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2013.08.21

スシ・アンド・ビヨンド:英国一家、日本を食べる(☆☆)

英国一家、日本を食べる

 この本の主人公は、イギリス人の評論家マイケル・ブース氏。ひょんなことから日本料理家の友人に押しつけられた、一冊の本をきっかけに。日本料理の現状を知りたくなり、ついに長期の取材旅行に旅立つ事に。
 ところがここで、ちょっとした戦術ミスが発生。結果マイケル氏は奥さんに、6歳と4歳の二人の男の子までついてきて、つごう一家四人で日本へと滞在する事に。
 足かけ三ヶ月、イギリス人一家四人の日本の旅は、北は北海道から南は沖縄まで、足を伸ばして食べ歩いての、胃と見聞とに大きな刺激を与える旅となっていく。ジャーナリストの目、父親の目。外国人の目、そして食べる事が大好きなひとりの男の目から見た、ほんの少しだけ以前の日本の、そして日本料理の姿とは……。

 本屋の店先で見かけて、思わずあなやと衝動買いしてしまった「英国一家、日本を食べる」。ちなみにスシ・アンド・ビヨンドと言うのは、この本の原題であります。いいセンスですよなあ。
 あらすじで書いたとおり、イギリス人のトラベルジャーナリストにしてフードジャーナリストのマイケル・ブース氏が。本で読んだ「日本料理」の姿にすっかり見せられ、なりゆきで一家揃って来日しての、さまざまな体験談に、食べ歩いた話を平易に、解りやすく綴られた、非常に面白い一冊であります。

 正確な年代は書いてはありませんが、時津風部屋の事件が問題になっていた時期、と言う記述がありますので、2007年のことでしょうか。

 日本に来た途端、台風に見舞われてえらい目に遭ったかと思えば、新宿の地下街で男の子達がすっかりアイドル状態になり、札幌でラーメン横丁を求めて彷徨ってみたり、思いもかけないスズメバチの襲撃に手を焼いたり。そんな珍道中ばかりかと思うと、東西の料理教室に取材に訪れたり、ビストロSMAPの撮影のスタジオ見学に入り込んだりと、マイケル氏と家族の皆さんの、様々な視点から切り取った日本とその料理、と言うか食文化の姿が、いきいきと、ときに斜に構えて描き出されています。

 この本の面白さは、やはり家族での旅行の記録、と言う点に集中できるんじゃないかな、と思います。氏の視点はあくまでジャーナリスト的なものであり、日本料理界や、たとえば日本酒などの姿を、外側から、ある程度(完全に、ではなさそう)冷静に捉えています。しかし、同時のその視点はシームレスに、夫の視点に、二人の男の子に振り回される父親の視点に、あるいは慣れない環境でまごまごしてしまう、時にはそれを逆手に活用してしまう、外国人の立場へと、次々とスムーズに切り替えられていきます。それは合わせて、一緒に旅をしている家族の見た、外から見た日本の姿へと重なっていくと思うのです。

 一歩引いた、と言うか、時々踏み込みすぎてるんじゃ、と思うこともありますが。外側からの視点から見た、カリカチュアされていない、良くも悪くも、少し前の…… 東日本大震災以前の…… 日本の姿を、イギリスへと紹介しているこの一冊。僕らの知らない、僕らの姿として、笑ったり、衿を正したりしつつ。一読する価値のある本だと思います。

 ところでこの本、原著から若干、内容が割愛されている様子。
 目黒寄生虫館の話は、なんていうかまあ、それは解らんでもないけどなあ、と言う気はしますけども。味の素の話とか(別の章で言及がある)築地の話とかは、なにか差し障りがあったのかなあ…… と、若干残念には思います。そのあたりに何が書いてあったのか、なかったのか、にも。若干の思いを馳せつつ。

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