ヒットマン:ゴッサムシティの拳銃無頼(☆☆☆☆)
聞いた事があるはずだ、ゴッサムのことを。大都会。世界でもっとも深い闇を抱えた街。ジョーカーやトゥーフェイス、危険な狂人達が路地と路地裏を闊歩する犯罪都市。そして空にバットシグナルが照らされる時、そのすべてを制圧する闇の騎士が現れる街。
だが犯罪というものは、人が起こすものだ。空を舞い夜を司る魔物達ではなく、欲望と愚かさと、そして片意地から自由になれない半端な連中が。
そんな連中の中に、トミー・モナハンと言う男がいる。咄嗟の機転と度胸に優れ、銃撃戦には滅法強い。それに加えて透視能力とテレパシーとを持ち合わせた男。だが彼は正義の超人などではなく、かといって悪の殺戮者でもない。彼は超人を殺す、超人専門の殺し屋なのだ。
彼は意固地な男だ。善人は撃たない。自分に定めたルールを、決して譲る事はない。バットマンに殴られても、警察に包囲されても。本物の悪魔に目の前で脅されたとしても。
酒と、賭け事と、気の置けない友人達とだらだらするのが大好きで。賭け事に弱く、儲け話に目がなく、よく笑い、よく歌い。怒り、傷つき、涙を隠せる心を持った。
罪の街の片隅で、いつか逃げ出す日を夢見ながら。ヒットマン、トミー・モナハンの罪深き人生は今日も続く……。
そんなことより犬溶接マンなんですよ。いやそうじゃないですよね。
本屋にいそいそと買いに行って、一緒に買ったニンジャスレイヤーと比べられるレベルの分厚さにすっかり戦慄してしまった、こちらヒットマンです。ネットの一部で大流行した犬溶接マンが登場するシリーズ! と言う事でかなり話題を呼んだ作品。僕もまあご多分に漏れず、セクション8と犬溶接マンが登場する特別編「ヒットマンロボ」目当てで買ってきたような感じだったのですが。本編の血の通う面白さに、すっかり持って行かれてしまいました。そしてすっかり持ってかれた頃に、ブーメラン的にセクション8が登場してきて、一粒で二度不意打ちと言うか。なんというかそんな。
ともあれ、作中の訳語で2度ほど「仁義」と言う言葉が出てきますけども。まさにヒットマン、トミー・モナハンと、彼の周囲の世界はそんな感じ。呑み仲間(仕事仲間でもある)と行きつけのバーに行き、トランプをしたりビリヤードをしたり、だべったり口喧嘩をしたりする。好みの女性と見ると、テレパシーで相手の考えを読みつつ口説いたりもしちゃう(若干悪いと思っているあたりがなんともはやと言うか)。
そんなふうに、ひらたく言うとだめな感じの人の彼なのですが。善人は撃たない、と言う自分自身に課したルールを、これでもかとばかりに頑固にしがみつく。そしてそれを誇りでもプライドでもなく、どこか自己憐憫を持って見ているような様は。なんとも言えずもの悲しくもあり、そして魅力的でもあるのです。つまりかっこいいのです。
地に足がしっかりついて、時々は空を見上げているような、トミーの姿と台詞回し。これが存分に楽しめる本編もさることながら、徹頭徹尾、完全に西部劇になっちゃってる特別編、さらに宇宙暴走族ロボと(実にレベルの低い)喧嘩になってしまい、ゴッサムをブッ壊されつつ逃げまわる羽目になった挙げ句。フランス人マンや窓から投げ捨てるマンなど、セクション8が実にひどい大活躍を見せるヒットマンロボまで。
最後のアメコミコラムは真面目ですけども、途中の用語解説がさりげなくひどい(ブエノ・エクセレンテの項目とかほんとひどい)とか、アメコミキャラ名鑑のチョイスが、その、聞いた事あるけど実際に読んだ事はないです的な人がぼろぼろ出てきたりとか。入り口として解りやすくしつつも、深い方向にナイフで切れ込みも入れてきてるような。そんな印象でありまいた。
アメコミ好きな人ももちろんですけど、ギャングものが好きな人も。そしてあと武侠ものが好きな人も結構好みなんじゃないかなーと思う、ヒットマンでありました。
続刊の刊行も決定しておりますので。楽しみ楽しみ。
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