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2013.11.20

廻る廻る稲妻の如く:髑髏検校&神変稲妻車(☆☆☆☆)

髑髏検校 (角川文庫)

 名探偵・金田一耕助ものは大好きで、七割くらいは読んだんじゃないか、と思っているのですが。金田一もの以外の横溝正史作品は、アンソロジーで見たほかは、ほとんど読んだ事がありません。
 そんなわけで、一冊手を出してみたい。と思って購入したのが「髑髏検校」。ストーリーとしては中編くらいなのですが、もう一本「神変稲妻車」と云う作品が併載されていまして。計算外、こちらもこちらですごい気に入ってしまった案配です。

 江戸時代後期、将軍家斉の時代。漁師たちが鯨の腹の中から見つけた、瓶に入った奇怪な手記。
 そこにつづられていたのは、はるか長崎で起きた出来事。ある若侍が罹災のすえ出会った、謎めいた怪人の物語。そしていずれ江戸表を訪れると云うその怪人の言葉。
 時を置かずして江戸を襲う様々な変事。噂と不安をまとい暗躍する髑髏検校とその眷属達に、運命に巻き込まれた人々が立ち向かう。そんな大江戸ドラキュラ伯爵な「髑髏検校」。

 そして、「神変稲妻車」。幕府の権力を一手に握り、横暴を尽くすのは、今をときめく田沼意知(田沼意次の息子)。その田沼の横車で、大名・新宮伊勢守は、家宝の笛を賄賂に差し出せと強いられる。ところが伊勢守の使者が持参した笛は、いつのまにかすり替えられ、いずこかへ姿を消していた。
 ここから始まる、一気呵成の物語。正邪善悪敵味方、若き侍、謎の魔剣士、美少女、琵琶法師、掏摸、毒婦、怪老婆、少年忍びに女芸人一座、次から次へと新たな人物が現れては、場面も攻防も目まぐるしく。早変わりの舞台を見るように、戦いと旅はととどまることなく。流れ流れて因果が絡み、正邪うちそろっての決戦の行方やいかん、と、そういう案配。

 髑髏検校の、なんとも湿度や温度の感じる文体で描き出される怪奇さ加減は期待通りだったのですが、神変稲妻車の異常なまでのテンポの良さと名調子は、正直想定していなかったので、予想外に楽しませていただきました。ほんと地の文とか名調子で、ぽんぽんぽんと進んでくんですよね。
 数頁前読むだけで話が飛んでいく様は、古龍の武侠小説かシノビガミのセッションを見ているようですらありました。これでシノビガミのシナリオ作ったら、本気で面白くなりそうな……。

 そんなこんなで。たまには古典に親しもう、と、そう思って実際やった、とそういう話でありました。

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