戦いのカードの組み方が、またぞろ心憎いのです。ここでこの人が来るのか! みたいな感じで。

 次々と、ほとんど無尽蔵に現れる敵、すなわちヒーロー達との戦いを通じて。ときに、味方であるウォーバウンドにすら宥められるほどに膨れ上がった、ハルクのやりきれない怒り。そして、それでも自分の姿を見失わないハルクのやるせない思い。
 当初、未読で噂だけを聞いていた時は、暴力一途の殴る!勝つ!暴れる!的な作品だと思っていたのですが。いやもちろん殴る勝つ暴れるは一二三分に満ちあふれているんですが。一読した後に残るのは、ハルクの、そしてヒーロー達が、それぞれに差はあれど抱えている、どうしようもない悲しみでした。

 ここには収録されていませんが、外伝的な作品であるタイインのシリーズでは、ハルクが、ウルヴァリンやサイクロップスと言った超一線級を含むX-MEN全員(X-MEN、と言うか、Xファミリー全員。あわせて40人以上?)に、一人で大立ち回りを演じるなど。本当にハルクづくしのこのシリーズとこの一冊。

 アベンジャーズを見て、この緑の巨人に興味を持った方は、ぜひ一読して頂ければ、と思う次第です。

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