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2013.10.12

地球シミュレータが、イワシの稚魚の夢を見る。(☆☆☆)

 J.A.M.S.TEC.、是れ即ち独立行政法人海洋研究開発機構。三連休の土曜日、こちらの横浜研究所(の一般公開日)を見学しに行ってきました。

 訳を話すと長くなるのですが、金曜日の会社帰りにtwitter見たら「土曜日これ見に行きません?」って烏羽さんからお誘い(※ついで)があって、「行く行く行きます」と返事をした、と言う次第です。あれ短い。
 そんなわけで、土曜日の朝から、人生初の新杉田駅下車。途中ブルートレイン(イベント列車だった様子)を目撃したりしながら、横浜研究所まで行って参りました。

 さて。そもJAMSTECとは何かと言えば、海洋の調査を専門に引き受ける国家科学機関です。大陸棚や遠海、遙かなる深海、ひいては地中調査による地球内部構造の調査に加え、世界十指の汎用スーパーコンピュータ・地球シミュレータや、擁する数々の深海調査艇・大型探査船による、様々な調査分析まで行っていると言う、海洋立国日本にとっては、非常に重要で意義深い役割を負った、智恵者でかっこいい科学研究所なのであります。
 そんなJAMSTECの活動が、一年に一回だけ。文化祭と言うか縁日と言うか、なんだかそんなノリで公開されるのが、この一般公開日。そんなわけで近隣の皆さんからほんと大人気っぽいノリの最中に、お邪魔してきた次第でありました。

 いやもう、結論から先に述べちゃうと、ものすごく楽しかったのですが。その中でも特に論じるべきと思ったのは、本業として研究している内容の、当然のことながら本気さ加減、一切妥協のないプロ意識と、それを発表する雰囲気の、なんともいえない文化祭な雰囲気、どことなくゆるくて、なんとなくずれてる、そんな決して、と言うか、ものすごく心地良い雰囲気なのでした。いやだってさ、屋外でやってた海老釣り(たぶんシーモンキー)の名前が「エビ沢直樹」ですし。このへんでだいたい察しがつくのではないかと。

 しかし、雰囲気に反して、講演は本気でした。講師のマイクが入ってなくてお姉さんに(再三)指摘受けてましたが、本気でした。
 この日、二回サイエンスカフェのトークを見たのですが、最初のテーマは「イワシ」。え、なんでイワシ? と、普通に不思議に思いましたが。イワシは普通に食用と言うだけではなく、飼料その他に利用される、重要な海産資源。従って、その資源の有効な活用と、枯渇の予防は、国家を超えたレベルでの課題に十二分になりえるのです。
 さて、先生が登壇されまして。イワシの話題の中でも、話の主題はマイワシです。体長30cmに達する大型のイワシで、特徴は寿命が7年前後と長いこと。カタクチイワシなどは寿命2年程度、と言えば、その長さは実感できると言うのものです。

 さて、過去においては。日本近海で鰯は「猫も食べない」と言うほど大量に獲れる魚で、その漁獲量たるや、すべての魚の漁獲量の4割を占めるほどでした。
 しかし、その環境は、1988年の歴史的な不漁を境に、その姿を一変します。しかるに今日、鰯の漁獲量は、実に往事の100分の1。鰯は、すなわち魚は、海洋における重要な水産資源であり、この劇的な現象は、充分に「資源の消滅」と表現してしかるべきものです。鰯はただ人間が食べる、と言うだけではなく、様々な用途に用いられているもので、その消滅は、とんでもない余波を及ぼしているのです。例えばサバの乱獲とか。

 さてしかし、なぜイワシは獲れなくなったのでしょう? シラス(鰯の稚魚)の乱獲? 成魚のほうの乱獲? 地球温暖化? 環境の破壊? しかしすべての、ある意味人的な前提を、様々な機関から集めたデータを提示して…… この先生のデータの収拾と活用っぷりが、「星を継ぐもの」のヴィクター・ハント博士を思い出すほどのものなのですが…… それらを逐一、関連性としては弱い、と否定していきます。

 そうして、最後に残ったのは、レジームシフト仮説でした。数十年に一度、定期的に海中の環境が変化し、それによって(成長するのに最適な温度などの前提条件が失われる事により)マイワシの生育が悪化する、と言う説です。
 通常であれば、種族の生存に有利なはずの「個体の寿命の長さ」が、この場合は悪い循環として発動します。レジームシフトとは、ある特定の環境…… マイワシに限って言えば、「黒潮(マイワシの生活史は、黒潮に大きく左右されています)における、水温と混合層震度」の環境が、定期的に変化すること、を差します。言うまでもなく、マイワシにはその成長に適した水温と混合層震度があり、その環境が変化してしまうと、急速に生育環境が悪化。稚魚が成魚となる確率が著しく悪化し、結果、成魚の個体数が…… 人間がなんかしたとかしないとかとは無関係に…… 減少する結果となるのです。
 ちなみに、混合層震度、と言うのは、海面表面にある、常に滞留して掻き混ぜられている層(混合層)の厚みのこと。この厚みが深いほど、海と言うスープは掻き混ぜられ、すべての餌の根源となる植物性プランクトンが反映し、結果、あらゆる肉食生物も繁栄しやすい環境が発生する、と言うわけです。

 原因は不明ながら、レジームシフトが1988年に発生。これにより水温の変化と餌の現象が起き、稚魚のうち、成魚になれるマイワシが劇的に現象しました。もしマイワシの寿命が短ければ、世代交代からのリカバリも早かったのですが、残念ながらマイワシは7年もの寿命があり、結果的に年のいった魚が個体数の大半を占める状況となってしまった。それが個体数の減少に結びついてしまった…… と言うことのようなのです。

 さてしかし、この仮説をs実証するためには、鰯の稚魚…… いわゆるシラスが、どれだけ海岸にながれつき(つまり漁業資源となり)、どれだけ黒潮に乗って太平洋へと押し出され、次の世代の親となるか、その割合を探り出し、さらには鰯の稚魚の生息域を割り出す事が重要となります。
 ここで登場するのが、地球シミュレータ。最新のスーパーコンピュータで黒潮の流れをエミュレート、そこに産卵地のデータを埋め込む事で、黒潮に乗って旅する(ひっくりかえすと自力での遊泳能力が乏しい)鰯の稚魚が、どのように太平洋に分散していったか、を計算したわけです。
 シミュレートの結果は、稚魚の流れる割合は、海岸4に体して黒潮6。つまりどれだけシラスを取ったとしても、それは残り6割の稚魚には影響していない、と言う事が解ったわけです。

 今後の展開として、レジームシフトの原因を分析し、あるいは予測していく事で、今後の漁獲資源の増減を予言できるようになるかもしれいない、とのお言葉が。イワシの不漁による影響は、「イワシ量拡大を見込んでの設備投資=借金しての漁船購入」にもある、と言うコメントを頂いただけに、予測の重要性は、なかなかに大である、と思った次第でありました。

 それにしても、「そのデータは海上保安庁が毎日取っているので」とよどみなくこコメントする先生の顔の広さと懐の底知れ無さに、力強い頼りがいを感じた、そんな講演の感想でありました。

 この話、多分続きます。

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