暖かい目と怜悧な頭脳:シャーロッキアン!4巻(☆☆☆)
身近な人々の悩みに、シャーロック・ホームズ原典中の描写や物語がどこか絡んでくる物語構成は今巻でも健在です。
幸せの絶頂のはずの新婚夫婦に、なぜだかカレーが影を兆す「カレーの問題」。幻の希少本を巡り、ホームズマニアの少年団がしゃかりきな活躍を見せる、「ビートンのクリスマス年鑑」。同時代、そして別世界の人物とのクロスオーバーに思いを馳せる「騎士と漱石」。
物語の卓日を飾るのは、車教授の過去に関わりのある物語。決してありえない-- しかしありえたかも知れない-- 出来事の可能性を、細部の描写からあざやかに構成してみせる「アガサ・クリスティの失踪」。
そのどれもが、推理ものでありホームズものでありながら、かつまた読後感の暖かい人情ものでもあるのが、このシリーズの魅力的なところ。
前に読んだ「ホームズとワトソン」と言う本の中で、探偵ものの中でも、とりわけホームズとその時代のものの魅力について、「(依頼人達に)隣人に対する健全な関心がある」と言う表現をしていましたが。
愛理と車教授、そして登場人物達が持ち合わせている、周囲に向ける暖かい視線、小さな謎や苦悩を見過ごしてはおけない、そんな心の持ちようこそ。ホームズの原典から引き継いだ、このシリーズの見えにくい魅力なのではないか、と思うのです。
がつがつと読むよりも。ゆっくりめのペースでいいので、じっくりと続いてほしい、そんなふうに思える楽しみな一作であります。
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