地獄の沙汰もウケ次第、視聴者様は悪魔様:キルデスビジネス(☆☆☆)
悪魔が運営して悪魔が視聴する、地獄のリアリティTV・それがヘルTV。シロウトから選ばれた「回収人」の皆さん、ああ皆さんのことですよ、皆さんにやっていただくのは「魂の回収」。かつて我々に魂を売り、安逸を貪る契約者から、契約通りに魂を取り立ててくることです。つまりはブッ殺す事です。
契約者には護衛役、天使達がついています。これもアレしてもらいます。忘れないうちに言っておくと、皆さんの中で勝者はひとり。願いを叶えて、人生を立て直せるのは、あなたたちのうちの、たったひとりだけです。じゃあ、他の皆さんにはどうなっていただければいいですかね……?
ああ、心配はいりませんよ、当番組の誇るヘルERはたいへん優秀です。派手な死に様で番組を盛り上げてくれた方には、とっても素敵な改造部品を取り付けて、すぐに復活させてさしあげます。カメラ廻ってるんですからね、いつまでも死なれてちゃ困りますからね。
さてそれではここで、シーズン666野様子を見てみましょう。出演した回収人は4人。病に冒された天才ピアニスト、海兵隊上がりのグレーターヤクザ。死刑執行待ちの医師は連続女性殺人鬼、そして愛する「お兄ちゃん」をこの世から消していくシリアルキラー。
実に4人中2人が連続殺人鬼と言う、このすさまじい回収人チームが、「お金がほしい」「人類が滅んで欲しい」と言う願いをかなえた契約者のもとを訪れます。さてさて勝つのは誰か、誰が地獄に落ちるのか。ヘル視聴者の皆さんにお送りするヘルTV、ヘル洗剤の提供でお送りします!
適当なこと書こうと思ったら、かなりその通りになってしまうこの本。ちなみに言い添えておくと、テーブルトークRPGのルールブックで、それに上記の無茶な登場人物達が出演するリプレイ(実際に遊んでいる様子をログ的に記録したもの)がついています。
PCには防御力どころかHPすらなく、攻撃が一回失敗しただけで死亡する(そしてすぐ復活させられる)過酷なルールや、まるで球技のラリーのように、徐々に難易度を上げながら双方がサイコロの振り合いを行う、シンプルながらも熱くなりそうな戦闘ルール。
さらにPCに自動的に他の登場人物との関連を持たせ、クリア報酬つきの小さな課題とすることで演出や行動を後押しする「サブプロット」などの細やかな配慮があるかと思いきや、ヘル視聴率(失敗したりファンブルしたりすると下がる)が低くなると、テコ入れでサービスシーンを行う(ことしかできなくなる)と言う無茶振り強化まで
。全体的に、システムやデータ、読み合いと言うより、PLの持つ演出力や発想の瞬発力を思う存分引き出す方向を向いている、そんな感じを受けるシステムです。
これはなかなか、マスターをやるのもプレイヤーをやるのも骨が折れそう、と言うか、独特の才能を要求されそうな感はありますが。ちょっと試してみたくはなる、無二な雰囲気を放つシステムであります。
さてさて、次はインセインだ。
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